妻の浮気―男が知らない13の事情/池内ひろ美

      2018/04/12

「事実は小説より奇なり」とはよく言うけれども、この本を読むと「事実はコミックよりもコミカル」だと感じる。

本書は、夫婦問題研究ラボで夫婦問題や離婚コンサルティングを行う著者・池内ひろ美氏のところに来訪した女性たちの実態を、様々なパターンにわけて描き出した内容となっている。

韓流にハマる女性、ホストにハマる女性。
ドラマの世界では「あるある」の連続で、もはや定番ともいえるパターンではあるのだが、本人たちはいたって真剣だ。

もっとも、「人ごと」だから、笑って読めるかもしれないが、いざ自分が当事者になってしまうと、異性にハマってしまった自分の姿というものは、意外と客観的には見れないものだ。

特に、倦怠期が訪れる前の熱愛ラブラブ状態のカップルのメールのやり取りの一部が掲載されているが、一瞬ヒヤッとした。

ああ、自分も似たようなものなのかもしれないな、と。

傍目から見ると、言語の退行現象を起こしたような幼児語を互いに連発するカップルのやり取りを見れば「何、このバカップルは?!」となるのかもしれないが、いざ、自分がそういう状態になると、結構似たようなことをしていた気もするからだ。

もちろん、本書に掲載されている「タッくん、勃ちゃう~!」みたいな言葉は使わないが、私自身も似たようなものだったのかもしれないし、時折、友人から間違えて送られてくる彼女宛てのラブラブメールも、「ねえねえユキキョン? ぼくたちさ~付きあって1200日なのだ! 行きたいレストランがあるのであります!こことあそこ、どこにするです?」みたいな内容だし。

夫がいながら不倫や恋をする現代の妻の実態を赤裸々に明かされた本ではあるが、実際は、そのような自分とはちょっと違う世界に足を踏み入れた女たちの実態を好奇心で覗き見るかのような内容でもある。「バッカだな~」とか「自分だったら、絶対そんなことないのに」なんて思いながら、ワイドショーで報道される芸能人の不倫やスキャンダル、あるいは一般人の不幸という、「あちら側」の世界で起こっている出来事を、「こちら側」という安全な場所からエンターテイメント感覚で読むことが出来るだろう。

しかし、ひとたび何かの歯車が、ほんの少しだけ狂えば、「こちら側」の自分も、即刻「あちら側」の世界に移動してしまうのではないかという不安にも駆られる本でもある。

ところで、いくら名前や細部の情況は変えて公開しているといっても、かなり赤裸々なエピソードも多いため、相談者から「これってもしかして私のことじゃない?!」と特定され、「真剣に自分の悩みを吐露したつもりなのに、本のネタ(=商売道具)にするなんて!」と、著者のところにクレームがくるんじゃないかと心配だ。

記:2005/06/06

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