アローン・トゥゲザー/ジム・ホール&ロン・カーター

      2021/01/30

企画者はケニー・バレル

ジム・ホールのギターとロン・カーターのベースのデュオのアルバムだ。

この2人のコンビを企画したのは、なんとギタリストのケニー・バレルなのだという。

彼は60年代後半に、数年間ニューヨークで「ギター」というジャズクラブを経営していたそうだ(共同経営だったらしい)。

この店は、キャバレーカードを取得していなかたっため、店にはドラムを置くことができず、店内での演奏するバンドのフォーマットは、ギターとベースになることが多かった。

そこでバレルが白羽の矢を立てたのが、ジム・ホールとロン・カーターだったというわけ。

この2人の演奏の評判は上々、そして、このようなアルバムが作られるようになったとのこと(もっともこのアルバムのライヴ会場はバレルの店ではないけれど)。

ジム・ホールのギター

ジム・ホールの息遣いや弦がこすれる音までもがリアルに伝わってくるため、そしてドラムのいないシンプルな編成ということもあり、聴いているうちに、どんどん緊張感が高まってくるのだが、演奏のクオリティ自体は高いので、聴くたびに新たな発見がある。

ジム・ホールは、その繊細でクリアなギターのトーンが持ち味なうえ、ハーモニーのセンスがずば抜けて鋭いギタリストだが、このライヴ演奏でも、彼の持ち味が遺憾なく発揮されている。

さらに、ジムのギターが発する味わい深く、時に斬新なハーモニーに対して瞬時に反応を見せるロンのベースも素晴らしい。

さすが、マイルスのもとで複雑なハーモニーの演奏をしていただけのことはある。

これで音程がもう少しよければ言うことなしなんだけれどね……。

さり気ない「ひとひねり」

曲目も、アルバムタイトルにもなっている《アローン・トゥゲザー》や《朝日のようにさわやかに》、さらには《枯葉》や《四月の思い出》、そのうえロリンズの《セント・トーマス》など、スタンダードナンバーや有名曲が目白押し。

入門者も気軽に手を出せる選曲となっている。

しかし、単に有名曲を単にふつうに料理するにとどまらず、さり気なく「ひとひねり」が効いているところが、彼らならではのセンス。

特に、陽気なカリプソナンバーの《セント・トーマス》のメロディから意表をついて出てくる不協和音にも近いギターの響きなど、なかなか面白い。

ジム・ホールは、この響きがお気に入りなのかもしれず、後年の『ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジゲイト』でも同様のアプローチをしている。

もっとも、奇を衒いすぎてあまり好きではないという人も中にはいるかもれないが。

個人的ベストトラックは、《プレリュード・トゥ・ア・キス》。

少しずつ良さが染みてくる演奏だ。

とにもかくにも、この2人のハーモニックセンスの相性の良さがもたらした傑作だ。

記:2015/08/26

album data

ALONE TOGETHER (Milestone)
- Jim Hall,Ron Carter

1. St. Thomas
2. Alone Together
3. Receipt, Please
4. I'll Remember April
5. Softly, As In A Morning Sunrise
6. Whose Blues
7. Prelude To A Kiss
8. Autumn Leaves

Jim Hall (g)
Ron Carter (b)

1972/08/04

 - ジャズ