ザ・ミュージック・オブ・ボブ・クーパー/ボブ・クーパー

   

クーパーよりもフェルドマンのプレイに耳がいってしまう

1番の目玉は、ジャケットだ。

ショッキングピンクのタイトル文字、“coop!"の“o”の文字一つが、女性の唇になっているアイディアが秀逸だ。

背景色も薄いピンク。

不機嫌な顔をした、いかにも“アメリカンパパ”なルックスのボブ・クーパーが“coop!"と驚いている女性の背後でテナーを吹いているという構図。

“いかにも”なアメリカン・テイストなジャケットだが、印象には残る。

2番目の目玉は、ヴィクター・フェルドマンが大活躍していること。
よく聴くと、背後には凝ったホーン・アレンジが施されているのだが、アンサンブルの“集団芸”が練られれば練られるほど、フェルドマンの“個人芸”のほうに耳が吸い寄せられてしまう。

肝心のリーダーのクーパーのテナープレイはというと、あれ? あまり印象に残らないぞ。なんとなく煮え切らないというか、突き抜けきらないというか。可もなく不可もなく、無難な線を行き来している、そんな感じ。

これを書くにあたって、既にこのアルバムをBGMのように7回以上リピートさせているのだが、頭に残るのはフェルドマンのヴァイブばかり。クーパーのテナーは、右から左へと流れてゆくだけで、ほとんど印象に残るプレイもフレーズも出て来ない。

オーボエ奏者としても知られているボブ・クーパー。

彼のこのアルバムにおけるプレイのコンセプトは、演奏に埋没しない程度に自己をアンサンブルに溶け込ますことだったのだろうか?

これでは、どう聴いてもヴィクター・フェルドマンを全面的にフィーチャーした作品に聴こえる。

管楽器の絡みに重点をおくようなアレンジが施されているためか、ストレート・アヘッドな、いわゆる“いけいけ”なスピード感溢れる演奏は少ない。
強いていえば、《コンファメーション》と《サムバディ・ラヴズ・ミー》か。演奏の出来は、可もなく不可もなく。

躍動感を求めるよりも、むしろ、《イージー・リヴィング》のような落ち着いたたたずまいの演奏のほうが、この編成、このアレンジには合っていると思う。

中味のサウンドよりも、ジャケットのインパクトが勝っているアルバムだと思う。

記:2004/07/16

album data

COOP! THE MUSIC OF BOB COOPER (Contemporary)
- Bob Cooper

1. Jazz Theme And Four Variations: Main Theme: Sunday Mood
2. Jazz Theme: 1st Variation: A Blue Period
3. Jazz Theme: 2nd Variation: Happy Changes
4. Jazz Theme: 3rd Variation: Night Stroll
5. Jazz Theme: 4th Variation: Saturday Dance
6. Confirmation
7. Easy Living
8. Frankie & Johnny
9. Day Dream
10. Somebody Loves Me

Bob Cooper (ts)
Pete Candoli (tp)
Conte Candoli (tp)
Don Fagerquist (tp)
Frank Rosolino (tb)
Johnny Halliburton (tb)
Victor Feldman (vib)
Lou Levy (p)
Max Bennett (b)
Mel Lewis (ds)

Recorded at Contemporary's Studio in LosAngeles;
1957/08/26-27

 - ジャズ