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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

世界最高のジャズ/原田和典

      2018/09/07

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原田氏渾身の改作!

この人、絶対鼻血を出しながら書いているよ!
魂をすり減らしながら思いを活字化したんじゃないかとすら思う渾身の改作!

そう思わずにはいられないほど、抜群に面白いジャズ本を紹介しよう。

光文社新書の『世界最高のジャズ』。
若手ジャズ評論家のナンバーワン、元『ジャズ批評』編集長の原田さんの新刊だ。

世界最高のジャズ (光文社新書)世界最高のジャズ

あ、原田さんと面識があるからということが理由で、オススメしているわけじゃないよ。
本当に面白いから、是非、皆さんに読んで欲しいと思って書いているのだ。

「ジャズ好き熱」が熱いんです

じつは、私、まだ、この本全部読み終えていない。

おいしそうなところからツマミ読みしているところなので、分量にして今のところ3分の2ぐらいまで読み終わったところかな。

途中までしか読んでいないが、でも、こりゃぁ面白い!と断言できますね。

いやはや、この人、絶対、鼻血を出しながら執筆しているよ。

ついでに、身体中から湯気と汗を発散させながらパソコンのキーを打っているに違いなく、さながら、執筆現場は、ロリンズやコルトレーンが熱演を繰り広げていたときのヴィレッジ・ヴァンガード並の温度、湿度、むせ返り度だったんじゃないかな?

きっと、パソコンは熱でデロデロに溶けてしまったに違いない。
それでも原田さんはキーボードをはなさず、食らいつきながら原稿を書く……。
読んでいるだけで、原田さんの熱気がもわもわと襲ってくるんだもん。

たしかに、ちょっと大袈裟な修辞は、原田さんの芸風(?)ではある。
しかし、これほどジャズへの熱い思いが伝わってくる本を読むのは久々だ。

どのページの行間からも「俺は、ジャズが好きなんだぁ、文句あっかぁ~」な叫びが聴こえてくるのだ。
それはそれは熱~い本なのです。

『アセンション』かけながら読むと、それこそ脱水症状になってしまうかもしれません。
って、あ、原田さんは『アセンション』あまり好きじゃなかったんだっけな。

ユニークな章立て

特に新しい切り口や構成はない。

ビッグネームなジャズメンを柱に、彼らの実績とオススメアルバムをたっぷりと紹介してゆくという構成。

この手法は、「いーぐる」の後藤マスターが『ジャイアンツ・オブ・ジャズ』で、岩浪洋三も『モダンジャズの名演・名盤』で行っている編集構成だ。

ただ、章の分け方がユニークなのは、
ジャズの大巨人、サッチモとエリントンの章、
パーカー、パウエル、ブラウニー、ロリンズ、コルトレーンと、アドリブにスポットを当てた章、
マイルス、モンク、ミンガス、ブレイキーとバンドリーダーにスポットを当てた章、
オーネット、ドルフィー、テイラー、アイラーにスポットを当てた章、
ディジー、ウェス、カークと世界音楽という括りの章、音の瞬発力ということで、マクリーン、モーガン、ショーターにスポッを当てた章と、
章立ての仕方によるジャズマンの分類がユニークで目からウロコだった。

このように分類すれば、「ジャズジャイアンツ全般」で括るよりも、セレクトが絞れるからね。

ジャズマンの人数が絞れれば、1人に費やす紙数も増え、じっくりと紹介出来る。読者としても読みごたえがあって嬉しい、ということになる。

「ジャズジャイアンツ」という言葉で括ってしまうと、チック・コリア、あるいはウイントン・マルサリスといった、「この人たちもジャズジャイアンツとして分類しといたほうが良いんだろうなぁ」な人たちも入れなければならないし、逆にマクリーンなどを選ぶと、もっとスゴいアルト奏者がいるじゃないか、ということになりかねない。

だから、切り口別にジャズマンを分類するという手は巧い方法だと思うのだ。

初心者向けではないけれども

これは、初心者向けの本ではないと思う。

いや、初心者にも是非読んでいただいて、稀代のジャズバカ(失礼!)のスピリットを是非、体内に注入して欲しいものだが(だんだん文章が原田調になってきているな…)、これはマニアにも“再勉強”になる本と言ってよい。

とくに、通り一遍の知識と略歴でサラッと通り過ぎてしまうことの多いサッチモやエリントンに関しての記述のボリュームは素晴らしいし、勉強になる。

「コイツ、本っ当ぉ~に好きなんだなぁ」と思わせる文章なので、「そんなにスゴイなら、いっちょ聴いてみるか!」と思わせるだけの説得力がある。その説得力の源泉が「心から好き」という、迷いも曇りもないただ一点の強力な思い。

イキな言い回しや、こ洒落た口説き文句はないけれども、全身から湯気をただよわせながら「これ、ほんとうにいいですよ!」と奨められたら、誰しも納得してしまうもの。

あと、意外にも(?)、原田さんってショーターが好きなのね。
ウェイン・ショーターの章の熱量と分量がそれを如実に物語っている。

逆に、ブラウニーのことは、本心ではどうなのかな? 認めてはいつつも、腹の底から好きなのかなぁ、なんて勘繰ったりして。

あと、最後の章の現代の70年代から今日までの30枚の名盤紹介も嬉しいね。
とくに、
ウエザーリポートの『アイ・シング・ザ・ボディ・エレクトリック』、
ポール・ブレイの『アローン・アゲイン』
スティーヴ・コールマンとデイヴ・ホランドの『フェイズ・スペース』、
ケニー・ギャレットの『トリオロジー』
など、私が大好きなアルバムにスポットを当ててくれているのが嬉しい。

これらのアルバムって、あんまり他のジャズ本では紹介されないからね。

ジャズ熱気むんむん

とにもかくにも、通り一遍のジャズマンや、名盤の紹介なんてことは一切なし。
どのページをめくっても、書き手の熱い思いが、ときに暑苦しいほどこちらにムンムン伝わってくるのだ。

「耳から血が出るほど聴きまくる」っていう表現を、私はときどき使うけれども、この本は、絶対、鼻から血を出しながら書いているよ。それもタラタラとじゃなくて、プシューっと勢いよくね(笑)。

鮮度抜群の「鼻血ジャズ本」、是非是非ご一読あれ。

ちなみに、この本の刊行記念イベントが今週末の土曜日(19日)に、四谷の「いーぐる」で行われるそうです。
ああ、残念。この日は仕事からまったく抜けられない日なのだ。参加できない!!!

かわりに興味をもった方がいらっしゃれば、是非、参加して、結果を私にレポートしてください(笑)。

記:2006/08/15

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