カフェモンマルトル

text:高野雲

リズムで闘う ドラマーおじさん vs.オレ(ベース弾き)

      2015/05/22

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flame

先日、近所のバーの名物客とリズムバトルをしてきました。

とにかく、ものすごいアクションでドラムを叩く人です。

見ているだけでドラムセットを壊すんじゃないかと思うほどの、オーバーアクション。

実際、スティックもよく折るそうです。

じゃあ、リズムも滅茶苦茶なのかというと、全然そんなことはない。

彼の叩き出す、しなやかで包容力のあるビートは、どんな共演者も鼓舞してやまないエネルギー感に満ち溢れているのです。

なんでも、酔っ払って椅子から滑って床に寝っころがっても、シンバルやハットの刻みは正確さをキープするほどの人なのだそうで。

「すごいドラマーが店に来るんだよ」という、噂だけは聞いていました。

しかし、毎日この店に通って網を張っているにもかかわらず、中々その人、店に来ない。で、先日、会うことが出来ました。

ようやくべろんべろんに酔っ払って深夜、店にやってきた彼。

なんでもフィリピン・パブで飲んだ後だとか。

店の人からは「ハゲ」とか「オヤジ」と呼ばれているだけあって、パッと見は髪が薄くなってきた単なる50代オヤジのようですが、眼光の鋭さは見逃しませんでした。

彼の眼を見ていたら、菅下清廣さんを思い出しましたね。

先読みの達人、新興株のカリスマと呼ばれる投資家で、スガシタ・ファイナンシャル・サービスの代表も勤めている方です。

彼は非常に物腰柔らかな紳士ですが、目だけはいつも笑っていない。なにかを射るような鋭い目が印象的な人なのです。

その菅下さんにそっくりな鋭い目に、とんがった鷲っ鼻。

この人は只者ではないな、と直感的に感じました。

カウンターで酒を飲みながら、

「やれ理論だ譜面だ、音楽がイイとか悪いとかを偉そうにいう連中が多いけど、そんな奴らは音出してみろっての。俺は音しか信用しないぞ。」

とか、

「出す音に、その人間がどう生きてきたかが全て出るんだ。俺は音を聴けば、そいつはどんな人間かわかる」

などと話しています。

私も、そのとおりだと思って聞いていましたが、多少プレッシャーも感じました。

私のベースを聴いて、「お前は、つまんねぇ野郎だな!」と言われたらどうしよう、などと思ったからです。

しかし、それは杞憂でした。

もう、セッションは盛り上がりまくり。

たしかに、このオジサンのドラムは凄いです。

焚き付けられました。

弦をかきむしりました。

ドラムセットに向けて低音攻撃をしまくりました。

いやぁ、久々に燃えた燃えた。

こんな凄いドラマーは滅多にいない。

酔っ払いなスケベハゲオヤジだなんて、トンデモない。

猛烈なジャズドラマーですよ、このオジサンは。

ひととおり、音をぶつけ合ったあと、握手をし、「今日は君のベースに感じるものがあった。のせられてしまったよ、ハハハ」と言われました。

ノせたのはアナタのほうじゃないですか、ハハハハなんて言いながら、再びカウンターで酒を飲みはじめた我々。

一番好きなドラマーはエルヴィン・ジョーンズだと私が言ったら、強く抱きしめられ、「じつは、俺もなんだよ!」

その目には涙すら浮かんでいました。

急いで自宅に戻った私は、急いでコルトレーンの『インプレッションズ』、『トランジション』、『至上の愛』などを棚から取り出し、店でこれらのアルバムを大音量でかけながら、二人でいかにエルヴィンは素晴らしいかを語り合いました。

気が付くと、夜も白みはじめ、店に残っていた人たちと、全員が共通して演奏できる曲(《スタンドや《レット・イット・ビー》など)を2~3曲弾いて店は閉店となりました。

時計を見ると、朝の5時を回っていました。

たはは。

記:2006/03/06

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