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ジャズと映画と本の日々:高野雲

「悪くあれ! 」窒息ニッポン、自由に生きる思考法/ モーリー・ロバートソン

      2017/12/26

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「悪くあれ! 」窒息ニッポン、自由に生きる思考法

日本批判の本ではない

ローリー・アンダーソン、……ではなくて、モーリー・ロバートソン氏の快心の一撃!とでも言うべき本が出版された。

外国人から見た「日本のここがおかしいよ」的な本はたくさん出ている。

宋文洲氏の『ここが変だよ日本の~』の一連の著作とかね。

宋文洲が語る ここが変だよ日本の会社

タイトルや目次をパラパラとめくると、この本に関して、そのような印象を抱く人もいるかもしれないが、実はそうではない。

音楽、禅、ドラッグ、パンク、社会、DJ、音響、クラブカルチャー、トランプ現象、ダブステップ、EDM……。

もう、なんでもござれで、どんどん話が展開していく。

しかし、この展開っぷりは、とりとめもなく、あるいはシッチャカメッチャカというわけではなく、著者自身のユニークな体験からくる、血肉の通った生きた言葉であり、なるほどと目からウロコな記述がたくさんある。

特に、クラブカルチャーに関しては、まったくといって良いほど疎い私にとっては、「へぇ~!」の連続だった。

「F」「Fm」の話とかね(詳しくは本書をご覧あれ)。



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パンクの精神で東大に合格

現在は、国際ジャーナリストとDJとして活躍する著者、モーリー・ロバートソン氏の経歴が面白い。

父親がアメリカ人、母親が日本人のハーフである彼は、現役で東京大学とハーバード大学の両方に合格している。

しかも、東大を受けた理由というのが「パンクの精神で」というところが面白いし、受験に集中する試験2か月前までは石川県の地元でパンクバンドをしていたというのだから面白い。

それで、受かっちゃうんだから、もちろん猛勉強はしたんだろうけれども、もともと地頭の良い人だったんでしょう。

実際、本書で展開されているモノの見方、考え方も、鋭く本質を突いているし、平易な文章で、けっこう深いことを語っているので、一気に読めてしまう。
そして、読了後は、ほんの少し世界の色が変わって見えるという読者が出てくるかもしれない。
だとすると、それは、単一かつ画一的なモノの見方からほんの少しだけでも脱却できた証拠でしょう。

音楽好きにおすすめしたい一冊

この本は、是非、音楽好きに読んでもらいたいと思う。

それも、単に流行の音楽を追いかけたり、カラオケでヒット曲を歌ったりすることが好きな人ではなく、いわゆる「耳の冒険家」気質の音楽好きに手に取ってもらいたい。

私自身そうなのだが、未知の音源、それも自分の感性をはるかに上回っている判断不能の音楽に出会ったときに「この違和感は何だろう?」と感じることと思う。

違和感ありながらも、なぜかまた聴きたくなる。
もしかして、何度か聴いているうちに、将来はものすごく好きになる可能性があるのではないかという期待感を感じる音楽との出会いって、あると思うんだよね、「耳の冒険家」なら。

そういう人こそ、本書を読んで、なーるほど!と手でヒザを打って欲しいものであります。

ブライアン・イーノにジョン・ケージ、そして民族音楽。
さすが本場アメリカの大学で、電子音楽コースを専攻し、現代音楽の巨匠であるイワン・チェレプニン氏に師事し、ジョン・ケージと対話をしたこともある人の言葉には説得力がある。
専門的だけど、非常に興味深い考察の連続。

ある種「前衛」な芸術表現を学術的に学んで(実践して)きた人の言葉って説得力があるし、自分の中に暗黙に形成された「グリッド(本書に登場する重要なキーワード)」から解放されると、聴覚と視野がいつの間にか拡張している自分自身に気が付くんじゃないかな?

この本を読んで、従来の自分の価値観を塗り替えてくれるような音楽を聴いてみたい!と思った人は、まずは、ジョン・ケージをお勧めします。
あの有名な≪4分33秒≫も収録されているCDね。

John Cage

とにもかくにも、音楽を聴きながら、コーヒー2~3杯分の充実した読書タイムを楽しめる本なのだ。

記:2017/12/24

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