エラ・アンド・ルイ/エラ・フィッツジェラルド&ルイ・アームストロング

   

朝を彩る極上ミュージック

休日の朝は、いつも早起きしてしまう。

根がケチなのだろう。せっかくの休日、何かをしないと損だ、勿体ないという気持ちが働くようで、目が覚めると、二度寝はせずに、いつもゴソゴソと寝床から這い出してしまう。

そして、眠たい目をこすりながら、台所へ行き、お湯を沸かすことが習慣となっている。

目覚めにかける音楽は、とくに聴きたい音楽が思い浮かばないときは『エラ&ルイ』に手が伸びる。

コーヒーを飲みながら、さて、今日一日、何して過ごそうかなどと考えながら、このアルバムをぼんやりと聴いているうちに、だんだんとゴキゲンな気分になってきて、次第に目が覚めてくるという寸法。

夜に一人で聴くと良いという人も多いが、私の場合は完全に「休日の早朝にかけるアルバム」になってしまっている。

2人ともジャズ・ヴォーカルの大御所でベテラン。
夢のような組み合わせ、そして、言うまでもなく内容も極上なのだが、だからといって構えることなく、気楽に聴いても楽しめる素晴らしいアルバムなのだ。

のびのびと唄う二人を聴いていると、唄う楽しさが、ストレートにこちらに伝わってくるからなのだと思う。

全体的にリラックスした内容で、最後まで心地よくスイングしている。

二人とも情感を込めて唄っているが、決してオーバーな表現になりすぎず、肩の力が抜けた余裕を持った歌唱をしている。

サッチモは、過密スケジュールのため、レコーディング時の体調は万全ではなかったにもかかわらず、そんなことを微塵も感じさせないのはサスガ。

エラも、一瞬サッチモの声を真似をするなど、ユーモアに溢れた歌唱をする箇所もあって楽しい。

個人的に好きなナンバーは、やっぱり冒頭の《お友達になれない?》。

短いイントロに次いで入ってくるエラのヴォーカル。部屋の中の眠たげな空気が、やわらかく、そして確実に動きはじめる。

そして、ラストでサッチモが「オー・イエー」と唄うあたりになると、完全に部屋の中の「夜の空気」が一掃される。

中盤の《霧深き日》。個人的に好きなスタンダード・ナンバーだ。この曲、早いテンポで演奏されているバージョンが多いが、このアルバムでのミディアム・テンポのゆったりしたバージョンも、とても心地よくて大好きだ。

なにより、これぐらいのテンポだと、歌詞をじっくりと聞きとることが出来るし。

あ、それとラストの《パリの4月》も良いね。

個人的に好きな曲ということもあるが、情感をたっぷりと込めたエラのデリケートな歌唱、そして、それを優しく彩るルイのトランペットも素敵だ。

この曲が終われば、アルバムは終了するが、私の新しい一日が静かに始まるのだ。

記:2002/03/19

album data

ELLA AND LOUIS (Verve)
- Ella Fitzgerald

1.Can't We Be Friends
2.Isn't This A Lovely Day
3.Moonlight In Vermont
4.They Can't Take That Away From Me
5.Under A Blanket Of Blue
6.Tenderly
7.A Foggy Day
8.Stars Fell On Alabama
9.Cheek To Cheek
10.The Nearness Of You
11.April In Paris

Ella Fitzgerald(vo)
Louis Armstrong(tp,vo)
Oscar Peterson (p)
Herb Ellis (g)
Ray Brown(b)
Buddy Rich (ds)

1956/08/16

 - ジャズ