アット・ザ・ライトハウス/ジョー・ヘンダーソン

   

『ページ・ワン』だけでは物足りない

おそらく、《ブルー・ボサ》で有名なブルーノートの『ページ・ワン』だけを聴いても、ジョー・ヘンダーソン(以下ジョーヘン)の魅力はなかなか分からないと思う。

要するに、このアルバムは、全体的に演奏がおとなしいのだ。

リズムセクションは、猫をかぶったように控えめだし、ジョーヘン自身も初リーダー作ということもあってか、いまいち、プレイがほぐれていない。

もちろん、あえて抑制を効かせた演奏はクールでもあり、かえってジョーヘンの特異なプレイを際立たせてはいるが、「熱演」とはほど遠い地点にある演奏だということもまた事実。

『ページ・ワン』をお持ちの方、あるいは、『ページ・ワン』の《ブルー・ボサ》が好きな人は、是非この曲のライブ演奏にも耳を傾けてみて欲しい。

そう、『アット・ザ・ライトハウス』だ。

ジョーヘンファン必聴のライヴ盤

油が乗っていたジョー・ヘンダーソン、70年代のライブだ。

『ページ・ワン』の曲でいえば、《ブルー・ボサ》のほかに、名曲《リコーダ・ミー》も収録されている。

さらに、名盤の誉れ高い『テトラゴン』の代表曲ともいえる《インヴィテーション》も演奏されているので、ジョーヘンの人気レパートリーのオンパレードともいえる。

熱のこもった演奏は、ときとして非常にアグレッシヴな面も見せ、エキサイティングな演奏を楽しめる一枚だ。

とにかく、重く、太く、くすんだダークな音色でトグロを巻くヘンダーソンのテナーサックスのプレイは、全編にわたって、最高!

サイドマンも素晴らしい。

トランペットは、ウディ・ショウ。

彼の斬り込みの鋭いプレイは、らせん状にうねるジョーヘンのテナーとは良い対比をなしているし、重くはないが、レスポンスがしなやかなレニー・ホワイトのドラミングも的確に演奏を煽っている。ときどき、ヘンなフィル・インをするけれども、違和感を感じさせないのは、ひとえに演奏の勢いからなのかもしれない。

ここではエレピを弾いているジョージ・ケイブルスも、エレピならではの特質を生かしたプレイをしている。

彼が弾いているエレピ、おそらくは、フェンダーローズだと思うが、「カーン」「コーン」と透き通るようなチープな単音と、和音のときの多少こもった音色が最高。

シングルトーンでは、軽やかな音色を生かしたタッチで、バッキングでハーモニーをつけるときは、すこし曇って粘りのある和音を有効に活用して、演奏を彩っている。

彼のプレイは、重く、ダークになりがちなジョーヘンのテナーを肉とすると、まるでその脇に添えられた梅肉や、ケッパーのような口当たりの良さが感じられ、聴き手の「食欲」を良い意味で持続させているのがお見事。

よって、演奏そのものは熱いのだが、良い意味での軽やかさも同居しているので、聴き手のほうも「お腹一杯な気分」に陥らず、サックリと最後まで聴きとおせてしまうのだ。

熱気と昂奮、そして、素晴らしい演奏の数々。
理想的なライブアルバムだと思う。

これは、是非、是非、ジョーヘン・ファンは耳にして欲しい。

記:2005/08/16

album data

JOE HENDERSON QUINTET AT THE LIGHT HOUSE (Milestone)
- Joe Henderson

1.Caribbean Fire Dance
2.Recorda Me
3.A Shade Of Jade
4.Isotope
5.'Round Midnight
6.Invitation
7.If You're Not Part Of The Solution,You're Part Of The Problem
8.Blue Bossa
9.Closing Theme

Joe Henderson (ts)
Woody Shaw (tp,flh)
George Cables (el-p)
Ron McClure (b,el-b)
Lenny White (ds)
Tony Waters (conga,ds)

1970/09/24-26

収録曲

>>ページ・ワン/ジョー・ヘンダーソン

 - ジャズ