カフェモンマルトル

ジャズと映画と本の日々:高野雲

外郎売りとワーグナー

      2015/12/17

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kusahana

毎週、「高野 雲の快楽ジャズ通信~What Is This Thing Called Jazz?」という番組で、パーソナリティを務めさせていただいています。

そして、ジャズのこと、あれこれと喋っています。

最近は、「分かりやすい」「面白い」「声が聞き取りやすい」という嬉しいお声も頂戴しており(ありがとうございます!)、ますますこれからもっと頑張ろう!と思っている次第ですが、

時折、「何かトークの訓練をされているのですか?」という質問もいくつかいただいています。

トークの訓練のようなもの? は特にしていません(笑)。

いつも、あまり細かいことはかんがえずに、ぶっつけ本番で喋っています。

もっとも、これまで、ジャズについていろいろな感想文はたくさん書いてきているので、しゃべるというよりは、文字をタイピングするような感覚で頭に浮かんだ言葉を音声に置き換えているように思います。

もっとも、文字は後で誤字脱字の修正は効くけど、しゃべりはいったん話してしまうと、修正が効かないという違いはありますが……。

ただ、ひとつだけ、ほぼ毎日訓練していることがあります。

「外郎売りのせりふ」です。

これは、俳優やアナウンサーたちの間では、滑舌の訓練として有名な題材です。

もとはといえば、歌舞伎十八番のひとつ。
1718年に市川団十郎が初演したと伝えられています。

「これを、ベテランアナウンサーは3分以内でしゃべれますよ。」

ディレクター嬢がそう言いながら、この「外郎売りのセリフ」のテキストを私に送ってくれました。

特に「これ読んで訓練せい!」とか、「これ毎日やりなさい!」とは言わず、ただ、「ベテランは3分以内で読めるんですけどね。私もこれやりましたよ~」と言うだけ(笑)。

だから、べつにこれを朗読することは義務ではないのですが、

「やれ!」と言われると、途端にやりたくなくなるのが天の邪鬼な私。

しかし、「別にやってもやらなくてもいいですよ~」という態度をとられると、「よっしゃ、やってやろうやないけ!」と燃えるのも天の邪鬼な私(笑)。

だから、昨年の秋から、つまり番組は始まる前後から、朝は外郎売を朗読することを日課にしています。

もちろん忙しくて出来ない日もあるけれども、ちょっとした時間の隙間をみつけて、なるべく大きな声で読むようにしています。

最初はゆっくりと読み、次第に速度をあげてゆきました。

で、今では、余裕で3分以内で読めるようになりました(セリフの内容は暗記していないけど)。

はたして、これを続けることで、それほど滑舌がよくなったのかどうかは、自分では分かりません。

放送第一回の録音と、最近の放送の録音を聴き比べてみても、それほど滑舌や発音に差があるのかなぁ~?と個人的には思っていますが、まあいいや。

話し方の勉強やトレーニングをまったく受けたことのない私が、恐れ多くも全国のコミュニティFMにもネットされている番組でお話するわけだから、少なくとも、はっきりと分かりやすく話さなければ! というプレッシャーを落ち着かせるための精神安定剤にはなっているのです、外郎売の朗読は。

もっとも、勢いやノリも重視したい番組でもあるので、

あまりハッキリと喋りすぎてNHKのアナウンサーのように、一言一言、「言葉を置く」ような喋りにはしたくないので、そのへんは、どのように自分の個性を出していけばいいのか、日夜思案中です。

というわけで、みなさん、試みに、外郎売りのセリフをコピペしておきますので、これを声を出して読んでみましょう!

