黒木華の『重版出来!』

      2021/02/13

kurokiharu

出版ネタは地味

黒木華(くろき・はる)が初主演のドラマ『重版出来!』が始まり2週間が経った。

第一話では、オダギリジョーもさり気なく名脇役を勤めていたね。

これで思い出すのが、『舟を編む』という映画。
コミック編集部と、辞書編集部という違いはあるにせよ、ともに出版社の編集部が舞台だ。
そして、オダギリジョーも黒木華もこの映画には、また違ったキャラで登場している。

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そしてやはり、この両方の作品に漂う雰囲気は「地味」であること。

「つまらない」ではない。
「地味」なのだ。

そりゃそうだ。
舞台は出版社、題材は「本」なのだから。

出来事の沸点の温度が低い

出版の仕事は派手じゃない。
どこまでも地味だ。
やってた本人が言うのだから、間違いない(笑)。

なぜ、昔から多くのドラマが「恋愛モノ」、「刑事モノ」、「医療モノ」、「弁護士モノ」、「金融モノ」が多いのか?

それは「派手」だから。

「恋愛モノ」に関してはその限りではないかもしれないが、上記のいずれもが「人の命」にかかわる仕事だったり、「巨額な金」が動く話だったりする。

「命」や「金」にかかわることになると、人は必死になる。
そして、必死になる人達の姿はドラマになりやすい。

だからこそ「地味or派手」で区別するのもヘンだけれども、「出版モノ」というのは、人は死なないし、巨額な金額が動くわけでもない。

「出版」「編集」で、大きな事件を描いたドラマといえば、篠原涼子が主演の『アンフェア』の前半のエピソードが思い浮かぶ。
このドラマの前半のエピソードには、小説家や編集者が登場したが、これはあくまで殺人事件に関係する人たちの職業が、たまたまそうであっただけで、内容はあくまで「刑事モノ」のドラマだからね。

もちろん、人が死なず、事件にもあまり関係なく、巨額のマネーが動くわけでもない「出版」業界が舞台のドラマであっても、「必死」に頑張る登場人物もいるにはいるけれども、その「必死」のレベルが、命や金に関わる切羽詰ったギリギリのところでの必死さではなく、せいぜいが徹夜だったり、人間関係のトラブルだったり、連載打ち切りだったりと、それぐらいのハプニングが関の山だ。

だから、劇中のイベントの盛り上がりの温度の沸点が、犯罪モノや、金融モノに比べると、どうしても低くならざるを得ないのはいたし方のないことなのだ。

必死さのボルテージ

出版なんて、動くお金の額の桁が違う。
つまり、安い。

本の価格って、一部の医学書などを除けば1万円以上の本ってそれほど多くはないでしょ?

1冊千円もしない本が多いし、2千円以上の本になると、読書家以外の人にとっては「高額」だと感じてしまうことだろう。

つまり、動くお金が少ないわけで、何億、何十億をめぐって搭乗人物たちがシノギを削るストーリーに比べると、どうしても「必死さ」のボルテージが異なってくることはいたし方のないことなのだ。

だから、というわけでもないが、昨年放映された稲森いずみと渡辺麻友がダブル主演のドラマ『書店ガール』も、「刑事モノ」や「金融モノ」などのスケールに比べれば、地味かつ小イベントの連続だったことは、ドラマで扱う題材、というか業界そのものが「地味」だから、いたし方のないことなんだと思う。

しかし、だからといって扱う業界や題材のスケールが小さいからといって、それが即、つまらないというわけではない。

あとは描かれ方の問題になってくるわけで。

たしかに、スケールの大きい事件性のあるストーリーを「辞書編集部」や「コミック編集部」という職場が舞台の世界で描くことには無理がある。

しかし、だからといって、スケールが小さなイベントだって、描き方次第ではいかようにも面白い作品になることは、映画『舟を編む』でも実証済みだと思う。

あの映画だって(原作は小説だけど)、物語を乱暴に凝縮してしまうと、『大渡海』という広辞苑のような辞書が完成するまでの流れを描いただけの話なんだけど、そこはかとなく漂う独特な空気感ゆえに、観る者を最後までひきつけてしまう魅力があった。

これは、加藤剛や松田龍平、それに宮﨑あおいが醸し出すムードが大きいのだが、登場人物が漂わせる空気感次第では、大きなイベントはおきないにせよ、最後まで鑑賞者を退屈させることなく見せることは可能なのだ。

しかし、考えてみれば『舟を編む』は映画だった。

映画であれば、最後まで表情や仕草などの微妙なニュアンスまでをじっくりと汲み取って観賞しようとする鑑賞者は多いはずだ。

しかし、視聴率が争われるドラマの場合は、どうしても視聴者ターゲットの間口を広くしなければならないことも考慮しなければならないこともあり、セリフも説明的になりがちだし、動きもオーバーアクションにならざるを得ないのはいたし方のないことだろう。

そういうことからも、もともと編集というスタティック(静的)な仕事環境の中に、体育大学出身の柔道一直線だった主人公を放り込むことで、静的な仕事環境の中にもダイナミック(動的)な要素がもたらされる期待は出来るだろう。

今後の展開は期待半分、不安半分

しかし、現時点(第二話)においては、まだ新人で「見習い中」ということもあってか、今のところ目だった派手な動きは無い。

現時点においては、仕事に対する一途さ、ひたむきさを強調しているかのようなストーリーだ。

もちろん、それはそれで悪くはないのだが、この流れやノリが今後最終回まで続くとすると、それはそれでちょっと鬱陶しいというか重たい。

今後のエピソードはどのような内容で、どのような切り口、オチに流れていくのだろうか。
期待半分、不安半分といったところで、また来週もチェックしてみよっと。

記:2016/04/22

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