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ジャズと映画とプラモの日々:高野雲

「蘭丸」のラーメン/都営新宿線・西大島駅下車徒歩5分のラーメン屋さん

      2018/01/14

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ranmaru

ラーメンは好きな食べ物の一つだが、私は滅多にラーメンの旨い・不味いは口にしない。 というのも、ここ10年近く、私の心の中では、3つの抜群に旨いラーメンが揺るぎなく存在しているからだ。

1に吉祥寺(千駄ヶ谷)のホープ軒(旧・ホームラン軒)の「中華・辛目・麺固め・味付け玉子入り」、 2に原宿のぼんしゃんラーメンの「こぼんしゃん全部入り」、 3に札幌の「純連(じゅんれん)」か「純連(すみれ)」の味噌ラーメン

いずれもスープの濃いギトギト系だが、それはたまたまで、喜多方ラーメンのようなあっさり系のラーメンも好きだ。

色々なラーメン屋を食べ歩き、時にはおいしいラーメン屋もいくつか見つけたが、上記3つのラーメン屋を上回るラーメン屋には出会うことがなかった。

ところが、最近、あっさりと上記3つのランキングを越えて、一気に私の中でベストワンになってしまったラーメン屋がある。

都営新宿線の「西大島」駅下車、徒歩5分ぐらいのところにある「蘭丸」だ。

ここのラーメンは、信じられないぐらいに素晴らしい。

系統で言うと、最近流行りの「魚ダシ系」のスープだ。

魚ダシ系のスープといえば、青山の「武蔵」、それに新宿の「古武士」が私の好きなラーメン屋だ(なんかみんな侍系の名前だな……)。

しかし、「蘭丸」のラーメンを一度食べてしまうと、上記2店のラーメン屋のスープなど、「蘭丸」のスープと比べると、天と地ほどの歴然とした差を感じてしまう。

言い方悪いが、ラーメン屋のスープと、カップラーメンのスープほどの差だ。

たしかに、「魚ダシ」系のスープは、素材がデリケートな魚ゆえ、保存も調理も難しいようだ。

とくに「武蔵」にいたっては、サンマのダシがメインなのだから。

だから、日によって味が変わらないように、並々ならぬ注意と熱意を調理に注ぐ必要があるらしい。

青山の武蔵には3日と空けずに幾度か通ったことがあるが、それでも日によって味の差は感じられなかったし、いつ行ってもシャキッと気合いの入った店員がキビキビとカウンターの中で動いている姿は、見ていて気持ちが良い。

食べる前から、これから出てくるラーメンへの期待が高まり、そして、実際食べると、おいしい。

しかし、唯一気になるのは「後味」だ。

スープを口に運んだ瞬間は、サッパリ・スッキリの口当たりで「おっ!」と思うが、実際はかなり充実した濃いスープゆえ、食べれば食べるほど、だんだんと腹の中がコッテリとした満腹感に襲われる。

そして、食後の満腹感はかなりヘヴィーだ。豚骨系とはまた違った「濃さ」が後を引く。

おまけに、魚特有の「苦み」というか「ニガリ」のようなものが、後になって口の奥でニガニガと甦ってくるのだ。

それが唯一、「武蔵」や「古武士」に限らず、魚ダシ系のラーメンの食後感で気になるところだった。

しかし、気になるといっても、この「後味」こそが魚系ラーメンの特徴だと思っていたので、別段意識するほどのことでもなかった。そう、「蘭丸」のラーメンを食べるまでは。

「蘭丸」のラーメンのスープは独特だ。

同じ「魚系」ラーメンのスープだとは思えないほど、「臭み」と「刺々しさ」が無く、もちろん、たっぷりと魚の風味がするものの、スープを呑み込んだ後に、口の中にじんわりと広がる優しい「甘さ」が、なんともいえないほど気持ちよいのだ。

大袈裟だが、これは一つの奇跡と言ってもよいんじゃないか。

店に貼ってある、雑誌で紹介されたページのコピーを見ると、羅臼の根昆布、イワシ、スルメを鶏と豚とともに煮込み、一晩寝かせて味を調えたスープを使用しているという。

そして、この記事にも「奇跡」という言葉が使われていたが、やたらめったら「奇跡」という言葉を使いたくない私でさえも、ついつい使ってしまうほど、それほど、各素材の持ち味が最大限に引き出され、かつ完璧に調和しているのだ。

もちろん、麺もうまい。

あっという間に食べ終わってしまう。

スープももちろん最後まで飲んでしまう。飲まずにはいられないのだ。

最後までスープは飲まないと言っている人でさえ、あまりの美味さに飲み干してしまったほどなのだから。

そして、爽やかな食後感。

不思議なことに、身体の底からエネルギーが漲ってくるような感じではなく、身体の中から綺麗に洗われた感じがするのだ。

もちろん満腹なのだが、店を出て歩く時の自分の体重が少し軽くなったんじゃないかと思うぐらい、全身が軽やかになった感じがする。これも「奇跡のスープ」の効果なのだろうか?