さて、あなたは3分以内につかえずに読み切れるかな?(笑)

もっとも、最初は慌てずに、ゆっくりと読み始めてみましょう。

▼ここから

拙者親方と申すは、お立合の中(うち)に、御存じのお方もござりましょうが、お江戸を発(た)って二十里上方、相州小田原一色町をお過ぎなされて、青物町を登りへおいでなさるれば、欄干橋虎屋藤衛門(らんかんばしとらやとうえもんただいま)只今は剃髪致して、円斉となのりまする。

元朝より大晦日(おおつごもり)まで、お手に入れまするこの薬は、昔ちんの国の唐人、外郎(ういろう)という人、わが朝へ来(きた)り、帝へ参内の折から、この薬を深く籠め置き、用ゆる時は一粒ずつ、冠のすき間より取り出(い)だす。依(よ)ってその名を帝より、とうちんこうと賜(たま)わる。即(すなわ)ち文字(もんじ)には「頂(いただ)き、透(す)く、香(にお)い」とかいて「とうちんこう」と申す。

只今はこの薬、殊(こと)の外世上(ほかせじょう)に弘(ひろ)まり、方々に似看板(にせかんばん)を出(いだ)し、イヤ、小田原の、灰俵(はいだわら)の、さん俵の、炭俵(すみだわら)のと色々に申せども、平仮名をもって「ういろう」と記(しる)せしは親方円斉ばかり。もしやお立合の中(うち)に、熱海か塔の沢へ湯治(とうじ)にお出でなさるるか、又は伊勢御参宮の折からは、必らずお門違(かどちが)いなされまするな。

お登りならば右の方、お下りなされば左側、八方が八つ棟(むね)、表が三つ棟玉堂造(ぎょくどうづく)り、破風(はふ)には菊に桐のとうの御紋(ごもん)を御赦免(ごしゃめん)あって、系図正しき薬でござる。

イヤ最前(さいぜん)より家名の自慢ばかり申しても、ご存知ない方には、正身(しょうしん)の胡椒(こしょう)の丸呑(まるのみ)、白河夜船(しらかわよふね)、さらば一粒食(いちりゅうた)べかけて、その気見合(きみあ)いをお目にかけましょう。

先(ま)ずこの薬をかように一粒舌(いちりゅうした)の上にのせまして、腹内(ふくない)へ納めますると、イヤどうも云(い)えぬは、胃、心、肺、肝がすこやかになりて、薫風咽(くんぷうのんど)より来(きた)り、口中微涼(こうちゅうびりょう)を生ずるが如し。

魚鳥(ぎょちょう)、茸(きのこ)、麺類の食合(くいあ)わせ、其(そ)の他(ほか)、万病速効ある事神の如し。

さて、この薬、第一の奇妙には、舌のまわることが、銭ゴマがはだしで逃げる。ひょっと舌がまわり出すと、矢も盾もたまらぬじゃ。

そりゃそりゃ、そらそりゃ、まわってきたわ、まわってくるわ。アワヤ咽(のんど)、さたらな舌に、カ牙(げ)サ歯音(しおん)、ハマの二つは唇の軽重、開合さわやかに、あかさたなはまやらわ、おこそとのほもよろを、一つへぎへぎに、へぎほしはじかみ、盆まめ、盆米、盆ごぼう、摘蓼(つみたで)、摘豆(つみまめ)、つみ山椒(ざんしょう)、書写山(しょしゃざん)の社僧正(しゃそうじょう)、粉米(こごめ)のなまがみ、粉米のなまがみ、こん粉米(こごめ)の小生(こなま)がみ、繻子(しゅす)ひじゅす、繻子(しゅす)、繻珍(しゅちん)、親も嘉兵衛(かへい)、子も嘉兵衛、親かへい子かへい、子かへい親かへい、ふる栗の木の古切口(ふるきりぐち)。

雨合羽(あまがっぱ)か、番合羽(ばんがっぱ)か、貴様のきゃはんも皮脚絆、我等がきゃはんも皮脚絆、しっかわ袴のしっぽころびを、三針(みはり)はりながにちょと縫うて、ぬうてちょとぶんだせ、かわら撫子(なでしこ)、野石竹(のせきちく)。

のら如来(にょらい)、のら如来、三(み)のら如来に六のら如来。 一寸先(ちょっとさき)のお小仏(こぼとけ)におけつまずきゃるな、細溝(ほそどぶ)にどじょにょろり。

