コンプリート・コミュニオン/ドン・チェリー

   

ガトー参加!ぶ厚い迫力

朝、ぼーっとiTuneが選曲するジャズを聴いていた。

フロントがトランペットとサックスのピアノレストリオの演奏が流れてきた。

ボーっとした頭で聴いていたので、「あ~、オーネットとドン・チェリー」が共演した何かの音源だなと思った。

あまりに曲想やアンサンブルがオーネット的であったし、実際サックスのメロディ展開がオーネットに似ていたからだ。

ところが、よくよく聴いていると、あらら、このサックスはオーネット的でありながらオーネットではないぞ、と気が付いた。

ディスプレイされている曲名(とアルバム名)を見ると、ドン・チェリーがリーダーの『コンプリート・コミュニオン』だった。

そこでビックリ。

ガトーといえば、『アンダー・ファイヤー』などに代表される、グロウルした音色と、演歌チックなフレージングが真っ先に思い浮かぶテナーサックス奏者なのだけれども、ここで吹かれているガトーのサックスは、かなりオーネット的なのだ。

オーネット・コールマンと活動を共にし、双子とまで言われるほど音楽性が酷似し、問題作『ジャズ来るべきもの』にも参加したドン・チェリーが作り出した曲は、やはりどことなくオーネット的。

その「オーネット的」なる磁力に誘発されて表出したプレイなのかな?とも考えてしまうほど、ここでのガトーのテナーはオーネット的で、何の先入観も持たずに聴いていると、オーネットがブルーノートに残した『ニューヨーク・イズ・ナウ』や『ラヴ・コール』を思い出してしまうほどだ。

ニューヨーク・イズ・ナウ+1
New York Is Now

ラヴ・コール+3
Love Call

チェリー、渾身の4ビート

『コンプリート・コミュニオン』には、たったの2曲しか収録されていない。

1曲が、いくつかの曲の断片(あるいはモチーフ)によって構成されていて、それらが途切れなく演奏されることで組曲のようになっている。

たしかに一曲の演奏時間は長いが、決して退屈しない内容だ。

それは、変化してゆく曲のモチーフが移り変わるタイミングが適切であり、なおかつ、メンバー間で共有される曲のカラーが一致したことによって生みだされる確信に満ちたアンサンブルの力によるものだろう。

後年のチェリーのトランペットは、もう少し良い意味で肩の力が抜けたテイストに変貌していくが、ここでのチェリーの場合はコルネットに専念し、チェリーのわりには(?)かなり力を込めて、厚みのある音色で吹いている。

リーダー作であるという気負いももちろんあるのだろうが、エド・ブラックウェルとヘンリ・グライムスという重量感のあるリズムセクションが彼を鼓舞していることも確かだろう。

チェリーにしろガトーにしろ「脱4ビート」的なイメージの強いジャズマンだが、ここではガッツリと力強い4ビート的なテイストを振りまいて力演をしている。

記:2015/10/28

album data

Complete Communion (Blue Note)
- Don Cherry

1.Complete Communion:Complete Communion/And Now/Golden Heart/Remembrance
2.Elephantasy:Elephantasy/Our Feelings/Bishmallah/Wind, Sand And Stars

Don Cherry (cor)
Gato Barbieri (ts)
Henry Grimes (b)
Ed Blackwell (ds)

1965/12/24

 - ジャズ