たしかに、先述した「武蔵」も「古武士」のラーメンも私は好きだ。

しかし、これらの店の旨さって、さすが「侍っぽい」ネーミングの店(?)なだけあって、どこか挑戦的で挑みかかるような旨さなのだ。

もちろん、だからこそ、オイシイのだけど。

しかし、「蘭丸」のラーメンは、その境地を軽々と越えてしまっている。

もはや、蘭丸のラーメンには挑戦も闘いもなく、徹頭徹尾、絶対平和の境地なのだ。

闘いの末に到達した悟りの境地とでも言うべきか、蘭丸のラーメンの旨さは、最初にレンゲでスープをすくって一口飲んだ瞬間から、最後のスープ一滴を飲み干す瞬間まで、絶対的に平穏で幸福な状態が約束される。

大袈裟な言い方だが、丼の中の小宇宙が、完璧に一つの世界として調和し、絶対的に平和で安らぎの状態のバランスが取れているような感じ。

一杯のラーメンでそこまで感じたこともないし、一軒のラーメン屋の紹介で、こんなに文字数を費やしている自分もいまだに信じられない状態だが、本当にそうなのだ。

口の中でトロリととろけるチャーシューもうまいし、ランチ・セットで付いてくる餃子も、なにげにおいしい。鉄鍋餃子を彷彿とさせるちょっと小さめで甘めの味だ。

ラーメンのメニューは二種類。

醤油と塩。

味噌は無い。

醤油の円やかな甘さと円熟した奥深いスープの味わいも格別だが、個人的には塩のほうが好きだ。

こんなにあっさりしていていいの?と思うぐらいあっさりしたスープ。しかし、とても深い味わいのスープ。

食欲の無い病人でも、このスープなら喜んで飲むんじゃないかと思うぐらいスッキリとした味わいだが、味の奥行きはとても深い。

トッピングされている岩海苔に桜エビなどは、およそラーメンとは縁遠い食材と思われがちだが、このスープとは絶妙のマッチングを見せている。

黄身が半熟の味付け玉子も良いアクセントになっている。

とにかく、私の中のラーメン・ランキングをいとも簡単に崩してくれた「蘭丸」のラーメン。ラーメンファンは是非、一度食べてみるべきだし、これを食べずして21世紀のラーメンは語れない。なんて言葉では締めくくりたくはない。

ぜひ、食べないでください(笑)。

あんまり人が押し掛けちゃうと、店の外に並ばなきゃならないし、私の秘やかな愉しみが奪われてしまうので……。

ちなみに、店の名前が何故「蘭丸」なのかというと、店主は森蘭丸の末裔だからだそうだ。

信長の小姓の蘭丸に子供っていたっけ?

いや、それ以前に蘭丸って結婚していたっけ?

まぁ、そんなことはどうでもいいとして。

とにかく「蘭丸」のラーメンはうまいっ!

以上。

▼支那そば屋 蘭丸
所在地: 東京都江東区大島1-38-8
都営新宿線西大島より徒歩5~6分

記:2002/08/16

追記

夏にこの文章をアップしてからも、何度も「蘭丸」にラーメンを食べに行っている。

しかし、残念なことに、ここのところスープの味に変化が生じている。

日によって、匂いや味のコンディションが違うのだ。

いや、もっとハッキリと言ってしまうと、確実にスープの味が落ちたのではないかと感じている。

デリケートな食材のデリケートな配合ゆえ、日によって味が変わるのだろうか、そこらへんのところは残念ながらよくわからないのだが。

最初は気のせいかとも思った。

しかし、その後も何度か日時を変えて訪問し、食べてみたが、やはり行くたびに、少しずつ味が濃くなり、食後の胃もたれするような、重たい満腹感のような感触が増してきているような気がする。

しょうゆ味は、スープの円やかさが減り、口の中のニガニガ感が増えた。

塩味は、塩気と甘みの絶妙なバランスが失せ、以前は奥行きのある味と書いたが、最近の塩味には奥行きが失せ、平板な甘いだけのスープになってしまっている。

渋谷の「曼○(まんまる)ラーメン」(現在閉店)のように、開店当初はスープの味が抜群だったのに、半年経つと、アクの臭みが鼻を突くスープに変化してしまったケースもあるように、ラーメン屋のスープの味が変わってしまうことはよくあることだと思う。

しかし、「蘭丸」の味の変化は、最初に私が受けたインパクトが強烈だっただけに、とても残念だ。

是非とも、元の味に復活して欲しいものだと思うが、当分の間は行かないだろうな。

記:2002/12/24

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