カフェモンマルトル

text:高野雲

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山形に行ってきました。切なくてよかったぞ~。ジャズ喫茶『オクテット』にも行ったよ♪

      2015/07/08

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先日、野暮用で山形に行ってきました。

その前に仙台にいたんだけども、仙台は仙台で夜はかなり面白かったんだけど、その話は別の機会に譲るとしてさ、山形は短い滞在だったけど、よかったなぁ。

どこがいいかって?

切ねーのよ、一言でいっちゃうとさ。

切ないの、ほんと。

「切なさ」を楽しいと思っちゃう私の心の構造にも問題があるのかもしれないのだけれども、ああ、北を旅してるなぁ、切ないよなぁと思える自分が切なくて大好き(笑)。

じゃあ、あんた、どこが切ないのだ?と聞かれてもですねぇ、あまりうまくいえないんですけど、仙台から仙山線に乗るわけですが、この仙山線が切ないね、まず(笑)。

仙台から山形までを2時間弱で結ぶローカル線なんですが、座席に座ると、お尻が低温ヤケドをするんじゃないかというぐらい、ヒーターが効いていてホカホカなんですよ。

「ああ、北国なんだなぁ」って(笑)。

それに、車窓。
景色の移り変わりも変化に富んでいて楽しいです。

雪化粧をした渓谷や、川辺。
次第に見えてくる山の稜線も変化に富んでいて、山の稜線の向こうにさらに山の稜線が見える。

なんかすごく神秘的で神々しい。

山に囲まれると、私は心が心地よい圧迫感につつまれますが、バリエーション豊かな山の形を見ているだけで、心の中の圧迫感も様々な形を変え、心地よく私の心にのしかかってきます。

いやぁ、ほんと、たくさんの山のカタチには色々なバリエーションがあるんだなぁ。

だから山形県? なわけでもないんだろうけど、そんな山のいろいろな形を楽しめることは確かで、両脇の車窓がほんとにいい。

しかも、夕方前の曇り空、両脇には、神々しい山々の稜線がぼんやりと、しかし確かな圧迫感をもって胸に迫ってくる。

お尻はポカポカで、外はきっと厳しい寒さと山々の世界。

ああ、俺は別世界に足を踏み入れようとしているんだなぁ、大丈夫だろうか?という不安感がとても楽しい(笑)。

で、山形のひとつ手前の駅で、中学生(高校生?)の男の子や女の子が乗ってくるわけですが、いいですねぇ、こういう光景って。

山、山、山だった風景も、次第に山形市内の町並みになってきます。
落ちてゆく太陽が、これまた切ねぇんですよ。

yamagata_town

じつは私、小学生の頃から、『鉄道ジャーナル』の愛読者なんですよ。

で、よく『鉄道ジャーナル』には、雪景色のホームから、地方の学生がローカル線に乗り降りしている写真がよく掲載されてまして、そういう写真ばかり「いいなぁ」と思いながら育っちゃったもんで、どうも地元の人、地方の景色、ローカル線っていう組み合わせが滅茶苦茶私の心の中の郷愁をくすぐるのですね。

あとは、港町の朝市場の写真と、その隣に、海辺を走るローカル線の写真という組み合わせも、強烈に私の心の中の郷愁をくすぐるんですが(笑)。

ようするに、子供の頃から、そういう、郷愁をしめつけられるようなシーンに憧れていたんですね。

で、『鉄道ジャーナル』や『旅と鉄道』で、「うーん、切なくていいねぇ」な写真ばかり見てきたんで、で、そういう光景を求めて、高校のときなんかは青春18切符で北をしょっちゅう旅してましたから。

その頃の愛読書は宮脇俊三でさぁ(笑)。

そんな私ゆえ、

・東北

・山々

・夕暮れ前

・残雪

・ローカル線

・地元の高校生

と、これだけの要素が揃うだけでも、「きゅーっ!」っと胸が締め付けられるのです。

地元の方、ごめんなさい。
きっとこれ読んで「俺たちは見世物じゃねぇ!」って怒る方もいらっしゃると思うのですが、正直な感想文以上の特別な意味はございませんので、笑って許しておくれやす。

