ヘディン・サウス/ホレス・パーラン

   

レイ・バレットのコンガ

レイ・バレットのコンガは面白い。

他のパーカッショニストに比べれば、音数が少ない、というのが彼の最大の特徴。

♪ぽこぽこぽこぽこぽかぽかぽこぽこぽこぽこ…

と凄まじい勢いの連打を繰り返し、演奏を盛り上げることは滅多になく、あくまで、ドラムのたたき出すリズムを陰から支えるような、

♪っぽ・っぽこ・っぽ・っぽこ

といった、少ない音数。

単純素朴で、ときにはイモ臭ささえ醸し出す叩き方がなんともイイ味を出している。

特に、ルー・ドナルドソンの《ブルース・ウォーク》にはそれが顕著で、彼の音数少なくも存在感のある

♪っぽこ・っぽこ

がなければ、この名演奏と呼ばれる演奏も、ここまで名演奏になったかどうか。

土の臭いがする、アーシーな味付け係としての彼のコンガは一級品だ。

頑張り過ぎない、マイペースでリラックスした叩きだからこそ、より一層、土臭さが生きてくるのだと思う。

しかし、そんな彼が頑張っちゃっているアルバムが、ホレス・パーランの『ヘディン・サウス』だ。

このアーシーさ、たまらん!

名盤『アス・スリー』のピアノトリオに、パーカッションを「追加武装」した内容、と紹介したいところだし、実際、そのとおりだが、うーん、最近は逆の認識。

レイ・バレットのパーカッションに、ピアノトリオが伴奏係としてついている「パーカッション名盤」として認識したほうが正しいんじゃないか? と思うぐらい主客逆転した聴き方をしている私がいる。

とはいえ、特に凄まじいプレイをしているわけでもなし、いつも通りのマイペースなプレイなんだが、ピアノトリオがいかんせん単調なぶん(特にタイトル曲)、パーカッションの音の耳に入り率が他のアルバムよりも3割ほど高くなってしまっているのだ。

微妙なオマヌケさも加わったアーシーさ。この手のテイストが好きな人には、タイトル曲はタマラナイ味を持っている。

その他、特筆すべき点としては、ベースのジョージ・タッカーのアルコ弾きで「おやっ?」と思わせるイントロの《サマータイム》が面白い。

ちょっと音程の怪しいアルコが、ますます「おやっ?」に拍車をかける。

もっとも「おやっ?」となるのは、イントロだけ。

あとはいつも通りの、いつも通りのノリの演奏というオチもなんだか微笑ましい。特にパーランのソロは、《サマータイム》というよりも、フレーズは“いつものブルース”って感じの我田引水っぷり。そこがまたパーランらしくて良いのだけれども。

正直、演奏内容においては、『アス・スリー』の“黒い高揚感”にまでは達してないが、ジャケットの歯車がなんともイイ味を出しているので、それだけでも聴く気になってしまう魅力的な一枚ではある。

記:2006/07/03

歯車

知る人ぞ知る、奄美大島の名物音楽ショップ「サウンズパル」。

ここの主任サウンド伝道師の高良氏は、ご存知の方も多いと思いますが、彼が日刊で書いているブログに「ジャケットを愛でる」という秀逸なコーナーがあるんですね。

「ジャケットを愛でる」。

ソソルタイトルですが、私が愛でるとしたら、こういうジャケットがいいなぁ。

ホレス・パーランの『ヘディン・サウス』なんだけどさ、このジャケット、見るたびに、おいしい、というか「おや?」となるんですよ。

この真ん中の歯車のような物体、これがイイ味だしてますね。
アナログ&レトロ感がムンムン。

で、この歯車の一枚が矢印になって、パーランを指しているという、非常に単純な構造ではあるのですが、バックのクリームがかった白といい、なんともいい感じ。

じつは、うちのHPのエッセイのコーナーにも、歯車の画像を使用しているほどの、私は歯車フェチ。

だから、演奏内容なんかそっちのけで、見入ってしまいますね、このジャケットには。

あ、そっちのけ、なんて書きましたが、内容ももちろん素晴らしいです。
ホレス・パーランのヒット作といえば『アス・スリー』を思い浮かべる人も多いと思います。

うねりにうねりまくった、ノリノリでグルーヴィな名盤です。

このときのフォーマットはピアノトリオでしたが、『ヘディン・サウス』にはコンガが加わっています。

なので、リズム面に力を入れたわけなので、『アス・スリー』のノリにさらに拍車がかかっているわけで、演奏全体の躍動感はさらに際立っています。

ノリノリで真っ黒いピアノをお求めの方は、ホレス・パーランの『アス・スリー』とともに、この歯車ジャケットも強くお勧めしておきます。

記:2009/12/20

album data

HEADIN' SOUTH (Blue Note)
- Horace Parlan

1.Headin' South
2.The Song Is Ended
3.Summertime
4.Low Down
5.Congalegre
6.Prelude To A Kiss
7.Jim Loves Sue
8.My Mother's Eyes

Horace Parlan (p)
George Tucker (b)
Al Harewood (ds)
Ray Barretto (per)

1960/12/06

 - ジャズ