B型の彼氏/試写レポート

   

先日、『B型の彼氏』の試写を観てきました。

来年の正月に公開予定の韓国映画です。

現在、中国に留学している大学生の女の子から、この映画は面白いから雲さん是非観るべきだ、と薦められていたので、常に頭の片隅にある映画でした。

中国では、一足早く上映していたんですね。

監督含めスタッフは全員B型。

韓国のB型男たちに、「これほど自分たちのことを理解してくれる映画だったとは」と言わしめた作品だそうなので、ちょっと興味が湧きますよね。

私は、血液型に対しては、朝のワイドショーでやっている星占い程度の興味で接しています。

つまり、ちょっとした話のネタ以上の以下でもない。

参考にするかわりに、信じすぎない。

「信じる」「信じない」のどちらかでスッパリ分けて会話に水を差すのは野暮な行為だと思うし、「世の中の人間を4つのタイプに分けること自体ナンセンス」と血液型否定派が得意げな顔をして語る姿を見ると、ウンザリしてしまうほうです。

なぜかというと、そもそも、血液型による性格の研究の仮説は、世の中の人間を4つに分けることが元になっているわけではないからです。

そもそも「血液型性格判断」の考えかたは、「血液型という人間の"材質"の違いが、複雑な性格表現に影響を及ぼしているのか、いないのか? もし傾向があるとしたら、共通した傾向や相違部分とはどんなところなのだろう?」という仮説からスタートしているのです。

つまり、統計学、データマイニングの考え方に近いんですね。

能見正比古氏が、昭和46年に『血液型でわかる相性』という本を出版した際に初めて登場した言葉が「血液型性格判断」。「判断」で「占い」じゃないところに注目。

この本を出版する前に、能見氏は、膨大な量のアンケート調査を行いました。

まずは、一人一人の行動の仕方、思考の傾向をたずねるアンケートからサンプルを採った。質問項目は400にも及び、このアンケートに対して、記名回答が3万以上集まりました。

次に、政界、財界、芸能界、スポーツ界などなど、専門職や特殊性の高い職業のグループを選び、血液型の分布の偏りがあるかどうかなどを調査し、最後に、血液型ごとに、ある一定の行動パターンがあるのかどうかを、スポーツ分野や幼児教育現場でサンプルを採ったとのです。

さらに、芸能人や著名人の結婚や離婚や犯罪などの情報は、常に入ってくるわけですよね。

彼らの血液型における行動の傾向や理由、動機などをその都度、丹念にファイリングしてゆくので、集まったデータは、それこそ膨大な数に上ります。

このように集まったデータに対し、統計学上の有意差検定をかけるわけたのが、「血液型の性格分類」なのです。

“分類”だからね。“占い”とは当時は言ってなかった。

「あたる・あたらない」はともかくとして、また、仮説の正しい、間違っているはともかくとして、調査方法はまっとうな正攻法。社会学や、代理店のマーケティングでも、よく用いられるアンケートによる「サンプル調査」ですよね。

しかも、膨大な量と内容。

だから、間違っても、「占い」ではない。

よく、「血液型占い」という人がいるけれども、上記の作業過程をしれば、占いという言い方は適切ではないというこはお分かりでしょう。

もちろん、例外も数多く出てくるし、たった4つのパターンに分類するには無理が生ずる場合だってあるわけです。

「B型の人は気分屋で、お天気屋"なのだ"」という断定ではなく、「B型の人は、気分屋、お天気屋な人が"多い"ですよ」という、あくまで「傾向」の分析なので、すべてのB型に当て嵌まる性格だと主張しているわけではないのです。

ま、「B型はしょーもないヤツだ」と断定したほうが、インパクトがあるし、面白いし、実際断定型かつ紋きり型な言説が定着しちゃってますが、だからこそ、そこらへんが血液型否定派の格好の攻撃材料になってしまっているのでしょう。

性格というものは後天的影響によって、いかようにも変化します。

そして、人の性格にはオモテとウラがあるし、誰もが二面性を持っています。

たとえば、「粘り強い」人にも、「飽きっぽい」一面があったりします。

言葉の上では矛盾してますが、すべての面において「粘り強い」人のほうが珍しいし、「粘り強さ」と「飽きっぽさ」が現れる気質部分が違っている場合だってあるんです。

「継続的努力への耐久性」としての粘りがあっても、「興味集中力の弱さ」としての飽きっぽさがある人だっているかもしれない。

分かりやすく言うと、ものごとの完全さや完成を目指すときには粘り強いが、同じことにはなかなか興味が長続きしないという面では飽きっぽいということ。こういう人がいたっておかしくないわけです。

