カフェモンマルトル

text:高野雲

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2002/10/05 タフタフ・ライブ

      2015/05/29

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2002年10月5日の土曜日、六本木にあるバックステージというところで、「タフタフ」のライブを行った。

演奏した曲は、以下の通り。

・サテン・ドール
・遠くへ行きたい
・ホワッツ・ゴーイン・オン
・ドント・ターン・ザ・カード
・エルパソの歌
・スタンド・バイ・ミー

「サテン・ドール」はカーメン・マクレエの『グレート・アメリカン・ソング・ブック』のサテン・ドールよろしく、ベースとヴォーカルのデュオでトライしてみた。

途中でなんとなく微妙に二人の感じるタイム感のギャップが演奏に現れてしまい、なんだかとっても危なっかしかった。

「遠くへ行きたい」は、しょっちゅう合わせているので問題なくこなせたと思う。

とてもアコースティックギターとウッドベースの似合う歌だ。

「ホワッツ・ゴーイング・オン」は、前回とは違うアレンジでやってみたいとヴォーカルが直前のリハで言ってきたので、そのバージョンで。

要は、出だしのアレンジと、曲のテンポをかなり速めに設定したバージョンでの演奏だが、オリジナルのテンポの2割増しぐらいの速度での演奏は、ノってくるとベースを弾くのがとても心地よく、個人的には良い出来に仕上がったと思う。原曲のキーはEだが、タフタフではGに転調して演奏している。

ヴォーカルの声域を考慮しての対処だが、実はベースのポジショニングからしても、こちらのキーのほうが私は演りやすい。

「ドント・ターン・ザ・カード」も、タフタフの結成時から演奏しているレパートリーなので無難にこなせた。

この曲は、メンフィス・ミニーが歌ったDのキーのブルースだ。

この曲は、もうそれこそ何十回と人前で演奏しているが、こういうやり慣れた曲になればなるほど、その日の気分やメンバーのテンションによって出来映えが変わってくるので面白いと思った。出来映えとは、演奏の出来・不出来ではなく、曲の表情のようなもの。

同じ曲でも、演奏時の気分やコンディション次第では、まるで別の曲になってしまう。

この日に演奏した「ドント・ターン・ザ・カード」は、ちょっと不機嫌な表情を見せていた。

それはそれで、もう何十回も演奏している曲で初めて引き出せた曲の表情なので、面白い結果が出せたんじゃないかと思う。

まだまだ何度もトライして、色々な魅力を引き出してゆきたい曲だ。

「エルパソの歌」は、今回私が提案した曲だ。

ホームレス・ハートというユニットのアルバム『ホームレス・ハート』に収録されている。

彼らは、男女二人組のユニットだ。

女性はヴォーカルで、男性がギターやキーボードや打ち込みをやる。

94年頃に登場したグループだが、役割分担的にも、ちょっと早いラブ・サイケデリコといった感じか。

彼らのアルバム、正直、全然面白いとは思えず、強いていえば、歌詞カードの中に挿入されているモノクロ写真が良いなと思った程度だった。

なんか、サウンドも歌もありきたり過ぎて右耳から左耳へと音がすり抜けてゆくほど、まったく印象に残らない音楽だったのだが、唯一の例外が「エルパソの歌」だった。

この、歌のみ、右耳から左耳に通り抜けなかった。

以来、およそ8年近く、私はこのCDは「エルパソの歌」のみ聴いていたのだが、この曲の何が良いかって、まずは、しんみりとした曲調、そして歌詞。

で、歌詞のどこの部分がどう良いのかと尋ねられても返答に窮するが、一言で言ってしまえば、私は心理描写や感情吐露よりも、写実的で直截的な描写を好むので、たとえば渡辺美里の「マイ・レボリューション」で言えば、説教調が興醒めなサビの歌詞よりも、サビの前の「空き地の隅に倒れたバイク」といった詞にグッとくるし、稲垣潤一の「オーシャン・ブルー」でいえば「散水車の飛沫が光る海になる」だったり、YMOの「ピュア・ジャム」における「四角いんだけどかたちがない」といった歌詞がすごく好きだったりするのだが、そんな私の好みを反映した歌詞の一節がこの「エルパソの歌」にはあって、それはすなわち「8ブロック先には メキシコが広がる」と、たったそれだけの一節なのだが、この一節が決め手でこの歌が好きになっちゃったのだ。

「8ブロック先には メキシコが広がる」という一言が、この寂しげな曲調に乗っかると、もう本当に情景が目の前に浮かんできてしまうのだ。

だから、たったそれだけの単純な理由で、私はこの歌に惚れてしまって、月に一回は、「エルパソの歌」を聴く暮らしを続けているほどなのだが、だったら聴くだけじゃなく、演ってしまえ!と思ったのが、この歌を提案した理由。

ヴォーカル嬢は、原曲よりもさらに切なく、か細く歌っていたので、もう最高。

私は、ピチカートとアルコを交互に、そしてあくまでヴォーカルとギターの音を引き立てるために、最小限の音しか出さずに弾いた。

「スタンド・バイ・ミー」は、先月やって盛りあがったから、もう一回やろうよ、と私がお願いして、本来だったら「オール・オブ・ミー」で締めるはずだったのを、本番前に急遽変更してもらったナンバーだ。

ただし、先月ほどは盛りあがらなかった。

ヴォーカル&ギターの夕香嬢は、ロスでの「ゴスペル修行」から帰ってきたばかり。

また、ちょっと歌い方と声が変わったような気がした。

ゴスペル修行というと、デカくて響く声の修行をついつい想像してしまい、きっと帰国したらデカイ声になっているんだろうなと安易な予想を私はしていたが、実はその逆で、私が感じたのは、より繊細な声になって帰ってきたような気がしてならない。

しかし、これはあくまで私の感想。

彼女より50センチ後方でウッドベースを弾いている私だから、聴こえる周波数帯がもしかしたら違うのかもしれない。

というのも、このライブに来てくださったお客さんの感想は、一様に「あんな小さい体から、どうしてあんなに声量のある声が出るのだろう?」だったからだ。
うーむ、今度は彼女の前に立ってベースを弾いてみようか。

記:2002/10/09

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