アムトラック・ブルース/アルバータ・ハンター

      2021/02/10

男顔負けのおばあちゃん

ジャケットにおわしますおばあちゃん、いや、老婦人は、アルバータ・ハンターというジャズ&ブルースシンガー。

1920年代からシンガーとして活躍していたそうで、サッチモ(ルイ・アームストロング)との共演歴もある、ベテラン中の大ベテランだ。

残念ながら、彼女の若い頃の音源は聴いたことがないので、この晩年の声から想像するしかないのだが、メンフィス・ミニーのような気風のよい、男顔負けの勝気で強気な歌い方だったんじゃないだろうか?

なにしろ、このレコーディングをしたときの年齢が83歳という高齢にもかかわらず、背筋がシャン!とした、力強い歌唱をしているのだ。

この気迫、この力強さ。

「あんたら、まだ若いんだから、もっとシャキッとしなさい!」とお尻をビシッ!と叩かれているような感触を覚える。

一言、「元気で、厳しいおばあちゃん」だ。

引退して看護婦に

彼女は1956年に1度引退している。
引退後は、なんと看護婦として働いていたそうで。

カムバックしたのは、77年。
そのときに吹き込んだアルバムがこのアルバムだ。

看護婦時代の経験が、彼女の歌に影響を与えたのかどうかはわからないが、非常に規律正しく、シャキッ!とした気合いが伝わってくる。

彼女って、ナイチンゲールのような看護婦だったのかな?

多くの人は、ナイチンゲールというと、「白衣の天使」というイメージをお持ちかもしれないが、実際のナイチンゲールは、滅茶苦茶オッカナイ看護オバサンだったようで、部下にも容赦ない厳しさを発揮していたそうだ。

だから、戦地で亡くなった彼女の側近は数知れず。でも、彼女だけは、しっかり生き延びていて、かなりの高齢になるまで看護婦を続けていた。

優しいだけでは勤まらなかったのは容易に想像がつくけれども、ものすごくタフな看護婦さんだったんでしょうね、ナイチンゲールという人は。

このタフさと、そこから生まれるビシッ!とした厳しさと同種のものをアルバート・ハンターおばあちゃんの歌からは感じる。

いやはや元気、元気。迫力満点。

優しさをともなった厳しさと、芯の通った歌唱が、しっかりとこちらのダラけた気持ちに鞭打ってくれるのだ。

なお、アルバータ・ハンターに興味をもたれた方には、自伝もオススメです。

人生を三度生きた女―
人生を三度生きた女―"魂のブルース"アルバータ・ハンターの生涯

表現力とは、アクションと苦労の回数に比例する?

そんなことを考えてしまう本ですね。

彼女の深いヴォーカルと深い人生を紐解くのも悪くないですね。

記:2005/09/14

album data

AMTRAK BLUES (CBS)
- Alberta Hunter

1.The Darktown Strutters' Ball
2.Nobody Knows You When Your Down And Out
3.I'm Having A Good Time
4.Always
5.My Handyman Ain't Handy No More
6.Amtrak Blues
7.Old Fashioned Love
8.Sweet Georgia Brown
9.A Good Man Is Hard To Find
10.I've Got A Mind To Ramble

Produced by John Hammondbr

1977年

 - ジャズ