むしろ、能見正比古氏が400もの質問項目を設けて3万以上の人からアンケートを採った理由は、そちらの矛盾する気質部分を解析することの目的の方が強いのです。

つまり、一言で、「A型は神経質」と片づけるのではなく、A型の持つ性格の変動制や多重構造を探ること。

せっかくだから、一見矛盾するような「局面ごとに現れやすい相反する傾向」を書いてみましょうか。

O型は、一般には情緒安定。しかし、プレッシャーが高まって追いつめられた状態になり、限界を越えると、突然に乱れメロメロになりやすい。

A型は、O型とは逆に心配苦労性の人が多い。しかし、ある限界を超すと突然開き直って落ち着いて冷静になる傾向が多い。

B型は、気分屋で一般に感情が揺れ動く人が多い。しかし、そのゆれ動き方は、プレッシャーがあろうが、なかろうが、ほぼ一定で、ある意味では一番情緒安定型。

AB型は、極めて冷静でクールな面と、突発的気まぐれな面があり、時に応じて、その二面をスイッチしている感じ。

これが、膨大なサンプルから導き出された「傾向」です。

そう、あくまで「傾向」。

断定でも結論でもない。

「情緒安定」と「メロメロ」は明らかに正反対な状態ですが、どんな人だって、矛盾する感情や行動の傾向はありますよね?

そして、これらの分析結果は、あくまで「傾向」なので、ハズレている人だって多いハズなんです。

こうした背景を知った上で、私は酒の席での女の子との会話を楽しんでいるわけです。

知っていて損はない予備知識だし、少なくとも「科学的根拠が無い」だのとしたり顔で抜かしてヒンシュクを買うこともありません。

というか、むしろ、調査手法は非常に「科学的」なんだけどね……。

というわけで、私は血液型というのは、日本社会の中では、シチュエーションによっては、とても会話の潤滑油になる知識だと思っているのです。

年齢差のある男女が、「今日の天気」「今日の日経平均」「寒い・暑いといった気候の話し」の話題で会話をするよりも、ずっと盛り上がるはずです。

盛り上がったところで、少しずつ互いの趣味とか、共通の話題を探りながら、別の話題にシフトしてゆけばいいだけの話です。

だから、ある意味、こんなに覚えるのがラクで便利な話題は無いとすら思っています。 だからといって、血液型の話しばかりしているわけじゃないですよ……。

と、話しが脱線してしまいましたが、血液型の性格分類って、じつは、アメリカではまったく相手にされないというか、翻訳本はまったく売れなかったみたいなんですね。

そりゃそうだ。

なにも、血液型の分類を聞くよりも、他民族国家のアメリカじゃ、目の前にいる人の肌の色や人種のほうが、相手を判断する明確な判断基準になりますからね。

しかし、お隣の韓国は違った。

能見氏の血液型の本がベストセラーになり、「B型男」を揶揄した歌がヒットし、B型男は怒り、歌手は無料コンサートを開くことでB型男の怒りを静めたという話しもある。

さらに、この歌のせいで、一時期は、彼氏の血液が「B型」だと分かった時点で別れを切り出す女が出てきたりと、この極端な盛り上がり方は、日本以上だと思います。

そんな社会背景で生まれた映画が『B型の彼氏』なんですね。

タイトルから想像できるように、A型の女の子が、B型の彼氏に恋し、振り回され、少しずつ心を痛めるようになり、傷つき、そして……、というのが基本的なストーリーです。

もっと、波茶滅茶で、滅茶苦茶のB型男が描かれているのかと期待をしたのですが、それほどでもなかった。けっこうマトモでイイ男じゃん、B型の主人公くんは(笑)。

ただ、個人的には「?」なところがいくつかありました。

主人公のB型君の行動のいくつかって、「B型特有の行動パターン」というよりも、その人の品性や生まれ育ちにかかわる人間性の部分が原因なような気がしてならないのです。

つまり、「彼女を先輩とデートさせるかわりに、溜まりにに溜まって払えなくなったカードローンを支払ってもらう」こと。

言い方悪いけれども、一言で言えば、「彼女を売る」という行為。

これって、「血液型」ではなく、「人間性」の問題じゃないか?

その人の「お金観」や「育ち」の違いではないのか?

「血液型の問題じゃねーよな」と思ってしまった。

「B型の彼氏」というタイトルがついているだけに、映画を観ている人に、「B型ならではの思考&行動パターン」と誤解されかねないんじゃないかと思いました。

ま、痒いところは、クスッとなったり、「わかるわかる」と共感するところも多いんですけどね……。

ちなみに、私と息子はB型、女房はO型です。

「B型男2人に囲まれた暮らしはどお?」と尋ねてみたら、「毎日が笑えて退屈しない」だそうです。

そういえば、うちの女房言うには、私と息子の二人は、寝相がものすごく悪いそうです。

たしかに、南向けに頭を向けて寝ていても、朝になると、北向きだったり、東向きだったりします。

映画でも、そのような描写、ありました。

主人公のB型君と彼のお父さんが、ひとつのベッドに寝ているシーンなんですが、二人の寝相と寝返りがまったく同じパターンなところが笑えました。

きっと、我々の寝相の悪さに、寝るスペースを侵犯されている女房が見たら、大爆笑するに違いないシーンでしょうね。

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記:2005/10/13

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