ボス・テナー/ジーン・アモンズ

   

タフで骨太、泰然自若

《カナディアン・サンセット》が、いい。

無口な男の呟きといった趣きで、淡々とした静かなリズムとブローの中にもじわりと染みてくる良さがある。

まるで、一人でゆっくりと酒を楽しんでいるような感じ。
カナディアンにかけて、カナディアンクラブを飲みながらが良いかもね。
グラスを傾けながら耳を傾けると、ゆっくりと時間が過ぎてゆく。

ジーン・アモンズというと、私にとっては「シカゴ・スタイルのブロウするテナー奏者」というイメージが強かったので、これを聴く前は、豪快にブロウするテナーのサウンドをイメージしていた。

しかし、聴く前に抱く「ごっついテナー」の印象は、一曲目のリラックスしたブルースを聴いた瞬間、良い意味で裏切られる。

ゆったりと心地よいのだ。

もちろん一音一音は、タフで骨太だが、どこか泰然自若としている。どっしりと腰が据わっているのだ。

大人の粋さを感じてしまうアルバムだ。

コンガの参加も、このアルバムを心地さをアップさせているし、脇をさり気なく引き締めるトミー・フラナガンのピアノも、演奏全体をさり気なくまとめ上げている。

タフで豪快な男が、フともらす溜息と呟き。

そして、そんな彼の呟きは、言葉少なくともキラリと存在感を放つ。そんな印象を抱くアルバムだ。

そして、私は《カナディアン・サンセット》にそれを強く感じる。

うーん、雄大な夕焼けを見ているようだ。

それでは、以下、ジーン・アモンズの簡単な経歴を軽く書いてみよう。

1925年4月14日、シカゴ生まれ。父親は、ブギウギ・ピアノの父と言われるアルバート・アモンズ。
47年から49年の間、ビリー・エクスタイン楽団に在団。49年は、ウディ・ハーマン楽団のソロイストとしてフィーチュアされる。ブルージーなプレイと、迫力あるビッグトーンで、脚光を浴び始める。とくに、ソニー・スティットとの共演が彼の人気に拍車をかけた。56年からプレスティッジ・レーベルに吹き込みを始める。このレーベルで、4ビートに止まらず、ボサ・ノバなどの様々なスタイルの演奏を残す。

この『ボス・テナー』も、プレスティッジ在籍時のものだ。

1975年8月6日、ガンにより死去。

記:2002/09/19

album data

BOSS TENOR (Prestige)
- Gene Ammons

1.Hittin' The Jug
2.Close Your Eyes
3.My Romance
4.Canadian Sunset
5.Blue Ammons
6.Confirmation
7.Savoy

Gene Ammons (ts)
Tommy Flanagan (p)
Doug Watkins (b)
Art Taylor (ds)
Ray Barretto (conga)

1960/06/16

 - ジャズ