ベン・ウェブスター・ミーツ・ドン・バイアス/ベン・ウェブスター & ドン・バイアス

   

ハードボイルド!

トレンチコートを着込んだ、渋~い2人の刑事の名コンビ。
この二人のテナーを聴いていると、そんな映像が思い浮かぶ。

さりげないユーモアも会話の中には織り交ぜられつつも、結論としては、なぜか渋くまとまってしまう。

相手のフレーズに触発されて紡ぎだされた何気ないフレーズの断片にも、どこか含蓄に富んだ人生の重みを感じざるを得ない。

まるで、映画のようなキマり過ぎたシチュエーションと、それを彩る、重心の低い大人のサウンドを2人はテナーサックスから発し、周囲の空気を濃厚なハードボイルド色に染める。

もし、これが録音された国がアメリカであれば、それこそベタで、古き良きジャズのワン・オブ・ゼムの作品で終わっていたかもしれない。

それこそ、彼ら二人は、バップよりも少々古いスウィングスタイルを継承しているテナーマンだからね。

しかし、バックのリズムがヨーロッパ系のテイストとスピード感を有するジャズマンたちに彩られると、ベタで臭みのあるアメリカン・ハードボイルドなテイストに、微妙なエレガントさも加わる。

ピアノはテテ・モントリュー。
ドラムスはアルバート・ヒースだ。

2人は、スティープル・チェイス・レーベルの看板を担うリズムマンでもある。

彼らが繰り出すリズムの「フレームワーク」の効果か、太くタフな2人の男のテナーが鳴り響く風景が異なってくるところが面白い。

酸いも甘いも噛み分けたタフさを内に隠し持ったダンディな男たちがドイツで交わした「ジャズ会話」。

そして、あまり語られることのない隠れ名盤を、珈琲、もしくはスコッチとともにお聴きあれ。

記:2016/12/17

album data

BEN WEBSTER MEETS DON BYAS (MPS)
- Don Byas,Ben Webster

1.Blues For Dottie Mae
2.Lullaby To Dottie Mae
3.Sundae
4.Perdido
5.When Ash Meets Henry
6.Caravan

1968/02/01-02

Don Byas (ts)
Ben Webster (ts)
Tete Montoliu (p)
Peter Trunk (b)
Albert 'Tootie' Heath (ds)

 - ジャズ