カフェモンマルトル

ジャズと映画と本の日々:高野雲

私の文章は、しなやかで、大胆で、キュートで、ソウルフルで、強くて、やさしいか?(笑)

      2016/06/04

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syakyou

えー、これから書くことは、決して評論家の書いた推薦文をチャカしちゃおうというような意図ではありません。

むしろ、ジャズのレビューをせっせと書いている私自身への戒めとしたいと思っているのであります。

先日、神保町のジャズ喫茶「BIG BOY」に行った際、マスターから、チケットサイズのフライヤーをもらいました。

「Phase1」というヴォーカルとピアノのデュオグループの新譜紹介のチラシです。

なんでも、このヴォーカルを強力に推薦しているジャズ評論のグループがあり、そのグループのメンバーが、店に置いてください、と持ってきたフライヤーなのだそうです。

ヴォーカルはEMIKOという女性で、彼女の歌声に関して、このチラシにはこのように書かれていました。

EMIKOの歌声は、しなやかでいて大胆、キュートでいてソウルフル、強さとやさしさが共存している。絶妙のバランス感覚がクセになり、独特の浮遊感に酔いしれてしまう。

これを読んだ私は、思わず、「うへぇ、やべぇ」と思ってしまいました。
で、次の瞬間、自分自身を反省してしまいました。

日常的にブログなどにジャズのアルバムのレビューを書いている自分自身にです。

この形容詞の羅列は、まるで自分が音や演奏を評する際、言葉に詰まったときによく使う「手法」だったからです。

しなやか、大胆、キュート、ソウルフル、やさしさ……

これらの言葉を見て歌声を思い浮かべることは、あたりまえですが、不可能です。

もっとも、それは当たり前のことで、100の言葉を費やすよりは1つの音を聴いたほうが早いのは、セルバンテスの「プディングの味を知りたければ、プディングを食べるしかない」ではありませんが、誰もが当たり前のように認識している事実。

これは、言葉の限界でもあり、ほとんどのレビューアーは言葉の羅列で音の描写をしようとは思っていないでしょう。

多くのレビューアーは様々なレトリックを駆使して、音を喚起させる文章ライティングに工夫を凝らしているはずです。

聴いたことのないリスナーに「ちょっくら聴いてみようか」と思わせるために。

だから、「しなやか、大胆、キュート、ソウルフル、やさしさ」といった言葉の羅列を読んでも、私の場合は聴いてみようという気持ちはサッパリ起きませんでした。

ということは、私の書いたこのような文章を読んだ人も、きっとさっぱりと聴いてみようという気はおきないってことでもあります。

うーん、もっと工夫しなくちゃ、と思った次第。

だって、ちょっとイジワルなアレンジをしてみると、上記の文章、主語をジャズシンガーではなく、ラーメンや餃子にしても、なんとなく意味が通じてしまうのですよ(笑)。

ちょっとやってみましょうか。

雲軒のギョウザは、しなやかでいて大胆、キュートでいてソウルフル、強さとやさしさが共存している。絶妙なバランスがクセになり、独特の味(※原文は浮遊感)に酔いしれてしまう。

ね? キュートでソウルフルなギョウザというのは、ちょっと無理があるけど、それでも、食べ物の推薦文としても、なんとなく通用してしまう構造のレビューなんですよ。

というより、むしろ、主語を食べ物にしたほうが、「しなやかでいて大胆なギョウザ」っていったいどんな味だろう?
→気になる
→食べにいこうかな?

となりませんか?(笑)

もちろん、カレーでもいいよ。

ソウルフルなカレーなんて、聞いただけで、よだれがたれてきそうです。

…って、俺だけ?(笑)

もちろん、おいしいのは食べ物だけではなく、音楽もおいしいものです。

だから、食べ物の評論文としても置き換え可能なジャズレビューを悪いといっているわけではありません。

むしろ、このような紹介文が好きという人も中にはいるでしょうし、実際、フライヤーの紹介文を読んで、CDを買った人もいることでしょう。

しかし、あくまで、私の場合ですが、今まで、このようなタイプのレビューを書き散らかしてきた自分としては、一瞬、「はっ」と我に返ってしまったのですね。

人に何かを推薦することは、とても難しい。
なにが難しいかというと、レトリックではなく、さじ加減が難しい。

人によっても、ピンとくるポイントは違うだろうし、読み手と書き手が持つ共通認識の量によっても書き方が変わってくる(だから“まったく知らない”ことを前提とした「初心者向け」を標榜しているジャズサイトが多いのかもしれない。じつは、このスタンスのほうが難しいのだけれど)。

思ったことをズラズラ書き綴ることはカンタンだけれども、読み手がいることを多少でも意識すると、とたんに言葉に詰まってしまう私。何も考えずに、パラパラと書きまくっているように思われている節もありますが、じつは、すんごく私って、一語一句、ゆーっくりと考えながら、ポツポツとパソコンのキーを打っているんですよ。

というのは、嘘です(笑)。

ホントは、なにも考えずに(正確には指が考えています)、パラパラとキーを叩いています(笑)。

思考より指のほうが速い(笑)。

ちなみに、もしかしたら、レビューの文章と、実際のCDの歌声が見事に一致している可能性もあるので、「BIG BOY」で見本盤をかけてもらおうと思ったのだけど……、残念! 次の予定が押していたので、聴かずに店を後にしました。

次に行ったときに、聞かせてもらおっと。

記:2007/05/31

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