打!が心地よい《async》/坂本龍一

   

攻撃的な教授の「打」

先日書いた「坂本龍一の《async》と『エスペラント』の“打”音」に続き、今回も坂本龍一の『async』の感想をつらつらと書いてみます。

今回は、タイトル曲の《async》について。

asyncasync

ちなみに、本人のインタビューを読んでしまうと、このアルバムの感想が変わってしまいそうで、それが怖いことがあり、あいかわらず『Music Magazine』の2017年5月号には目を通していませんです。

坂本龍一(以下「教授」)は、過去に何度かドラムも時々叩いていました。

YMOの『ウインター・ライヴ』での《キュー》や、ソロアルバム『B-2unit』の《ディファレンシア》なんかが有名ですよね。

>>ウィンターライヴ'81/YMO
>>B-2 unit/坂本龍一

マニアックなところでは、立花ハジメの《H》のドラムも教授だったりします。

>>坂本龍一のヘタウマ・ドラム

これら教授が叩きだすドラミングの「打」の特徴は、「前のめり」であること(SKE48の歌じゃないよ)。

この「前のめり感」は、特に《ディファレンシア》や《H》で叩き出されるリズムに、それが顕著に現れていると思います。

グルーヴとか、そういうものを感じさせる余白とか余裕のようなものはなくて、そのかわり性急に「打」を畳みかけてくる感じは、非常に攻撃的ですらあります。

心地よい性急な「打」

ちなみにドラムを叩かなくても、教授の脳内スイッチが「打」モードになった場合のリズム感覚も、性急かつ攻撃的です。

たとえば、『エスペラント』なんかにそれが顕著ですよね。

だからこそ、『async』の《async》を聴くと、エスペラントに近い快感を感じてしまうのかもしれません。

攻撃的な「打ナンバー」です。

もちろん、音色のコクとツヤも、かなり深くて気持ち良いのですが、それ以上に、例の独特な性急さが「これでもか!」こちらに伝わってきて、ああ久々に味わう「例の快感」だな~なんて思いながら聴き浸っているわけですよ。

なんたって、『B-2 unit』が世に出たのが1980年でしょ?
その時の《ディファレンシア》に魅了されて以来、もう37年間も、教授独特の畳みかけるようなリズム感に浸り続けている自分がここにいるわけですよ

だから、身体全体が、もうこの手のリズムに対しての受け入れモードが完全に出来上がっているんですね。

だからこそ、『asyunc』を買って聴いて最初に響いたナンバーが《async》だったというのも当然といえば当然だったのかもね。

ほんと心地よいですわ。

とはいえ、この叩かれている物体の音の正体は、音だけだと分からないので、もう少し音に浸ってから、『ミュージック・マガジン』のインタビュー記事を読んでみようかと思っています。
(インタビューで、この楽器のことは語られていなかったりして)

いずれにしても、なんだか「佗・寂(わび・さび)」すらも感じられる音色ではあります。

記:2017/06/03

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