ソーサラー/マイルス・デイヴィス

      2023/02/01

オランダ盤の曲順

中山康樹・著『マイルスを聴け!』によると、『ソーサラー』のオランダCBS盤は、オリジナルのものとは曲順が異なり、以下のような順番になっているのだそうだ。

・プリンス・オブ・ダークネス
・ヴォネッタ
・リンボ
・マスクァレロ
・ピー・ウィー
・ザ・ソーサラー

もちろん、ボブ・ドローが参加した「オマケ曲」の《ナッシング・ライク・ユー》はカットされている。

このことを話した動画を先日アップしだんたけど、《ナッシング・ライク・ユー》を蛇足に感じ、かつ、もっと違う角度から『ソーサラー』を楽しみたいと考えている人は、一度曲順を変えてお楽しみあれ。

中山氏も著書では「(オランダ盤は)まったく新しい『ソーサラー』にしている」「これでいいのだ」と書かれているが、私も試しにこの順序で聴いてみたら「これでいいのだ」と思った。

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そして、この順番で聴くことによって、今まであまり意識してこなかったナンバーが、素晴らしい形となって浮かび上がってくる効果も発見した。

《ヴォネッタ》だ。

ヴォネッタ

ショーター作曲の《ヴォネッタ》。

曲が醸し出すムードは、ショーター独特の重たい空間エフェクトがかかったような旋律だが、これにマイルスがトランペットで気分を添えると、もうなんともいえぬ諦観のムードが漂いはじめる。

この曲を録音する15年前にマイルスがブルーノートに吹き込んだ《アイ・ウェイテッド・フォー・ユー》にも通じる諦観さ加減だ。
マイルスのトランペットが潜在的に持ち、聴衆に訴えかける武器の一つに「諦観」があるが、スタイルの確立期から、既にワン・アンド・オンリーの境地を確立しているこの時期となっても、彼が放つバラードのニュアンスは変わることがない。

これを突き詰めると、『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』の《マイ・ファニー・ヴァレンタイン》になってしまうのだが、その数歩手前の境地にとどめている感じ。

《プリンス・オブ・ダークネス》、《ソーサラー》、《リンボ》などに目が(耳が)いってしまいがちなアルバムではあるが、《ピー・ウィー》や《ヴォネッタ》のような「ショーター・ムード」でありながら「マイルス・ブレンド」なナンバーにたどり着くことが出来れば、このアルバム鑑賞の深みもさらに増すはずだ。

album data

SORCERER (Columbia)
- Miles Davis

1.Prince of Darkness
2.Pee Wee
3.Masqualero
4.The Sorcerer
5.Limbo
6.Vonetta
7.Nothing Like You

Miles Davis (tp)
Wayne Shorter (ts)
Herbie Hancock (p)
Ron Carter (b)
Tony Williams (ds)

1967/05/16–24
1962/08/21 #7

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