夢のカリフォルニア/ウェス・モンゴメリー

   

たまにはゴージャズウェスも悪くはないが

ママス&パパスの名曲《夢のカリフォルニア》には、ウエスのギターがよく似合う。

そう、オクターブ奏法で奏でられる“あの音色”だ。

ウエスのギターでの“歌い方”、特にこの曲においては、“テロリン・テロリン”とか“ギュイン・ギュイン”とメロディの要所要所を強調し、このクドさの一歩手前の寸止め感が心地よい。

このアルバムの企画は、ウエス・モンゴメリーというギタリストを1人の“歌手”に見立てたところから出発したに違いない。

つまり、アドリブやインタープレイといった難しいことに気を配らず、ウエスが、ひたすらギターで気持ちよく“歌える”ようにゴージャスなサウンドがお膳立てされている。

ウエスにポップチューンを気持ちよく歌わせよう、いや、弾かせよう、という発想だ。

チャーリー・パーカーやクリフォード・ブラウンには「ウィズ・ストリングス」の演奏があるが、企画の趣旨はこれに近いものだと思う。

ウエスのギター。

オクターブ奏法による独特な音色も魅力だが、それ以上に節回しにも個性がある。

原曲のメロディを崩しすぎずにフェイクするのがうまい。

だから、歌手に見立ててゴージャスなバックをつけようというコンセプトは正解。

ドン・セベスキーの編曲・指揮によるゴージャスなオーケストラは、まるでナイトショーの歌手のバックばりに、ある意味、必要以上にゴージャスに感じるかもしれない。

ウエスのギターの旋律にフルートをかぶせてみたり、洗濯板をチーチキ鳴らしたりと、バックはまるで音のおもちゃ箱をひっくり返したように賑やかだ。

悪く言えば、せっかく素肌が綺麗な女優に、無理やり厚化粧を施した感も否めないが、これが大手レーベルならではの、予算と人をドーン!と割いて、ヒットアルバムを作るやり方なのかもしれない。

実際、このアルバムは商業的には成功したし、このアルバムからウエスに入ったという人も多い。ウエス自身も、このレコーディングを楽しんだようだ。

たまには、あっけらかんと、なーんも考えずに、半ば無責任に聴き流せてしまう“ゴージャス・ウエス”も悪くはない。

……そう、たまには、ね。

私にとっては、そうしょっちゅう手が伸びるアルバムでもないこともたしか。

本音を言ってしまえば、やはり、トリオやクインテット規模ぐらいまでの編成でギターを弾くウエスのほうが好きだ。

私は、リアルタイムでこのアルバムを聴いていないので、当時からリアルタイムで聴いていた人の感覚はよく分からないのだが、なんというか、やっぱり“時代の音”なんだなぁと感じる。

微妙に感じる古臭さは、バックのサウンドから感じるものだが、このダサさとカッコ良さの紙一重なバランスの上で成り立っている微妙なテイスト。

リアルタイムで親しんだ人には懐かしく響くのだろうが……。

先述した「厚化粧」ではないが、素材そのものの生きが良いウエスのことだから、味付けは最低限でもおいしいのだ。

そう、刺身にしてワサビ醤油をちょいとつけるだけでも、ペロリとおいしく食べられる。

もちろん、素材が良ければ、フランス料理のようにゴージャスで凝った味付けを施されてもおいしくいただけることは確かだが、そうそう毎日は食べたくなるものでもないし。

やはり、ウエスには、コンボが良く似合う。

記:2006/10/20

album data

CALIFORNIA DREAMING (Verve)
- Wes Montgomery

1.California Dreaming
2.Sun Down
3.Oh, You Crazy Moon
4.More, More, Amor
5.Without You
6.Winds Of Barcelona
7.Sunny (Alternate Take)
8.Sunny
9.Green Peppers
10.Mr. Walker
11.South Of The Border

Wes Montgomery (g)
Don Sevesky (arr,cond)
Mel Davis,Bernie Grow,Jimmy Nottingham (tp)
Wayne Andre,John Messner,Bill Watrous (tb)
Ray Beckenstein (as,fl,piccolo)
Stan Webb (as,bs,English horn,cl)
Jack Jennings (vib,castanets,scratcer)
Jimmy Buffington (flh)
Don Butterfield (b)
Gary Tate (ds)
Ray Burette (per)
Herbie Hancock (p)

1966/09/14-16

 - ジャズ