カフェモンマルトル

text:高野雲

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コイバナシ。恋ではなくて、コイノボリの鯉の話

      2016/05/04

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今日は5月5日。
子供の日だ。

子供の日といえば、鯉幟(こいのぼり)を思い出す。

コイノボリのモデルは、当たり前だが、鯉(コイ)だ。
だから、コイについて書く。

コイはバカだ。
アホと言っても良い。
まぁニュアンスの違いはあるにせよ、間違ってもクレバーな魚じゃないことは間違いない。

なんでも喰う。

バカ、アホに比べて、意地汚い。えげつない。
喰うだけじゃなくて、喰いつづける。

放っておくと、いつまでも喰い続けるところが、なんとも意地汚さとエゲツ無さを倍増させているようではないか。

しかも、あの顔、あの表情で。

バクバクと常に動き続ける間抜けな大口と、どこを見ているかわからないあの目で。

ゆっくりとした動き。ただし頭上に喰い物が出現すると、脱兎の勢いで獲物に群がるあのエゲつなさ。

まるで、バーゲンセールのわごんにダッシュで群がる、オバサンを彷彿とさせる。

オバサンは強い。強いということは生命力があるということだ。

子供は弱々しく病弱な状態よりも、生命力があったほうが良い。
⇒だから、コイ。

コイのようにエゲつなく、いや、生命力強くなっておくれ。
だから、子供の日のコイノボリ。

ある人に聞いた話を書いてみよう。

取引先の釣り具のイベントに立ち会ったそうだ。
このイベント会場には大きな水槽があった。
水槽の中に入っている魚は、ライギョ、ブラックバス、そしてコイ。
おお、みんな獰猛そうで、大食漢そうだ。

この水槽にフナが餌として入れられた。
ライギョ、フナに食いつく。
ブラックバスも、フナを食う。
コイも、親戚筋にあたる魚だが、餌と認識したようで、やはりフナを食いはじめた。

12時間後。
さすがに、お腹いっぱいなのか、数時間前から、ライギョもバスも水槽の底のほうで休憩中だ。
休憩していないのは、コイ。
まだ、フナを喰っている。
バクバク、バクバクと。
きっと、目の前に餌がある限り、飽くなく喰い続けるのだろうな、とその人はコイのエゲつなさに呆れるとともに、コイの生命力というか、このタフさに半ば戦慄したという。

男はタフでなければ生きていけない。
だから、タフな大人になるようにと、子供の日にはコイノボリ。
ただし、チャンドラーじゃないけど、タフなだけじゃなく、やさしさも必要よ。
コイにやさしさを求めてもムダだが。

これもある人から聞いた話。
南の島。
アフリカマイマイって厄介なカタツムリがいる。
繁殖力が強い上に、タフで、デッカい。農作物を食い荒らす。その上、なんか気持ち悪い。
このアフリカマイマイを大量に捕まえて、冗談半分に金槌で殻を砕いたアフリカマイマイを池の鯉に放り投げた。
そしたら喰った。
アフリカマイマイを食った。
ばくばく喰った。
うまそうに喰った。

とにかく、目の前に放り投げられた物体はとりあえず食い物だと思ってしまう性格がなんともオメデたい。

そう、5月5日はオメデたい日だ。だから、コイなのか?
なわけないけど。

ドラマなどでよくあるシーン。
政治家や影の黒幕の邸宅。
和風の庭だ。池がある。
池に泳ぐは何匹ものニシキゴイ。
政治家、あるいはこの邸宅の主が、パンパンと手を叩く。
コイが寄ってくる。エサを撒いてもいないのに、手の音を聞きつけて寄ってくる。
エサをもらえると思って寄ってくる。
手を叩く音が、喰い物の音と勘違いしていること自体が滑稽だ。と同時に寂しく悲しい。

先日、ある庭園に行った。
橋の下を覗くとコイが大量に泳いでいる。
売店で“ふ”を買った。コイの餌だ。
“ふ”を千切って、池に投げ込む。おびただしい数のコイが水面に出現した。
ものすごい勢いで、餌を奪いあっている。
勢いがつきすぎて、押し合い、へし合いの果てに空中に放り出されるコイもいる。
面白いので、どんどん“ふ”を千切って色々な方向に投げまくる。
そのたびに、すごい勢いでコイの集団があっちへ移動し、こっちへ移動する。
このバイタリティや、すごい。
そういえば、ジャンプで思い出したが、鯉の滝登りって、きっと、滝の上に喰い物があるから、コイは滝を昇ったのだろう。だってコイだもの。餌のためなら、それぐらいのこと、やる。

やっぱり、バイタリティのある大人に育って欲しいから、子供の日はバイタリティのあるコイなのかな。

“ふ”が無くなってしまった。次の餌の投下を今か今かと待ち構えているコイ。
“ふ”を束ねていた細くて白い糸を小さな玉として丸めて、池に投げる。餌じゃないのに、餌と勘違いしたコイどもが奪い合いをはじめ、その中の一匹が糸くずを喰った。

おもしれぇ~、なんじゃこりゃ。
調子にのって、足元の小石を中空高く放り投げた。
この小石が水面に着水する前に、勢いよくジャンプしたコイの口の中に入っていった。
小石まで喰うのかよ。
これ以上調子に乗ってもキリが無いので、小石を投げるのはこれで終わりにして、その場を離れたが、呆れるほどの勘違いぶりというか食欲っぷりだ。とにかくなんでも口の中に入れてしまおうというコイの貪欲さ加減を目の当たりにして、笑ってしまった。

こんな元気なコイのようにスクスクと子供が育てば良いという願いがコイノボリにこめられているのでしょうなぁ。
とにかくコイの生命力は半端じゃない。

カラスの肉はまずいそうだ。
なぜなら、雑食だから。

天然の魚が養殖の魚よりも美味いとは限らないのは、このような理由による。
なるほど、コイの肉も不味い(と、私は思っている)。
糸や石まで喰う雑食っぷりだからからね。
ナマでだなんてとんでもない。それどころか、甘露煮にように煮ても、鮎の塩焼きのように焼いても、コイはなんだか食べる気のしない魚だ。

なるほど、子供には最終的には、健康とタフさと、煮ても焼いても喰えないしたたかさを身に着けて欲しいという親の願望をも含めてのコイノボリなのかもしれない。

記:2004/05/05

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