で、「きゅーっ!」と胸が締め付けられて切ない気分になりながら、山形駅に到着。

山形駅のホームがまた、切ないのよ(笑)。

まだ、午後4時をまわったばかりだというのに、早くも陽が沈みかけて、たそがれムード。弱々しいオレンジ色の陽光と、ほっぺたがピン!と張り詰めたような冷気。

yamagata_home

群馬の桐生、新潟の長岡や古町、青森駅近くの商店街……。
これら地方都市って私大好き。
だって、夕暮れ時がちょっと切ないから。

山形駅のホームもまさに私好みのシチュエーションでした(笑)。

ホーム、というかここではあえて、プラットホームと呼びたいのだが、山形駅に到着した電車から足早に降り、階段を上ってゆく女子高生や、地元のおじさんの姿もたまらなくいい雰囲気。

車両の長さの倍以上はあるかと思われるプラットホーム端の喫煙所でゆっくり一服しながら、隣のプラットホームで、出発を待つ山形新幹線「つばさ」の銀色のボディも、なんだか切ない。

まだ午後4時だというのに、暮れかかった太陽のオレンジ色の光が銀色のボディに反射しています。

tsubasa_yamagata

福島からは在来線の線路の上を走る新幹線ゆえ、普通、新幹線というと、在来線のホームの上を走るというイメージが強いのですが、山形新幹線は在来線と線路は共有。
よって、在来線と同じ高さのホームにたたずむ新幹線の姿というのが、妙に庶民的で郷愁をくすぐるのですわ、きゅーっ!(笑)

山形駅前の大通りを夕暮れ時にトボトボ歩く私も、切なくて素敵(笑)。

まっすぐ一本に伸びる道路。

そのはるか向こうに見える山。

山の見える町って好きなんだなぁ。

昔、兵庫県の西宮に住んでいたときも、つねに私の視界の中の景色には六甲山やカブト山がセットになっていましたからね。

多感な時期に山とビルが心に焼き付いちゃってるんです。

ビルだけの東京の景色に慣れてしまってはいるけれども、ときどき、山交じりの町の光景を見てしまうと、どこか懐かしさを感じてしまう。

中学生のときに『少年チャンピオン』に連載されていた小山田いくの『すくらっぷ・ブック』を愛読していたんですが、この物語の舞台が信州の小諸でしょ?

すくらっぷ・ブック (1) (fukkan.com―小山田いく選集)すくらっぷ・ブック (1) (fukkan.com―小山田いく選集)

漫画のコマのいたるところに、山が出てくるんですね。町の風景と山が一体化しているんです。

そういう町に住みたい。
で、そういう山が見える町で、ジャズ喫茶のマスターになれたら最高(笑)。

客に「今日も寒いねぇ」なんていいながら、ドルフィーとリトルの《ブッカーズ・ワルツ》をかけるの。

ゆっくりとコーヒーを淹れながらさ。いいねぇ(笑)。

閉店後には、しーんと静まり返った店内で、ひとり『セロニアス・ヒムセルフ』をかけるの。

あ、この描写、誰かが書いていたな。
あ、思い出した。村松友視の『ベーシーの客』だ。

だったら、真似っぽいからやめた(笑)。
ほんとは、すごくオイシイところ持ってかれたと悔しい思いなのですが…。

じゃあ、閉店後の店内で、私は、ビル・エヴァンスの『アイ・ウィル・セイ・グッバイ』だい(笑)。

I Will Say GoodbyeI Will Say Goodbye

どうだ! 切ないだろ!(笑)

あるいは、村松健の『カレンダー ~ぶどう畑のぶどう作り~』でもいいかな。いや、ノスタルジーに胸をかきむしられて泣いちゃうかもしれない(涙)。

ま、そんな北国の俺がマスターになった妄想はいいとして……。

そうそう、山の見える北国のマスターに会ってきましたよ、「オクテット」の相沢さんに。
とても人懐っこい、笑顔の素敵なマスターでした。

なんだか、私がたまに行く六本木のフランス料理店『オウ・グルマン』のマスターに風貌、笑顔ともにそっくりでした。

マスターとは初対面ですが、すぐに打ち解け、色々とジャズのこと教えてもらいました。

アーゴのスティット、よかったなぁ。スティット嫌いの私でも、「オクテット」でかかったら、とてもよく聞こえた(笑)。

オクテットは、狭いけれども、とても素敵な店です。

内装も素敵。

柱時計がいっぱいあるの。

たくさんの古い時計が時を刻んでるの。

で、1時間ごとに時報がなるの。ごーん、ごーん、って。

なんか、切なくないですか?(笑)

この柱時計の時報と、だんだん暗くなってゆく外の風景。

カウンターの中の暖かい笑顔のマスター。

そろそろ行かなくちゃいけないのに、コーヒーをついついおかわりしちゃう俺。

ああ、なんてことだ、オクテット。そして、山形!

