油井正一「アスペクト・イン・ジャズ」最終回

      2018/09/06

Midnight Soul PatrolMidnight Soul Patrol/Quincy Jones

再放送の最終回

アスペクト・イン・ジャズの再放送の最終回が、先日の7月2日、TFMの「ミュージックバード」で放送された。

「音楽で綴るジャズ・ヒストリー」の61回目で、テーマは「1970年代ジャズの総括と、クロスオーバーとの接点」だ。

60年代のフリージャズの台頭とは別の方向で、ダンス音楽としてのジャズが芽生えた。

ということで、ジャズロックの紹介。

ハービー・ハンコックの《ウォーター・メロン・マン》と、リー・モーガンの《サイドワインダー》が途中までだが流された。

定番の2枚ですな。


ジャズロックを代表するナンバーで、改めて2曲続けて聴くのも楽しい時間だ。

イージー・リスニング・ジャズ!

そこから派生する流れで、イージー・リスニング・ジャズの紹介。

といえば、おそらく多くの人が思い浮かぶのが、ドン・セベスキー編曲のウェス・モンゴメリーがギターのナンバーだろう。

そう、正解。

ビートルズ・ナンバーの《エリナ・リグビー》のウェス・モンゴメリー&セベスキー バージョンがかかった。

しかし、うーん、やっぱり、俺、イージー・リスニング路線のウェスは、あんまり好きじゃないわ。

やっぱり、ビートルズナンバーは、ビートルズが歌ってこそで、ヴォーカルの部分が、たとえウェスといえども、弦に置き換わったところで、ジョンやポールに拮抗する力は持ち得ないし、彼らのコーラスを超えるだけの情感は出ていない。

この時期のサウンドは、私が生まれて間もない時代の流行のサウンドテイストだったんだろうけど、うーむ、やっぱり古臭く感じる。

この時期が青春期で、この音源にリアルタイムに接した団塊、団塊ちょい前の人。

とくに、青春時代からギターを弾き続けているギターおじさん達に言わせれば、「そんなことない! 今聴いても古びていない青春サウンド!」ってことなんだろうけど(実際、何人かのギター中年にそう言われた)、ま、その感じ方の差は、世代の差なんでしょうね。

やっぱ、ウェスはリヴァーサイドが最高!だと思っています。私は。

ホンキー・トンク!

で、その後にかかったのが、マイルス。

『ビッチェズ・ブリュー』をかけるよりも、時間的にはこちらのほうがいいだろうということで、『ゲット・アップ・ウィズ・イット』の《ホンキー・トンク》だった。

ジャズロック、イージーリスニングジャズを聴いた後で聴くエレクトリック・マイルスのこの曲は、まるで、もしスライが、チェス・レーベル(ブルースのレーベル)に、ブルースアルバムを吹き込んだら、こんな出来になるだろうと言わんばかりの、ダウナーな興奮渦巻く、ヤバ怪しい光彩を放ちまくり、この甘美な毒気にやられてしまいましたですよ。

もちろん、私は『ゲット・アップ・ウィズ・イット』は大好きなアルバムだから、《ホンキー・トンク》はよく聴いているナンバーなんだけれども、ハンコック、モーガン、ウェスの、比較的カチッとまとめられた演奏の後に聴く《ホンキー・トンク》は、またいつもとは違う感触。

なんだか、いつも以上に、ど~しよ~もなくヤッバぁ~な匂いがプンプンしまくる。

ハービーとウェザー!

このあとは、ハンコックの《ファット・ママ》がかかり、トランペットが「ジョニー・コールズだったんだ!」と驚き、ウェザー・リポートの《アンブレラス》がかかったときは、いやぁ~やっぱ、ウェザーは初期になればなるほどミステリアスでいいねぇ、やっぱ、ベースはヴィトウス、ヴィトウス最高!と一人で盛り上がっていた。

お次のナンバーは、またもやハンコックのナンバー。

あのアフロ裸なハンコックなジャケットが眩しい(笑)『シークレッツ』から、《ドゥーイン・イット》がかかった。

これは、強力なリズムセクションが魅力なアルバムだが、私はジャズとして聴いたことはただの一度もなく、上質なインスト・ファンク・ミュージックとして聴いている。

クインシーがラストを飾る

そして、最後にかかったのが、クインシー・ジョーンズの《ミッドナイト・ソウル・パトロール》。

アスペクト・イン・ジャズの最後を飾るのが、クインシーのディスコファンク的な曲だったとは驚きだが(笑)、ま、ジャズの歴史を紹介してゆく番組だから仕方がない。

そして、この番組が放送されていた時点では、クインシーに、デイヴ・グルーシンのシンセがムニョムニョしまくったサウンドが最新だったのだろう。

油井先生も「電子楽器のオンパレードといった作品ですな」とおっしゃられているとおり、時代を感じる、ポップでソウルなナンバーだ。

ただ、ムーグや、アープ・オデッセイといったシンセの使い方のセンスが、私が大好きな、初期のプリンスのアルバム2枚のアレンジに色濃く影響を与えていることが分かり、興味深い音源ではあった。

そうか、プリンスのシンセの使い方は、スティーヴィー・ワンダーだけではなく、クインシーからの影響も受けているんだなと、誰が聴いても一発で分かるアレンジだった。

残念ながら、《ミッドナイト~》が収録されているアルバム『アイ・ハード・ザット』を探してみたが、現在、廃盤の模様。

数年前だったら、中古レコード屋のエサ箱に、300円ぐらいで放置されていそうな音源なんだけどなぁ(笑)、残念。

また再放送を流してほしい

というわけで、『アスペクト・イン・ジャズ』の再放送の放送も終わってしまったわけだが、ミュージックバードさん、お願いなので、もう一回、再放送を繰り返してもらえませんか!! 第1回目から。

私が聴き始めたのって、もう番組の後半あたりからだったので、初期の放送も聴いてみたいんですよね。

寺島さんの2時間枠を1時間に戻して、その枠で油井さんの再放送やるって提案はダメですか?(笑)

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MUSIC BIRD

記:2008/07/05

 - ジャズ