ア・デイト・ウィズ・ジミー・スミス vol.1/ジミー・スミス

      2022/08/27

ブルーノートの社長、アルフレッド・ライオンのジミー・スミスへの偏愛っぷりったらない。

一度気にいったら、売れる・売れないは関係なし、採算度外視して、じゃんじゃんアルバムを作っちゃおうというブルーノート、というよりライオンの姿勢が、ジミー・スミスのブルーノートにおけるディスコグラフィを見ればよく分かる。

オルガン・トリオを録った。

地方のクラブのライブも録った。

では、今度は?

そうだ、今度はブルーノートの看板ミュージシャンを集めて、様々なフォーマットでジミーのオルガンと共演させてみよう。

白羽の矢が立ったのがドラムスにアート・ブレイキー、アルトサックスがルー・ドナルドソン、テナーサックスにハンク・モブレイ、トランペットがドナルド・バードだ。

いずれもこの3人は、ブルーノートから何枚ものリーダーアルバムを出している看板ジャズマンたちだ。

彼らを配し、さらに馴染みのルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオではなく、別の場所で録音したらどうなるだろう?

ライオンの好奇心は尽きない。

一般に「マラソン・セッション」といえば、1956年にマイルス・デイヴィスがプレスティッジに4枚分のアルバムの量の曲を2日で収録したレコーディングが有名だが、ライオンが1957年の2月に行ったジミー・スミスのレコーディングは、「マラソン・セッション」のブルーノート版と言えるだろう。

つまり、1957年の2月11日から13日までの3日間にアルバムにして5枚分のレコーディングを行っているのだ。

1547番の『ア・デイト・ウィズ・ジミー・スミス vol.1』を筆頭に、
1548番の『ア・デイト・ウィズ・ジミー・スミス vol.2』、
1551番の『ジミー・スミス・アット・ジ・オーガン vol.1』、
1552番の『ジミー・スミス・アット・ジ・オーガン vol.2』、
そして、1556番の『ザ・サウンド・オブ・ジミー・スミス』の5枚だ。

        
もちろん、これだけのラインナップを発売しても「売れる」だろうという経営者としての判断も働いていたのだろうが、それ以上に、一度惚れこんだら骨の髄まで味わいつくしてやろうという貪欲なライオンの「ジャズ熱」、いや、「ジミー熱」がそうさせたのではないだろうか。

あたかも大好きなアイドルに、次から次へと着せたい服を着せ、させてみたいポーズをとらせるがとごく、ライオンは、ジミー・スミスというオルガン奏者に、様々な編成でブルーノートゆかりのジャズマンたちをあてがい、演奏させているのだ。

それじゃぁオタク的行為と変わらないではないかと思われるかもしれないが、そうです、そのとおり(笑)。

アルフレッド・ライオンは経営者である以前に、熱狂的なジャズマニア、いや、ジャズオタクだったのです。

このようなジャズへの偏愛、そして思い付きを大胆に実行に移すだけの行動力なくしてブルーノートの数々の名作は生まれなかったといっても過言ではない。

ブルーノートという、ジャズを語る上では欠かせない代表的なレーベルは、一人のジャズオタクのドイツ人の偏愛と並はずれた企画力と行動力によって、次々と名作が生み出され、独自のブランド価値を築き上げられていったのだ。

さて、マラソンセッションの結果だが、これはもう発表されている5枚をぶっ通しで聴いてもらうのが一番だろう。

そして、結果はお聴きのとおり。

ライオンの目論み通り。いや、もしかしたら目論み以上の成果が5枚のアルバムに封じ込められることになった。

この「vol.1」においては、冒頭の《フォーリン・ラヴ・ウィズ・ラヴ》の異常な熱気から早々とライオンが設定した「空気」に呑みこまれる。

アート・ブレイキー効果!

アルフレッド・ライオンの忠実な僕たちは、忠実に親分の意図を組み、「世界」を創ることに貢献する。

記:2010/01/10

album data

A DATE WITH JIMMY SMITH VOL.1 (Blue Note)
- Jimmy Smith

1.Falling Love With Love
2.How High The Moon
3.Funk's Oats

Jimmy Smith (org)
Donald Byrd (tp)
Lou Donaldson (as)
Hank Mobley (ts)
Eddie McFadden (g)
Art Blakey (ds) #1,3
Donald Bailey (ds) #2

1957/02/11 #1,3
1957/02/13 #2

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