もし私に美人でモデルのような恋人がいたら(笑)、あえて東京で待ち合わせしないでさ、夕方6時か7時ぐらいで山形の「オクテット」で待ち合わせしたいよね。

季節は当然、冬。

彼女は、約束の時間よりも30分ぐらい早く着くの。
で、俺は、わざと遅れて行くの(笑)。1時間ぐらい遅れるの。

オクテットの柱時計がたくさんある空間に、素敵な女性を放置プレイするの。
スピーカーから流れる暖かいジャズの空間の中に、美人を封じ込めちゃうの。

彼女はカウンターで、ひとりシステム手帳に予定を書き入れたり、ゆっくりとコーヒーを飲んだり、ときどきじーっとジャズに聴き入ったり、マスターの「東京からですか?」に「ええ」と短く頷いたりするの。

でも、私は来ない(笑)。

ときどき、ケータイを見たりするんだけど、私からのメールはない。

ほんの少しだけイライラしてきた彼女の顔は、きっと最高に美しいことでしょう(笑)。

で、時間を見計らって私は「ごめん、ごめん、打ち合わせ長引いちゃってさぁ」と店内に駆け込むの(笑)。

そのとき私を見つめる彼女の

安堵したような

嬉しいような

怒っているような

詰(なじ)るような

甘えるような

そういった感情が交錯した表情を私は楽しむ(笑)。

バックには『マイルス・デイヴィス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ』の《ザ・マン・アイ・ラヴ》が、ちょっと低めのボリュームで淡々とかかっていれば、もう最高!(笑)

マイルス・デイヴィス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツマイルス・デイヴィス・アンド・ザ・モダン・ジャズ・ジャイアンツ

そんな妄想が湧いてくるような、素敵な店でした「オクテット」は。

ああ、いいなぁ、また行きてぇ(笑)。

記:2007/12/02

コメント

■いいですね。
いいですね、切ないですね。うん、いいですね。東北のそういう切ないところに憧れるし何故か親近感を持ってしまいます。

「旅行するとしたらどこがいい?」

の問いには

「行ってもあまり楽しくないところ!」

と答えるのがクセになりそうです。

Posted by takaラサーン at 2007年12月02日 12:01

■でしょ? でしょ?
takaラサーン

響いてくれてありがとうございます。
そういえば、奄美大島の例のビーチ(?)も、人によっては、あまり楽しくないところかもしれませんね(笑)。
でも、私と博士と、それ以上に息子がハマってます。
奄美大島=あの浜辺
だと思い込んでいる節があります(笑)。

私は、なんであそこが好きかというと、眠たくなるから(笑)。
眠りなんてどこでもいいじゃん、というのは違います。
あの場所だから気持ちのよい眠りっていうのもありますからね。
たぶん、ラサーンさんはご存知だと思いますけど。 
 
(職業:波がすぐそこまできていることに気づかない人・64歳)
Posted by 雲 at 2007年12月02日 16:24

■無題
妄想の飛び方にウケた(笑)。

いいっすなぁ~、そこまで妄想を作りこめるのって! ちなみに、私はこれを読んでいてなんだか演歌っぽく感じましたけどね。

あと、山形と言えば藤沢周平ですよ♪

Posted by 赤っぴ at 2007年12月03日 20:24

■>っぴ
あっ、そうでがんした。(笑)
あの思いつめたような日本海側独特の空の色を見てしまうと、その空のもとのウナサカ藩で繰り広げられる人間物語が、ものすごくシックリきますね。周平ファンは一度、空と山並みだけでも見にいくと良いですよ。

Posted by 高野 雲 at 2007年12月09日 00:12

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