美味い?マズい?えびそば・新宿「一幻」、行列が出来るラーメン店の味

   

空いている店内で食事しました

常に行列が出来るラーメン屋、新宿のえびそば「一幻」。

本店は北海道にあるようだが、西新宿にも1年半ほど前からオープンしており、4~5回ほど足を運んだことがある。

よくテレビで取り上げられる店らしく、かなり長い行列が出来る日もあるそうだ。
中には2時間以上待ったという人もいるほどで、典型的な「行列が出来るラーメン屋」のようだ。

「のようだ」と書いたのは、私が行ったときは、店内は5~6割ほどの客しかいない時ばかりだったので、「混む店」という印象を持っていないからだ。

閉店前や、昼とも夕方ともつかない4時半といった微妙な時間帯に訪問したのが功を奏したのかもしれない。

ただ、カウンターの向こうには芸能人やスポーツ選手ら有名人の色紙で埋め尽くされているので、「有名人が訪問⇒テレビで報道⇒番組を見た人が殺到」という構図は容易に想像することが出来る。

数回訪れた中、いちおうメインのスープの味噌、醤油、塩の3種類のスープはすべて味わっている。細麺と極太麺の両方も試してみた。

では、この「一幻」のラーメン、いや「えびそば」は、行列が出来るほど美味いのか、不味いのか?

エビの味

正直言って、「うまい」or「まずい」の二択で括ることが難しい。

しいて言えば、一言、「エビの味」というしかない。

では「エビの味」が美味いのかといえば、美味い。

しかし、その美味い「エビの味」がムンムンしている「一幻」のえびそばを、ラーメンとしては美味いかどうかとなると、個人的には「微妙」と答えるしかない。

たしかに『包丁人味平』を例に持ち出すまでもなく、「エビ味」は旨い。

アレルギーだったり、あの独特の風味が苦手という人以外は、おそらく誰もが、海老の風味や味はマズいとは思わないだろう。

かっぱえびせんがロングセラーなのも頷ける。

そうそう、かっぱえびせんで思い出したけど、えびそばの「塩味」は、かっぱえびせんをお湯でドロドロに溶かした味に近いかもしれない。

中毒性

私は今だに、かっぱえびせんを酒の肴として買って食べることがある。
かっぱえびせんは、一口、二口食べだすと、それこそ昔のCMのキャッチコピーではないが「やめられない、とまらない」状態になってしまう。

つまり、一口食べると、また一口、さらに追い討ちをかけるように「また一口」という連鎖が止まらなくなるのは、中毒性が高い香りだからではないかと思うのだ。

中毒性が高いものは必ずしも「うまい」とは限らないように、濃厚に「エビエビ」しまくった「えびそば」が一品料理として美味いのかというと、私としては判断を保留せざるを得ない。

なぜかというと、飽きてくるからだ。

最初の一口二口は、「おっエビ!」「わお、新鮮!」と口と鼻の奥に鮮烈な海老の風味が広がる。

しかし、だんだんと飽きてくる。
インパクトが強いぶん、そのインパクトが冷めて冷静になる時間がやってくるのも思いもよらず早いものなのだ。

なぜかというと、そのインパクトは「香り」と「甘くてしょっぱい味」の強さで、このコントラストが強くなれば強くなるほど、スナック菓子的なものになってくるからだ。
トンコツがベースになっている特有の重たさ、クドさも、それに拍車をかけているのかもしれない。

「一幻」に限らず、六本木や吉祥寺にあるラーメン店「一蘭」のオーダー表に「こい味、超こってり、にんにく1辺分、秘伝のたれ2倍以上」などと極端な味付けを書いてリクエストすればするほど、味が「うまい棒」に近づくのと同じ原理だ。

もちろん、私はスナック菓子が好きで、「好きなブランドは?」と聞かれれば、冗談で「カルビー」と答えるほどなのだが、そんなスナック好きな私でも、「ラーメン味のスナック」は食べるかもしれないけれど、「スナック味のラーメン」は自ら進んで食べようとはあまり思わない。

スナック味のラーメン、つまりカップラーメン的な感じというか。

もちろんカップラーメンは好きだけれども、インスタントコーヒーは珈琲とな似て非なる別な飲み物だと私は感じているように、ラーメン屋で食べるラーメンとカップ麺(インスタントラーメン)は別種の食べ物だと思っている。

話のタネに食べてみる価値はあるかもしれないが……

よって、「好み」か「好みでないか」と問われれば、「一幻」の麺は好みではない。個人的には。

二者択一で、その中間は無しで「美味い」か「不味いか」のどちらかの言葉しか使ってはいけないのであれば、こう答えるしかない。

スープは「美味い」が、ラーメンとしては「不味い」。

そういえば、カウンター奥のサイン色紙に松岡修造のサインがあったが、色紙に書かれた一言が秀逸だ。

「僕はえびになった」

美味い、マズイといった味に関しては言及しておらず、しかし「エビな」店の特徴を端的に表現している。

というわけで、「一幻」のえびそがは、ものすごくマズいラーメンではないし、話の種に1、2回は食べてみる価値のあるラーメンかもしれないけれど、2時間も並んだという人がいるという話を聞くと「2時間も並ぶほどでもないような気がするんだけどな」とは思う。

もちろん、人間は並んだ分だけ元を取りたいという気持ちが無意識に働く生き物だから(自分の選択・行為が無益だったと思いたくないから)、並んだ時間が長ければ長くなるほど「おいしい」と思うのは当然だし、それをも含めた「おいしさ」というものも、「一幻」のえびそば人気の秘密なのかもしれない。
だから、並ばずにすいすいと食べることが出来た私は、えびそばの有り難味を感じられなかったのかもしれないね。

以上が、私の「一幻」の感想です。
ファンの方、ごめんなさい。

記:2018/01/28

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