バド・プレイズ・バード/バド・パウエル

   

バドがバードを塗り込める

このアルバムが発売された頃は、『スイング・ジャーナル』誌上には、広告、記事ともに、「バドがバードを弾いた音源発見!」と大々的に掲載されていたことを昨日のように思い出す。

「おお、そうか、そうか。んじゃ、聴かなきゃ。楽しみ楽しみ」

興奮して、CDを購入した記憶がある。

パーカーの曲は、それこそ数えきれないほどの多くのジャズマンが取り上げている。

パーカーナンバーは、演奏するミュージシャンの技術や品格を映し出す鏡のようなもの。

よってパーカーの曲にもかかわらず、まったくパーカー風に聴こえない演奏をするジャズマンのほうが多かったりする。

その理由の1つは、技術・理解力不足。これは問題外。

そしてもう1つは、完全にパーカーの世界を自分の世界に塗り替えているがゆえ。

バド・パウエルのピアノによるパーカーの演奏は、言うまでもなく後者だ。完全に、バドの世界一色に塗りこめてしまっている。

だから、最初に聴いたときの違和感といったらなかった。

極彩色のパーカーに対して、どこまもモノクロームのパウエルの世界。正真正銘、どこを切っても正しくパーカーナンバーなのだが、パーカー色がほとんど感じられないという興味深い矛盾。

どこまでも透き通るような明快な世界観と、空高くつきぬけ飛翔するかのようなパーカーのアルトサックスとは正反対の重力を帯びたピアノ。漂うは、強烈なバド色。しかし、それがバドのバドたる所以。

どこまでもステディなビートを刻む、生真面目なジョージ・デュヴィヴィエのベースがより一層パウエルの「捩れタイム感」を相対的に際立たせており、さらに、ダークで太いパウエルのピアノが奏でるパーカー・ナンバーは、パーカーの天空に飛翔するようなニュアンスとはうって変わって、どこまでも重く地に力強く足をつけているのだ。

記:2007/04/09

album data

BUD PLAYS BIRD (Roulette Jazz)
- Bud Powell

1.Big Foot (Long Version)
2.Shaw 'Nuff
3.Buzzy
4.Yardbird Suite
5.Relaxin' At Camarillo
6.Confirmation
7.Billie's Bounce
8.Koko
9.Barbados
10.Dewey Square
11.Moose The Mooche
12.Ornithology
13.Scrapple From The Apple
14.Salt Peanuts
15.Big Foot (short Version)

Bud Powell (p)
George Duvivier (b)
Art Taylor (ds)

1957/10/14 #2,3,4,6,8,11,14
1957/12/02 #7,12
1958/01/30 #1,5,9,10,13,15

 - ジャズ