バリー・ハリス・イン・スペイン/バリー・ハリス

      2021/02/03

黒いピアノと生々しいリズムセクション

重く、ほのかに黒いピアノ。
ピアノがまるで唸りをあげているように聴こえる。

クリアなハイハットの音色と、鮮明なブラシの音。
そして、腰の入ったスネアへの打撃が心地よいリロイ・ウィリアムスのドラム。

チャック・イスラエルのベースの音は、堅実さの中にも艶っぽさと殺気が見え隠れする。

まるで、指さばきまで聴こえてきそうなリアルなベースの音と空気感。
演奏者の息遣いまでもが伝わってきそうな、リズムセクションの生々しさといったら。

ピアノ紳士がみせたダークな殺気

低く静かに潜行してゆくバリー・ハリスのピアノは、どこまで行ってもダークな雰囲気。沈鬱な趣きはまるで重力のように、こちらの耳を引きつけたら離さない。

物腰おだやかな“ピアノの紳士”バリー・ハリスが、スペインはマドリードにて垣間見せた、ドスの効いた殺気。

そして、熟練者にしか出せない深い味わい。

“暗黒のCm(シーマイナー)”、《スィート・ピー》に惹き込まれたら、もうあなたは、このアルバムの虜だ。

酒が似合う

じっとり、じわりと、ずっしりとした手ごたえを酒をちびちびなめながら、「いいねぇ」と独り言をいいながら、至福の充実タイム。

ちょっとした幸せ時間だ。

酒といえば、ジャズ喫茶「いーぐる」の後藤雅洋氏は、『男の隠れ家』 の2007年11月号の「ジャズを巡る旅」特集内の「必聴のジャズ名盤」にて、このアルバムを取り上げ、
やはり、「一人しみじみ酒を飲もうという時なんぞは最高のアイテムだろう」と書かれている。

ただし、後藤さんは、「目差しを肴に浦霞の冷」だそうだが、私は、やっぱりスコッチかバーボンがいい。

年季の差?(笑)

記:2003/06/01

album data

BARRY HARRIS IN SPAIN (Nuba)
- Barry Harris

1.Sweet Pea
2.A Bird In Hand
3.Line Of Fire
4.Alexis Leigh
5.Strike Up The Band
6.Don't Blame Me
7.Flip-Flop

Barry Harris (p)
Chuck Israels (b)
Leroy Williams (ds)

1991/12/05

 - ジャズ