ア・デイ・イン・コペンハーゲン/デクスター・ゴードン&スライド・ハンプトン

      2021/01/25

スライド・ハンプトンも頑張る

デクスター・ゴードンがヨーロッパ滞在中に残した演奏には、ワンホーンものが多い。

しかし、このアルバムは珍しく(?)3管編成。

ゴードンのテナーに、ディジー・リースのトランペットとスライド・ハンプトンのトロンボーンが絡む。

3本の管のアンサンブルをアレンジしたのは、さすがハモりの役どころの多いトロンボーン奏者というべきか、スライド・ハンプトンが担当している。

厚く、熱い3本のホーンがくりなすアンサンブルは、まるでヨーロッパ版のアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズといった趣き。

ベース、ピアノのリズム隊は、スティープル・チェイスでの盟友、ピアノのケニー・ドリュー、ベースのペデルセンという陣容は変わらない。

しかし、ドラムがアルバート・ヒースではなく、アート・テイラーなことがミソ。

腰のあるリズムで、アンサンブルを支え、ときにフロントを煽るっているし、テイラーの参加が、ヒースより3割り増しで本場ハード・バップの香りを添えている。

泰然自若。

これが、デクスター・ゴードンを一言で形容するにもっとも相応しい言葉だと思っているが、ここでのプレイもまさに。

ホーンが増えようが、ソロの部分はあくまでデックス流マイペースを貫いているところが、安心して聴ける所以か。

とくに、バラードがいい。

ワンホーンで演奏される《いそしぎ》。

まさに、バラードのうまいデックスの本領発揮だ。

ほかにも、《あなたは恋を知らない》と《ホワッツ・ニュー》といった曲名だけを見ると、バラードかな? と思わせるタイトルが並ぶが、この両曲は、しみじみとしたバラードにあらず。

勇壮かつ肩で風切る堂々たるアレンジとなっている。

うーむ、ハンプトンさん頑張り過ぎなんじゃ?

なんだか、しみじみした曲が、威張った曲に聴こえちゃってますよ?

ま、手の加え方次第では、こんなに曲のイメージ変わっちゃいますというのも、ジャズの面白さの一つなのだが……。

しかし、このような逞しく威風堂々とした《あなたは恋を知らない》と《ホワッツ・ニュー》も、たまに聴くと悪くはない。

漢(おとこ)デックス、コペンハーゲンで録音した、肉汁したたる硬派なアルバムだ。

記:2008/05/25

album data

A DAY IN COPENHARGEN (MPS)
- Dexter Gordon & Slide Hampton

1.My Blues
2.You Don't Know What Love Is
3.New Thing
4.Shadow Of Your Smile
5.What's New?
6.Day In Vienna

Dexter Gordon (ts)
Slide Hampton (tb,arr)
Dizzy Reece (tp)
Kenny Drew (p)
Niels-Henning φrsted Pedersen (b)
Art Taylor (ds)

1969/03/10

 - ジャズ