京のなま鱈(だら)奈良なま学鰹(まながつお)、ちょと四(し)、五貫目(ごかんめ)、お茶立(ちゃだ)ちょ、茶立(ちゃだ)ちょ、ちゃっと立ちょ茶立(ちゃだ)ちょ、青竹茶筅(あおだけちゃせん)でお茶ちゃっと立ちゃ。

来るわ来るわ何が来る、高野(こうや)の山のおこけら小僧。 狸百匹(たぬきひゃっぴき)、箸百膳(はしひゃくぜん)、天目百杯(てんもくひゃっぱい)、棒八百本(ぼうはっぴゃくほん)。武具(ぶぐ)、馬具(ばぐ)、ぶぐ、ばぐ、三(み)ぶぐばぐ、合(あ)わせて武具、馬具、六(む)ぶぐばぐ。  菊、栗、きく、くり、三菊栗、合わせて菊、栗)、六菊栗(むぎくくり)。麦、ごみ、むぎ、ごみ、三(み)むぎごみ、合わせてむぎ、ごみ、六むぎごみ。あの長押(なげし)の長薙刀(ながなぎなた)は、誰(た)が長薙刀(ながなぎなた)ぞ。向こうの胡麻(ごま)がらは、荏(え)のごまがらか、真(ま)ごまがらか、あれこそほんの真胡麻殻(まごまがら)。がらぴい、がらぴい風車(かざぐるま)、おきゃがれこぼし、おきゃがれ小法師(こぼし)、ゆんべもこぼして又こぼした。

たあぷぽぽ、たあぷぽぽ、ちりから、ちりから、つったっぽ、たっぽたっぽ一丁だこ、落ちたら煮て食お、煮ても焼いても食われぬものは、五徳(ごとく)、鉄きゅう、かな熊童子(くまどうし)に、石熊(いしくま)、石持(いしもち)、虎熊(とらくま)、虎きす、中も、東寺の羅生門には、茨木童子(いばらぎどうじ)がうで栗五合(ぐりごごう)つかんでおむしゃる、かの頼光(らいこう)のひざもと去らず。

鮒(ふな)、きんかん、椎茸(しいたけ)、定(さだ)めて後段(ごだん)な、そば切り、そうめん、うどんか、愚鈍(ぐどん)な小新発地(こしんぼち)。小棚(こだな)の、小下(こした)の、小桶(こおけ)に、こ味噌(こみそ)が、こ有(あ)るぞ、小杓子(こしゃくし)、こ持(も)って、こすくって、こよこせ、おっと合点(がてん)だ、心得(こころえ)たんぼの川崎、神奈川、程ヶ谷、戸塚は、走って行けば、やいとを摺(す)りむく、三里ばかりか、藤沢、平塚、大磯がしや、小磯(こいそ)の宿(しゅく)を七つ起きして、早天早々(そうてんそうそう)、相州小田原(そうしゅうおだわら)とうちん香(こう)、隠(かく)れござらぬ貴賤群衆(きせんぐんじゅ)の花のお江戸の花ういろう、あれあの花を見てお心(こころ)をおやわらぎやという。産子(うぶこ)、這子(はうこ)に至るまで、この外郎の御評判、御存じないとは申されまい。まいつぶり、角出(つのだ)せ、棒出(ぼうだ)せ、ぼうぼうまゆに、臼(うす)、杵(きね)、すりばち、ばちばちぐゎらぐゎらぐゎらと、羽目(はめ)を弛(はず)して今日(こんにち)お出(い)でのいずれも様(さま)に、上げねばならぬ、売らねばならぬと、息せい引っぱり、東方世界(とうほうせかい)の薬の元〆(もとじめ)、薬師如来(やくしにょらい)も照覧(しょうらん)あれと、ホホ敬(うやま)って、ういろうは、いらっしゃりませぬか。

私は、毎朝、カラヤン指揮のワーグナー《ニュールンベルグのマイスタージンガー》をかけながら読んでいます。

妙な組み合わせですが(笑)、3分の時間の間に、目が覚めて、やる気も出るという一石二鳥の効果があるのです(笑)。

記:2009/05/07

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