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インクレディブル・ジャズ・ギター/ウェス・モンゴメリー

インクレディブル・ジャズ・ギター/ウェス・モンゴメリー

Incredible Jazz Guitar

真夜中のギター

多くの人が無意識に抱いているであろうジャズギターのイメージを体現しているアルバムなのではないかと思う。

深夜、狭いジャズクラブで流れているであろうブルーな色合いの沈み込むようなギターが主役のジャズ。
堅実なリズムのサポートに乗り、深みとコクのある少々ダークな弦の音。

『インクレディブル・ジャズ・ギター』には、ウェス・モンゴメリーが故郷のインディアナポリスのジャズクラブで夜な夜な鍛え上げたギターのテクニックが惜しげもなく注入されている。

とはいえ、押しつけがましいトゥーマッチなテイストは皆無で、スマートさとコクのある味わいがのバランスが非常に良い。
そして、夜、真夜中のイメージが染みこんだ「聴けるギター」を味わうことが出来るのだ。

地元で腕を磨く

ウエスモンゴメリーは、長らく故郷のインディアナポリスで、昼は工場での労働者、夜はクラブでジャズギターを弾いていた。

譜面が読めず、ギターは独学。チャーリー・クリスチャンのレコードを何度も聴きながら、耳で音を拾い練習をしていたと言う。

近所迷惑にならないようにソフトで静かな音で聴くために、ビックは使わず、親指でソフトに弦をピッキングをするオクターブ奏法を身につけた。

もちろんウェス以前にもオクターブ奏法でギターを奏でるギタリストは存在していたが、演奏全体にわたってこの奏法をメインに奏でたギタリストは、ウェスが最初のギタリストといってもよいだろう。

1年間、ライオネル・ハンプトンの楽団に所属し、巡業の旅をしていたこともあったが、結局は地元に戻り、昼は工場、夜はジャズという生活を続けたウェス。

家族の元を離れたくないという思いもあったのかもしれない。

なにしろ、彼には妻と7人の子どもがいた。

養わなければならない。

くわえて、高価なギブソンのギターのローンも返済しなければならない。

働かなければならない。

そのため、彼は昼はラジオ工場などで働き、仕事が終れば夜な夜なジャズクラブに出演しギターを弾いた。のみならずそのジャズクラブが閉店した後も、また別の深夜まで営業しているクラブでギターを弾いていた。

無名の存在でありながらも、知らず知らずのうちにジャズギタリストとしての経験値を積み上げていたというわけだ。

インディアナポリスに巡業にやってきたキャノンボール・アダレイは彼のギターの演奏に驚き、当時彼が契約していたリヴァーサイド・レーベルの社長、オリンキープ・ニュースに推薦した。

キャノンボールがキープニュースにウェスのことを紹介しなければ、ウェスは一生インディアナポリスで伝説のギタリストとして生涯を終えていたのかもしれない。

今でこそブルーノート、プレスティッジとともにジャズの3大レーベルとされているリヴァーサイドだが、大手レコード会社ではなく、弱小レーベルであることには違いない。

1枚のアルバムのレコーディングのために、ニューヨークに呼ぶのは交通費がかかる。前年の1959年にウェスのトリオをレコーディングをしているものの、その時はウェスの要望で地元でウェスの顔なじみのミュージシャンを呼んでレコーディングをしたが、その時はえらく交通費がかかってしまった。

だったら次のレコーディングは、リヴァーサイドと契約しているミュージシャンと共演させれば、交通費はウェス1人ぶんで済むし、さらにキャノンボールの弟であるナット・アダレイのアルバムのレコーディングにも参加させれば一石二鳥ではないか。

そこまでキープニュースは考えたのかどうかは分からないが、とにもかくにもウェスがニューヨーク滞在中にナット・アダレイの『ワーク・ソング』も録音された。

ワーク・ソング

レコーディングの日付を見ると、『インクレディブル・ジャズ・ギター』が1月の26日と28日、その間を挟むように『ワーク・ソング』が1月の25日と27日にレコーディングされているのはそのそういう理由からによる。

もちろん『ワーク・ソング』でもウェスは素晴らしいギターを弾いている。初共演の錚々たるベテラン勢を相手に物怖じすることなく、ウェスのギターは終始安定しており、見事にアンサンブルに溶け込み、のみならず自らの存在感も自然に主張することも忘れていない。

やはり地元、インディアナポリスで積み上げてきたキャリアはダテではなかったのだ。

オクターブ奏法

このアルバムでは、彼の親指によるオクターブ奏法が存分に発揮されている。

特に《ポルカ・ドッツ・アンド・ムーン・ビームス》を聴いていただければ、オクターブ奏法独特のまろやかな味わい、しっとりとした情感、そして太いメロディーラインをじっくりと味わえるはず。

そして、渋くてハードボイルドな演奏を味わいたければ、このアルバムの幕開けを告げる《エアジン》を聴こう。

ソニー・ロリンズ作曲の有名なナンバーだ。

真夜中に疾走するハードボイルドなギター。

う~ん、ジャズ!

当時のインディアナポリスでは、夜な夜なこんなに素晴らしいギターがライヴハウスで鳴り響いていたのだなと思いを馳せるのも良いだろう。

『フル・ハウス』とともにウェス・モンゴメリーを代表する1枚といっても良いだろう。

記:2019/01/31

album data

THE INCREDIBLE JAZZ GUITAR (Riverside)
– Wes Montgomery

1.Airegin
2.D-Natural Blues
3.Polka Dots and Moonbeams
4.Four on Six
5.West Coast Blues
6.In Your Own Sweet Way
7.Mr. Walker (Renie)
8.Gone With the Wind

Wes Montgomery (g)
Tommy Flanagan (p)
Percy Heath (b)
Albert Heath (ds)

1960/01/26 #1,2,4,5,6
1960/01/28 #3,7,8

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動画

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