カフェモンマルトル

text:高野雲

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ホームページ運営とは、お店をやっているようなもんだね。

      2016/02/16

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cafe

学生時代、ジャズ喫茶でアルバイトをしていたことがある。

いつも閉店前後の時間帯にマスターが店にやって来る。

閉店後にマスターは店の壁にいくつも飾ってある額縁の中身をマメに変えていた。

この額縁の中身は丁度CDのプラスティック・ケースから取り出したライナー兼ジャケットが入る大きさのもので、マスターはいつも店に届いた新譜のジャケットと入れ替えていた。

額縁は店の壁面のいたるところにあるのだが、何時間も店内にいるアルバイトの私にしても、こんな目立たない額縁と小さなジャケットを見る客なんて誰もいないだろうな、と最初は思っていた。

しかし、マスターはかなりの頻度で額縁の中身を変えているので、店の常連客の何人かは、もしかしたらこの額縁の中身の変化を楽しみにしているのかなぁと思うようになった。

また、この店のマスターは東急ハンズなどの雑貨屋の袋を下げて閉店間際に店にやってきて、客がすべて捌けると、店の間接照明の角度や照明が照らす小物、オブジェの角度や配置をマメに変えたりもしていた。

ボンクラな私は、マスターがオブジェをマメにいじっているのを目の当たりにするまでは、店の中のちょっとした小物の変化には全く気がつかなかった。

また、フラリと店にやってきた同業者とマスターのカウンター越しの会話を偶然耳にする機会があり、話の内容はジャズ喫茶以外にも様々な飲食店の事業を拡大して成功を収めている人の話だったと思う。

その人は仕事も趣味も「喫茶店巡り」。

その際に必ずスーツの中にメジャーを持ち歩くことを欠かさないのだという。

何故だと思う?

同業者でもあり、競合店でもある他の喫茶店の椅子の高さ、テーブルの高さや面積を測るためだ。

評判の店を訪ねて、従業員の接客態度やサービス、店の内装、メニューの種類や味を細かく調べながら、おそらく椅子やテーブルの寸法を測って自分の店のリニューアルの際の参考にするのだろう。いわゆる市場調査だ。

たかだか店の内装の寸法、それも1センチや2センチの差ぐらいどうってことないじゃん、と思いながら聞き流していた私。

しかし、その話題に上った人が経営する店はすべて繁盛している。

椅子の高さひとつで客が100人増えるとは思わないが、たかだか椅子の高さまでもの情報を細大漏らさず吸収してしまおうという意気込みと、細やかな心配りが成功の秘訣なのだろうと今では思うようになった。

些細なミクロな改良を日常的に行う。

ボクシングで言えばジャブの繰り返し。

一発逆転ストレートとしては、テレビ・ラジオ・情報誌などのメディアでの紹介という手もあるが、一時的に客が増えて盛り上がることはあるにせよ、やはり大事なのは浮動票とは違う存在、そう、常連客。そして口コミだ。

初めて訪れた客には、また行きたくなるような店づくり。

常連さんには安心して何度も足を運べるような店づくり。

願わくば常連の口コミ紹介で来店する新規客の開拓。

飲食店にお勤めの方や、お店の経営者がもし読んでいたら、「何だよ、そんなこと当たり前じゃねーかよ」とお思いかもしれませんが、どうかご容赦を。何も知らない学生だった私にはこれらの小さなことでも、別世界の住人の営みのように見えてとても興味深かったのデス。

ジャズ喫茶の話を引き合いにして、何を言いたいのかというと、ホームページの運営は、お店の運営と似ているなあと常日頃思っているということ

自分のホームページに訪れてくれる人は、お客さんだ。

一見の方もいらっしゃるし、常連の方もいらっしゃる。

義理で定期的に顔見せをしてくれる人もいる。

なんだ、店と全く変わらないではないですか。

趣味が合わなかったり、ページそのものがツマラナかったりすると二度と訪れてくれないところも、お店に似ている。

逆に些細なことがたった1つでもいい、お客さんの琴線に触れる何かを提供できれば、リピーターになってくれる可能性も高い。

イベントや面白い企画が、訪れるたびに何か催されていれば、来てくれた人からしてみれば、「お、また何かをやっているな」とも思うだろうし、いつ訪れてもあまり代わり映えがしないと「ここ、やる気があるんかいな?」と思われてしまうかもしれない。

逆にあまり手を加えすぎると、「経営者(管理人)変わったの?」と言われかねないし、特にジャズ喫茶のように客のほとんどが常連で占められているような店は、ヘタに手を加えすぎると、「移りっ気の多いやっちゃな」「昔の内装(レイアウト)やメニュー(コンテンツ)の方が良かったぜ」ということにもなりかねない。

実際、内装をいじり過ぎて、客に「この店も堕落したな」と捨てセリフを吐かれ、事実しばらくの間売り上げが低迷したジャズ喫茶もあるそうだ。

ここらへんのサジ加減は非常に難しい。

「今の状態がベストではない」ということを大前提におき、訪問者が抱くテイストを残しつつも、新しいこと、面白いことを常に模索する。これがリニューアルの際に大事な心がけなのではないのだろうか。

幸い、個人ページの大半は、飲食店運営者とは違って、生活に根ざしたリアルな問題ではなく、あくまで趣味の次元でのお話なので、失敗しても物理的なリスクは全く無い上に、失敗したらしたで何度もトライをすることが可能だ。

工夫と努力次第では、訪問者を増やすことが出来るし、たとえ訪問者が少なかったところで、生活に困るということはない。

生業ではないので、関わり方は全くの個人裁量。

少数とはいえ、自分の店(ページ)を訪れてくださった方からの意見や激励の言葉はかなり嬉しいものだし、逆に誹謗中傷があっても「しょせん趣味でやっていることだ、イヤなら来るな」と開き直ることだってできる。

趣味だからこそ真剣になれるし、思い切った冒険をすることも出来る。アクセスが増えればなお一層面白い。インスタントではあるが、繁盛している店の気持ちの疑似体験も出来る。

自分のセンスや考えがどの程度人に受け入れられるのかを知るバロメーターにもなる。

規模は小さいかもしれないが、意識次第ではマーケティングの訓練にもなる。

だから、面白い。

これを書いている時点では、自分のホームページを持ってまだ4ヶ月弱という若輩者の私だが、この4ヶ月は随分と色々なことを勉強させてもらった。

忙しいウイークデイは、帰宅したら一刻も早く床につきたい私を奮い立たせた上に疲れを忘れさせ、時には朝までのめり込むほどまでも、熱中させるホームページの作成&運営。 面白くて、しばらくはやめられそうにない。

同士の皆さん、お互い楽しみながら切磋琢磨しましょうぞ。

記:1999/07/18

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