カフェモンマルトル

text:高野雲

*

愚痴リーマンと働く社長

      2016/03/22

nomioyaji

飲み屋でクダを巻くオヤジ。

あるいは、酒の勢いを借りて上司や部下の悪口をまくしたてるダメ社員。

これらは昔のマンガやドラマではよく目にした光景だが、では、そのようなシーンに遭遇したことがあるかというと、私の場合、じつは無い。

たまたまなのかもしれないし、最近のサラリーマンはもう少しスマートになってきているのかもしれない。

あるいは、私の場合、学生グループや会社帰りのオッサンが一杯ひっかけるような安居酒屋を忌み嫌い、静かに落ち着いて会話の出来る飲み屋に行くことのほうが多いからかもしれない。

静かな環境では、騒ごうにも騒げないし、安っぽい雰囲気じゃない場所では、会社の悪口は話題としてもあまりにセコ過ぎるから、自然と話の内容もセコイ悪口じゃなくなるのかもしれない。

しかし、夜の飲み屋で愚痴や悪口を聞いたことはなくても、昼はさんざん聞いている。

喫茶店、というよりは、コーヒーショップかな。

タリーズやスターバックスのようなチェーン展開しているようなコーヒーショップ。

あと、最近は行かないので、どうだか知らないけど、マクドナルドのようなファーストフードの店。

だいたい、午後から夕方までの時間帯に多い。

仕事をサボっていると思しき営業マンや、得意先からの帰りに寄ってみた風情のサラリーマンなどが、昼間から、会社や取り引き先や、上司や同僚の悪口と愚痴の百花繚乱。

聞き耳を立てているつもりはないのだが、耳に入ってきてしまうのだ。

ほんと、ウンザリだ。

しかも、年配の人よりも、20代、30代前半と若い層が多いことも特徴的で、おまえら、そんなことしている暇があるなら働けよと怒りさえこみあげてくる。

話している内容はクダらなくて、瑣末なことばかりなのだけれども、ようは、「アイツはワカッテない、自分は分かっている」系の愚痴話。

相手を非難するけど、さりげなく自分を持ち上げることも忘れない(苦笑)。

ウンザリするよ、まったく。

たいてい、一人がまくしたて、もう一人が聞き役に回っていることが多い。

オレに言わせりゃ、そんな奴らは全員クズだね。

少なくとも一流ではない、二流以下。

愚痴や悪口を言っても聞いてくれる仲間がいるだけ幸せだよ。

群れていられるんだからさ。

私は、仕事の関係で、ここ1~2年の間、様々な企業の社長に会ってきた。

どちらかというと、若手の方のほうが多い。

中にはYEOに加入している方もいた。

YEO(Young Entreprenerurs' Organization)とは、平たくいっちゃえば、若い社長の会のようなものだが、

1、創業者(一代目)であること
2、年商が最低1億あること
3、40歳以下であること

と入会条件の非常に厳しい会なのだ。

この会に加入しているような方々とお話していると、彼らは、ビジネスでサクセスをつかんでいるかわりに、非常に孤独だ。

べつにこれは、YEOの社長だけに限らず、経営者、つまり人の上に立つ人間は一様に孤独だし、孤独に耐えられる強い心を持っていないと勤まらないともいえる。

社員に不満があっても、愚痴をこぼす相手は誰もいないし、社の重要な決定事項も最終的には自分が決定をくださなければならない。

おまけに、もしかしたら、自社のクズ社員が、いまごろ喫茶店で自分の悪口を言っているかもしれない。

さらに、私がお会いした社長たちは、一様に働き者だ。

なにしろ、朝が早い。

5時、6時起きなんてアタリマエ。

7時前にはすでに自社のデスクで仕事を開始している人もいた。

仕事だって終電ギリギリまで現場で頑張っている社長のいかに多いことか。

ましてや、喫茶店でクダをまく暇なんてありはしない。

というか、そもそもそんなことをしようとすら思わないだろう。

そんな時間があれば、彼らは黙々と働く。

喫茶店でクダを巻くようなバカ連中は、社長が人知れず頑張っている間に、朝は、惰眠をむさぼり、昼は、仕事をサボって愚痴と理想論ばかりを語り、同じ穴のムジナ同士、傷の舐めあいをし、夜は、合コン、飲み会、買い物などとオフを楽しみ、野球やサッカーといった他人のガンバリに一喜一憂している。

で、なにか面白くないことがあると、ちゃんと愚痴や不満を言い合える同輩がいる幸せよ。

「給料安い、金がねぇ」などとツマラナイ愚痴を言っているだけ、まだ幸せだ。

そんな輩が愚痴をこぼしている間、トップは、経営に悩み、資金繰りに悩み、黙々と仕事をしている。

お金はあるだろうが、愚痴をこぼす連中が味わうことのない、別な心の戦いを常にしているのだ。

コーヒーショップで愚痴をまくようなツマラナイ連中よ、そんなヌルい仕事っぷりで上を批難し、自分を可愛がるなんて、ヌルすぎるぜ。

もっと働けよ、実績作れよ。

愚痴をいうのはそれからだ。

というか、見苦しいので、昼間の喫茶店で、そういうのやめてください。

コーヒーがまずくなるんで。

気が散って、原稿書けないんで。

だから、最近の私は、大音量でジャズが流れ、私語が禁止のジャズ喫茶で原稿を書くことが多くなってきているのだ。

私は社長ではないし、
これまでお会いしてきた方々ほど、立派でも優秀でもない。

しかし、なんとなく、彼らの気持ちは分かる、ような気がする。

原稿と向かい合う時間は、常に孤独だ。

誰も助けてくれないし、愚痴を言ったところで、なにも解決しない。

ボヤくと、かえって自分が惨めになる。

大げさかもしれないが、原稿を書く作業って、結構精神的にヘビーな作業なことも多いのだ。しかも、一人で。

だから、孤独に自分と戦うトップには、シンパシーを感じてしまうのだ。

記:2005/08/19 

 - 雑想 雑記 , ,