黄色い空、道路は黄緑の杜王町~ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない

      2018/08/21

jojo4

世代によって異なる思い入れ

「ジョジョ」といえば、私の周りに限っての話かもしれないが、東方仗助が主人公の「Part4(ダイヤモンドは砕けない)」が一番好きだという人が多い。

中にはジョルノ・ジョバァーナが主人公の「Part5(黄金の風)」や、空条徐倫(ジョリーン)が主人公の「Part6(ストーン・オーシャン)」の熱烈な「信者」もいるが、これらの作品が好きな人は、リアルタイムで『週刊少年ジャンプ』を読んでいた世代なのかもしれず、十代後半や二十代の人が多く感じる。

かくいう私自身は、「ジョジョは2代目っしょ」が合言葉の「Part2(戦闘潮流)」が好きなのだが、これも高校、大学時代にリアルタイムで毎週『少年ジャンプ』を読んでいたことが大きいのだと思う(もちろん、ジョセフ・ジョースターのキャラが歴代JoJoの中では一番好きだということもあるが)。

たしか高校時代には「Part2」、大学にはいってからが「Part3」をリアルタイムで読んでいた記憶があるのだが、やはり毎週自腹を切って『ジャンプ』を読み、続きを楽しみにしていると思い入れが違うのだろうね。

面白いPart4

仗助が主人公のPart4も、最初のほうは読んでいたのだが、仕事やら音楽やらの忙しさで、少しずつ『ジャンプ』からフェードアウトしてしまい、後年、コミック化されてからまとめ読みをした。

しかし、まとめ読みをしてみると、これがまた面白いんだよね。

「Part3」までは、ストーリーが「ラスボス」を目指して一直線に進み、分かりやすいといえば分かりやすいのだが、コミックを一気読みするぶんにおいては、ちょっと単調な気がしないでもない。

もちろん、登場する様々なスタンド使いのキャラクターは一人一人特徴的で魅力的ではあるのだけれど。

それに対して、「Part4」に関しては、もちろんストーリーの後半は吉良吉影という「ラスボス」退治に向けて話しが収斂してゆくのだが、そこにいたるまでは、直接は吉良吉影とは関係のない様々なエピソードが、様々な切り口で描かれ、従来の「ジョジョ」のストーリーの進行が直線的だとすると、「Part4」は、曲線の如くストーリーが展開してゆく。

だから面白い。

しかも、「敵」である吉良吉影は、ディオのような「吸血鬼」や、カーズ、エシディシ、ワムゥなどの「柱の男」のように、人類を脅かす存在とは異なり、彼らのような人間を超えた「化け物」というわけではなく、殺人鬼ではあるにせよ、普通の人間だ。

しかも、物語の舞台がM県S市杜王町の中のみにとどまっているため、舞台のスケールも小さいといえば小さい。

しかし、だからこそ、限られたエリア内で起こる奇妙なエピソードが、身近な日常に潜む不可思議な出来事として迫ってくるのだろう。

「Part3」のように、遠くエジプトや、エジプトに至る道のりの国々、つまり「外国=他所の土地」で起こる出来事よりも、また「Part1」や「Part2」のように、昔、しかも昔の外国での出来事は、自分とは関係ない世界で繰り広げられる「遠い土地での出来事」や「遠い昔の出来事」のような感覚かもしれないが、「Part4」の場合は、平凡な地方都市(おそらくは仙台だと思うけれど)の平凡な住宅地を中心に起こる一連の奇妙な出来事だからこそ、より一層、日常に潜む「奇妙な感じ」が際立ち、読者に迫ってくる面白さが「Part4」にはあり、だからこそ、私の周囲だけなのかもしれないが、「Part4」が大好きだという人が多いのかもしれない。

荒木流を濃厚に受け継いだカラーリング

さて、今月からはじまったアニメ版の『ジョジョの奇妙な冒険 Part4~ダイヤモンドは砕けない』。

まだ第一話しか放映されていない段階でこれを書いているのだが、とても原作の世界観をうまくアニメならではの表現に落とし込んでいると感じた。

特に、街や風景の描写、というよりも作画に。

簡略化できるところは思いきりシンプルにした、あたかもモダンアートのようなスタイリッシュさすら感じさせる街並み。

空は黄色く、あるいは山吹色。
そして道路は黄緑色だ。

普通に考えたら、かなり狂った配色なのかもしれないが、この作品においては不思議と違和感がない。
そして、原作者・荒木飛呂彦のセンスを濃厚に受け継いだカラーリングのためなのだろう。

特に何の変哲もない、いち地方都市でありながらも、微妙に日常から遊離した非日常空間・杜王町が醸し出すテイストを表現するには、この配色以外ありえないとすら思えてしまう。

日常生活の中に潜むちょっとした「奇妙な」感じと、この街に潜む目に見えない悪意、そしてそれらが醸し出す「空気」を、アニメの背景画、そして色彩がとてもうまく醸し出している。

ストーリーに関しては、すでに多くのジョジョファンはコミックで読んで知っているわけだ。

なのに、あえてアニメを観てしまうのは、アニメでは「どう描かれ直しているのか」という興味が少なからずあるからだろう。

今回のアニメ化された「ダイヤモンドは砕けない」では、アニメならではの大胆な配色、そう、黄色い空と緑の道路に象徴されるように、この世界観を違和感なくバージョンアップさせることに成功していると感じた。

もちろん、これから展開されてゆくストーリーに関しても、どのエピソードがどう省略されたりカットされたりするのだろうか、という興味は勿論あるのだが、それ以上に、さらなる斬新かつスタイリッシュなグラフィック表現を今後のアニメ版「ダイヤモンドは砕けない」には期待したい。

記:2016/04/09

 - アニメ