ホリデイ/浜崎航 &松本茜トリオ

      2021/01/31

可愛らしいジャケット

相も変わらず茜画伯が描き出すジャケ絵が可愛らしい浜崎航と松本茜のコラボ第二弾!

楽しい演奏が繰り広げられている。

パーティミュージックに相応しい明るさと大らかさ、開放的な気分になれること請け合い。

点画の技法も取り入れている

ネコちゃんの可愛いらしいイラストは、ジャケット裏やCDの盤面にも。

そして、これらのイラストは、よく見ると結構細かい。

たとえば吹き出しの中の音符は、四分音符に三連符に八分音符にと細かく描き分けられている。

で、音符だけではなくハートも混ざっているところが可愛らしいですね。

また、細かいといえば、横断歩道のアスファルトの質感を出すためにか、点画のように、細かな点がチョンチョン描かれている。

点画といえば、どうしても水木しげるの妖怪漫画(とイラスト)を思い出す。

余談だが、かつて水木しげる先生が生まれた「妖怪の町」境港を訪れたことがあるが、朝いちばんの町が混む前に訪問したかったので、米子の駅前のホテルに一泊した。

米子駅の0番線から発着する境線のゲゲゲの鬼太郎のキャラクターが描かれた列車に乗れば、30~40くらいで境港に着くからね。

米子といえば、松本茜画伯も鳥取県米子の出身だ。

もしかしたら、ゲゲゲの水木先生の影響を受けている?なんてことを想像してしまう点画なのだ。

斜線

点々のみならず、斜線も多用されている。

可愛らしいネコちゃんでありながらも微妙に斜線を引いて陰をつけているところがブルーナのミッフィーとは違うところですね。

ネコの顔の陰の斜線と、ピアニカの斜線の幅を使い分けているところなど、見ていて飽きないイラストですな。

ウッドベースの斜線は、濃さが二段階♪

歩道の隙間から草が生えているところもあり、なかなか芸が細かいです。

やはりハーレム・ブルース!

さて、ピアニスト・松本茜さんをデビュー当時からチェックしている方は、ご存知の通り、フィニアス・ニューボーン・ジュニアをアイドル(の一人)としているピアニストであることは、初リーダー作のタイトルからもお分かりいただけると思う。

フィニアスに恋して~10代で最初で最後のレコーディング~

デビューアルバムの『フィニアスに恋して』では、名曲《シュガー・レイ》を演奏しており、フィニアスのオリジナル(ロイ・ヘインズの『ウィ・スリー』)をかなり聴き込んでいることがよく分かる。

そして、このアルバムでは、おお、やっぱり、というかついに出ました《ハーレム・ブルース》。

これもフィニアスの代表的ナンバー。

楽しい曲調。
かな~りゴスペル色の強いナンバーなんだけれども、これ、いつかチャレンジして欲しいと、ずっと思っていたのだが、ピアノトリオではなく管入りカルテットで実現。

テナーサックスが加わると、より明るさと華やぎが増して、さらに楽しさ倍増になる。

終電前のジャズ

この楽しいテイストは1曲目の《ホリデイ》も同様だ。

これを聴きはじめた数秒後から、ハッピーなパーティモード(ホリデイモード?)に気分がチェンジすること請け合い!

このアルバムを代表する看板曲だろう。
破たんのないツボを押さえた盛り上がり。

すごくバランスの良い演奏で万人が納得するであろう演奏には違いなんだけれども、欲をいえば、この明るさ、ハジけ方は、ヘンな喩えになってしまうけれども、終電前までのハッピームードなんだよね。

《サマータイム》なんかも、テーマのアンサンブルではかなり勢いとパンチがあって盛り上がっているんだけれども、また、ピアノソロになった瞬間からの倍テンもけっこう刺激的なんだけれども、やっぱりこのテンションのボルテージは常識の範囲内というか。

元気にハジけてはいるけれども、門限つきのハジけ方というのかな。
だからよくも悪くも健康的で優等生チック。

ごめん、ヘンな喩えで。

終電後のミッドナイトから明け方の白けた空気に感じる倦怠感、こういう要素、あるいはこういうシチュエーションに相応しい演奏も1曲くらいは欲しいなぁなんていうのは贅沢過ぎるのは分かってはいるけれども。

だって、ジャズは夜の音楽だもの(と勝手に思っている)。
真夜中の音楽だもの(と勝手に思っている)。
微ヤバでセクシャルな要素があるのがジャズだもの(と勝手に思っている)。

今後はこのグループ、もう少し大人の倦怠感みたいな微ダルな要素も発散できると、もっと凄いグループになるのにな、なんて無いモノねだりをするのは、きっと高田馬場のジャズ喫茶「イントロ」の週末のジャムセッションデイの終電がなくなったあたりからの独特な空気を学生時代から経験しちゃっているからなのでしょう。

午前3時頃のテンションが、多少の疲れが混ざってきていつつも、まだまだこれから!っていうテンションも入り交じり、楽器奏者の本音や本能が出始めてくるので好きなんだよね。

もっとも、このアルバムのタイトルが「ホリデイ=休日」ということを考えれば、昼から浅い夜にかけての空気になることは致し方なし。

現状のままでも演奏者の個性が存分に発揮され、良い意味で、それらの個性が融合してプラスアルファの楽しさを生み出しているという点からも、100点満点の出来であることに違いはないのだけれど。

記:2017/12/31

album data

HOLIDAY (Concept Records)
- 浜崎航 & 松本茜

1. Holiday
2. A Misty Night
3. Summertime
4. Sleeping With Stars
5. Smile Is A Girl's Best Make Up & Jewelry
6. Do You Know What It Means To Miss Neworleans
7. Mother's Blues
8. Goodbye
9. Harlem Blues

浜崎航 (ts,ss)
松本茜 (p)
本川悠平(b)
海野俊輔(ds)
Peter Washington (b)
Gene Jackson (ds)

2015/05/07

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