バード・イン・ハンド/ドナルド・バード

   

おいしい管楽器の音色の組み合わせ

ドナルド・バードのトランペッターとしての一面も、もっと評価したい。

ソウルジャズの人、アレンジの巧い人、といったように、楽器演奏の部分以外のところに視線が集まりがちな人ではあるが、、肝心なトランペットのプレイを、キチンと聴いてみると、なかなか趣味の良いプレイをしていることに気がつく。

ブルーノートの諸作品、たとえば、リーダー作以外でも、ホレス・シルヴァーのリーダー作にサイドマンとして参加しているものを聴いても、バードの品良くブリリアントなトランペットはなかなか光るものがある。

まず、プレイが堅実。まず、音もリズムも外さない。
とくに、リズムに対しても非常に丁寧に乗ってくるし、フレーズの組み立ても明解。しかも、派手ではないが、必ず印象深いフレーズを混ぜてくる。

音色もケタタマシイほどのアタック感はないが、ブリリアントで艶やかな明るさに満ちている。

サクッとした肌触りが耳に心地よく、彼の音色の美しさはもっと評価されてしかるべきだろう。

バードのこのような音色にベストマッチなのが、ペッパー・アダムスのバリトンサックスだ。

高音と低音がちょうど、凸と凹のように組み合わせがシックリと来る上に、プレイの面でも、過去にレギュラーグループを結成していただけあって、息もピッタリ。

これに、柔らかなチャーリー・ラウズのテナーサックスがブレンドされれば、もう肉汁のしたたる美味しいハードバップの出来あがり。

バードの優雅さと、アダムスの迫力が丁度良い具合にブレンドされた、みずみずしくも勢い溢れる演奏が楽しめる1枚だ。

この録音の5ヶ月後に、バードは『フュエゴ』を発表。注目を集めることになる。

記:2010/05/20

album data

BYRD IN HAND (Blue Note)
- Donald Byrd

1.Witchcraft
2.Here Am I
3.Devil Whip
4.Bronze Dance
5.Clarion Calls
6.The Injuns

Donald Byrd (tp)
Charlie Rouse (ts)
Pepper Adams (bs)
Walter Davis Jr. (p)
Sam Jones (b)
Art Taylor (ds)

1959/05/31

 - ジャズ