Melt Zonk Rewire/ニュー・クレズマー・トリオ

   

刺激に満ちた一枚

攻撃力の高いクラリネットだ。

同じ楽器でも、たとえばベニー・グッドマンのような優雅さや、チンドン屋のクラリネットに感じる猥雑さの中に宿る哀愁感などととは無縁の音色だ。

こちらのマインドに直接斬りこんでくるような、神経質な、いや、こちらを神経質にさせてしまうようなクラリネット。それこそがベン・ゴールドバーグのクラリネットだ。

ニュー・クレズマー・トリオ。

文字通り、東ヨーロッパより発祥したユダヤ人の音楽・クレズマー(クレッツマーとも言う)の旋律やテイストを、ジャズ的なフォーマットと、フリージャズ的なダイナミクスで、変幻自在に演奏するグループだ。

物憂げで、艶っぽくもあるクラリネットの音色と、クレズマー特有のマイナーな旋律はとてもよく似合う。

時折放つフリークトーンを交えながらの激しい演奏から、クラリネット本来の音色でじわりと聞かせる内容のナンバーもある。

曲によってはノイジーなギターや、耽美的なマリンバが参加しているナンバーも。

1枚を聴きとおすには、体力、というよりは、若干の精神力が必要とされるが、クレズマーを土台に、トリオで出来る演奏の可能性を引き出してくれるという点では、非常に興味深いアルバムだと思う。

ふくよかで弾力のある音で、クラリネットの旋律に対して、一定の距離をおきながらクールにサポートするダン・シーマンスのベースも隠れた聴きどころだ。

記:2004/07/21

album data

MELT ZONK REWIRE (TZADIK)
- New Klezmer Trio

1.Gas Nine
2.Sarcophagous
3.The Haunt
4.Thermoglyphics
5.The Chant
6.We Got There
7.Feedback Doina
8.Freilakh Nakht
9.Hypothetical
10.The Shot
11.Distiller
12.Phrases
13.Fourth Floor
14.Starting Place

Ben Goldberg (cl,bcl)
Dan Seamans (b)
Kenny Wollesen (ds)

1993年4月

 - ジャズ