雲流ベース教室2

   

cloudonpu

昨日のベース教室の話の続きです。

>>雲流ベース教室

基本的に、人は視線を感じると、恥をかかないように頑張るものです。

だから、基礎練習は、分かっている人の眼差しにさらされながらエクササイズをすると、上達が早いという話を前回は書きました。

基本的にベースのレッスンにおける私の役割は、“傍観者”としてのパーセンテージが高いことは確かです。

しかし、それだけではなく、最近は、俺がやってることは“ベース教室”じゃなくて“ベース・コーチング”なんだよなぁと思うようになってきました。

人にモノを教えるだなんておこがましいよなぁ。

私は、生徒さんにベースの弾き方に対する“気づき”の機会を提供する触媒のようなものなんだなぁと。

生徒さんの弾きたいベース、なりたい将来的なベーシストのイメージは、それぞれ違います。

弾きたいジャンルも違うし、好みの音楽の種類も違います。

好みの音色も違うし、奏法も違う(一人はピック弾き、一人はツーフィンガー、そして私自身はワンフィンガーがメインです)。

そんな中で、私が出来ることは、彼らがより一層上達するためのイメージや意識を気付かせることなんだと思います。

ある時は、実際に私が弾いてみせ、ある時は、CDをかけて音楽を鑑賞する。

指の形が気になったらら、生徒さんが弾いている映像を撮影して、「あなたはハイポジションになると、このような手の形になっちゃっているけど、どう思う? 音的には問題はまったくないけれど、単純に見た目だけの問題なんでけれど、どう思う?」

と実際に撮影した映像を見せながら、注意を喚起します。

音の粒が揃っていないときも、弾いている当人は、粒が揃っているか揃っていないかはなかなか自覚出来ないものです。

だからICレコーダーに録音した後にプレイバックをして、実際に自分の耳で確かめてもらう。

私のほうから「おかしいぞ、直せ!」と言うよりも、本人に気付いてもらったほうが話が早いし、生徒さん自身も「じゃあ、どのようにしたら直るだろう」と自分の頭で模索しはじめます。

それでもダメな場合は、一緒に考えます。

そのときに、初めて私は「こうしたらイイんじゃない?」とアドバイスします。

私のアドバイスが説明不足の場合は、生徒さんと一緒に考えますし、その過程で、じつは私のほうが生徒さんから教えられることも多いのです。

「こうしたら、うまくいきますね」とか、「昔、ベースマガジンに誰々がこんなことを言っていたんだけど、その方法を当てはめてみるとうまくいくかもしれませんね」といったように。

私自身が「へぇぇ、そうなんだ」なことも少なくありません。

このような試行錯誤やディスカッションを通じて、一つ一つ課題を消化してゆくことが、じつは一番上達の近道だし、その過程で考え、弾いて、の繰り返しがいつしか血肉になるのです。

このようにして、皆で少しずつ上達してゆこうというベース教室でありたいな、と思っています。

なんだ、“傍観者”と“対話者”でしかないヤツがベース教室を名乗ってるのか、と思われるかたもいらっしゃる方も中にはいるかもしれませんが、そうです、その通りです(笑)。

それでいいと思っています。

楽器に限らず、すべてにおいて、人間の成長において不可欠な要素はたったの2つしかありません。

気付いて、
実行(行動)する。

細かいことは色々あるでしょうが、骨子はこの2つです。

「やる気」は行動のためのエネルギー源。

気付きは、間違った方向に行動を費やさないないために必要なゴールが見える地図です。

生徒さんに自分が抱えた課題をクリアするための気付きの場を提供し、実際に弾いて(実行して)もらう。

この2つが満たされれば、“教室”としての体を立派になすなんじゃないかと思います。

実際、私のようなボンクラコーチングの元でも、生徒さんの上達っぷりは凄まじいものがありますから。

生徒さんはどう思っているかは分かりませんけどね……(笑)。

でも、決して手は抜いてないですからね。一応、いろいろと考えてはいるんでーす。

子供の教育は、ま、そんな悠長なことは言ってられないかもしれませんが、基本的には同じだと思っています。

よく「やる気出せ」という親や教師がいますが、なにもないところからやる気はおきません。

子供自身の「気付き(動機といっても良いかもしれません)」があってこそ「やる気」が生まれ、行動を起こし、行動の結果が成果に結びつくのです。

親の本当の役割は、行動を強制することではなく、「気付き」の方向にリードしてあげることだと思います。

ま、実際には難しい理想論かもしれないですけれどね……。

でも、超理想的なことを言えば、

松下村塾のような教室や学校が日本にたくさん生まれれば良いなと思っています。

生徒一人一人が抱えている課題や問題は、すべて違います。

一つ一つの課題に対し、教師やインストラクターが的確なヒントを投げかけ、生徒自身が自力で問題をクリアしてゆく。

こういう関係って素敵だよな、といつも思っている私でありました。

記:2005/11/02(from「ベース馬鹿見参!」)

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