クラウス・ライブル・トリオ/クラウス・ライブル

   

オーガニックなレーベルの普通に良いジャズ

聴いた瞬間、いったいこのピアノトリオはいつ演奏されたものなのだろうと思った。

1999年。比較的最近の録音だ。

古くもあり、新しい感覚もほんの少しブレンドされたオーソドックスなピアノトリオ。

ピアノの“主”に対して、ドラムとベースが、きっちりと“従”の関係。

バド・パウエルが開拓したオーソドックスなピアノトリオのスタイルだ。

無国籍という言葉があるが、“無時代”という言葉が頭に浮かんだ。

要するに、時代を関係なく、良いスタイルはどの時代になっても継承されるということ。

保守的かもしれないが、音楽はスタイルで感動するわけではないからね。

「おっ、新しいことやってるから、すげー!」
これは、感心と驚きで、感動ではない。

そして、進歩・進化は大事なことには違いないけれども、“進化=良い音楽”には必ずしも結びつかないわけで。

どうも、本や雑誌で「ジャズは進化しなければいけない。進歩・前進してこそのジャズ」というスローガンを金科玉条のごとく唱える評論家の文章にたびたび出くわすと、「別に進化しなくても内容が良ければそれでいいじゃないか」とリスナーとしての通常の感覚をときに忘れてしまいがちだ。

本来ならば演奏の内容にそのものに関係の無いはずの“時代”や“スタイル”などということまでをも踏まえて聴かなければいけないなんてことは無いのだから。

クラウス・ライブルのトリオ。

メリハリのはっきりとしたタッチのピアニストだ。

力強い骨のあるタッチで繰り広げられる演奏は、折り目正しさの中にも、かなりのドライヴ感を感じる。

しかし、そのドライブ感は、黒人ピアニストの柔らかさを含んだノリとはかなり異質な手ごたえだ。

レイジーさやルーズさが希薄で、どちらかというと、硬質なグルーヴを感じる。

全体的に、ボーっと聴いていると、どこかで聴いたことのあるようなフレーズや雰囲気が全体から感じとれるが(特に 《アイル・リメンバー・エイプリル》 のアレンジなど)、もちろん、この硬質にドライブするピアノはクラウス・ライブル独自のものだ。

ハードバップはなやかりし時代のピアノトリオのテイストが脈々と受け継がれていることを感じる演奏だと思う。

このアルバムをリリースしているのは、ドイツのオーガニックというレーベル。

「21世紀のブルーノート・レーベル」を目指しているという。

なるほど、21世紀のブルーノート・テイストとはこのようなものなのか。

だとしたら、こういう“普通に良いジャズ”をどんどん出していって欲しいものですね。

記:2002/05/02

album data

CLAUS RAIBLE TRIO (Organic Music)
- Claus Raible

1.Lunar Web
2.Nici's Blues
3.Hammon Dex
4.I Should Care
5.I'll Remember April
6.Moon Mist
7.Little Leo
8.It's The Talk Of The Town
9.The Squirrel

Claus Raible (p)
Paulo Cardoso (b)
Mario Gonzi (ds)

1999/06/22 & 23

 - ジャズ