案外まっとうな『 生き残る芸能人のすごい処世術』のエピソード

      2019/07/19

やっぱり「気遣い」

生き残る芸能人の処世術。
それは、一言で言えば、「気遣い」。

この一言に尽きるだろう。

『生き残る芸能人のすごい処世術』。


生き残る芸能人のすごい処世術

この本を読めば、結局のところ、芸能界であろうが、会社組織であろうが、ママ友コミュニティであろうが、人に対する配慮と気遣いに長けた人ほど、その世界の中では評価が高まり生き残る(確率が高まる)。

そのような当然なことを改めて感じられる本だった。

意外と常識的

著者の城下尊之氏は、長年、様々な芸能人の取材を重ねてきた芸能リポーター(その前は芸能担当の記者)だ。

さすがにベテランということもあり、かなりの大物芸能人とも接触し、それぞれのエピソードをショートエッセイ風につづられている。

ただ、正直、もっと豪快かつ破天荒なエピソードが満載されているかと思いきや、芸能界の大物といえども、いや、大物だからこそなのかもしれないが、本書に収録されている芸能人のエピソードの多くが「至極まっとう」なことばかり。

もちろん「気遣い」の話がメインなので、それはいたし方がないことではあるのだが。

辛い仕事だからこそ染みる「気遣い」

豆腐屋さんが豆腐を作って売るように、芸能記者は「芸能人を取材すること」が仕事なわけだから、お目当てとなる芸能人から何らかのコメントやリアクションをとらなければならない。

時には、寒空の下(炎天下の下)何時間も「待ち」の状態も少なくないだろう。

人によっては、「何が悲しうて年端もいかぬ小娘(小僧)のために俺たちは何時間も待たなあかんねん、やってられへんわ」と思う芸能記者だっているかもしれない(いや、そう思ってしまうと、こういう仕事はできないのか?)

そして、ようやく待ちに待った芸能人が姿をあらわしたとしても、コメントを取れるかどうかは保証の限りではない。

無言をつらぬかれたり、邪険に扱われたりのほうが、むしろ多いのではないだろうか。

なにせ取材をされるということは、その理由の多くは「不倫」だったり「離婚」だったりと、芸能人にとっては「都合が悪いこと」のほうが多いわけだから。

放置プレイや邪険な対応は、芸能記者にとっては当然のリアクションなのかもしれないが、その中でも気を遣ったり労ってくれたり、機知に富んだ対応をする芸能人がたまにいたりすれば、それは砂に水が染みいるようなありがたさを感じるのだろう。

そのようなエピソードがズラリ!と並べられたのが本書だ。

その対応に人柄が出る

その「気遣い」は各芸能人によって当然ながら違うわけだが、その対応の仕方にそれぞれの芸能人の人柄や個性がにじみ出ている。
そのあたりが、本書を読む楽しみなのだろう。

取り上げられている芸能人、そういえばジャニーズ系はいるが、AKBやモー娘。をはじめとしたグループ系のアイドルや、ミュージシャンのエピソードはない。
単に取材していないだけなのかもしれないが。

また、本書で一人だけ「反面教師」として悪い例の見本として書かれている芸能人もいるが、その人は平成の仮面ライダーの主役だったアノ人。

そういえば、仮面ライダーや戦隊モノ、ウルトラマンなど特撮系の番組に出演していた俳優陣に関してのエピソードもない。
単に取材していないだけなのかもしれないが。

盗めるところは盗むべし

正直、ここに書かれているエピソードのような内容が出来れば、一般社会では誰もが「出世間違いなし」とまでは言わないけれども、必要以上に多くの敵は作らず、比較的穏健な人生をおくれるのではないだろうか。

盗めるところは盗んで活用すれば「吉」。

ちなみに、本書で取り上げられている芸能人は以下のとおり。

綾瀬はるか、笑福亭鶴瓶、福山雅治、出川哲朗、藤原紀香、明石家さんま、神田正輝、高島忠夫、森繫久彌、南明奈、志村けん、三田村邦彦、前川清、渡瀬恒彦、林家三平、石原裕次郎、渡哲也、坂上忍、福山雅治、ほしのあき、三遊亭円楽、竹内結子、沢尻エリカ、ベッキー、石田純一、桂歌丸、佐藤浩市、千昌夫、舘ひろし、ビートたけし、勝新太郎、高田延彦、宮根誠司、西川史子、小倉智昭、塚地武雄、里見浩太朗、火野正平、友近、あべ静江、和田アキ子、東海林のり子、前田忠明、松田聖子、野村克也、SMAP、関ジャニ∞、香川照之、杉田かおる、藤あや子、五月みどり、錦織一清、萬屋錦之介、淡路恵子、熊切あさ美、松方弘樹、辛坊治郎、大野智、松居一代、立川談志、東山紀之、滝沢秀明、渡辺謙、高島礼子、梅沢富美男、森光子、川崎麻世、ケーシー高峰、樹木希林、勝野梓、キャシー中島夫妻、左とん平、片岡仁左衛門、十朱幸代、高橋英樹ファミリー、水嶋ヒロ、地井武男、小野ヤスシ

好きな芸能人がいたら、ぜひどうぞ!

個人的には沢尻エリカの「別に」発言にいたった背景(理由)や、ショーケン(萩原健一)に「親父(三國連太郎)に似て、ヘタクソだなぁ 」と言われた後の佐藤浩市の対応、それに、ビートたけしが不倫会見で「ウッ」と言葉に詰まった真相などのエピソードが興味深かった。

記:2017/11/26

 -