ホリデイ・フォー・スキンズ vol.1/アート・ブレイキー

   

打楽器奏者12人!

リズムの洪水!

まさに、このアルバムのキャッチコピー「リズムの饗宴」を地で行くような内容だ。

ドラムを含め、打楽器奏者が12人。

対してリード楽器は、ドナルド・バードのトランペット一本のみ。

地の底から湧き上がるようなキョーレツなリズムに合わせて、天から舞い降りるてくるようなブライトなトランペットは、リズムのウネリに負けじとばかり一音一音を力強く放たれているかのよう。

あとは、レイ・ブライアントのピアノと、ウェンデル・マーシャルのベース。

歯切れの良いブライアントのピアノが、モノクロームな打楽器の嵐に微妙な色彩感覚をもたらし、ウェンデル・マーシャルがリズムの祝宴のボトムをガッシリと支え、躍動感の潤滑油を果たす。

難しいことを考えずに、とにかくリズムの嵐・洪水・地震に無心に浸るしかないでしょう。

大地の鼓動にも似た巨大な打楽器たちによって繰り出されるウネリに、とにかくひたすら身を任せましょう。

2つの顔を持っていたブレイキー

録音は、名作『モーニン』の一ヶ月後。

ブレイキーは、『モーニン』のような大衆路線の演奏と、この『ホリデイ・フォー・スキンズ』や、1年前に録音した『オージー・イン・リズム』を含め、リズムの実験路線を並行して行っていたわけだ。

表の顔はファンキー・ジャズで人気を博していたジャズ・メッセンジャーズのリーダーでありながらも、裏の顔は、リズムを探求するマッドサイエンティスト?
ブレイキーは2つの顔を持っていたわけだ。

ブレイキーの「リズムの探求」っぷりも凄いが、そんな彼にレコーディングの場を与え、商売とは無関係に作品として売り出したアルフレッド・ライオンも凄い(実際、ほとんど売れなかったという)。

とにもかくにも、泣く子も黙る大艦巨砲主義的超時空人力トランスミュージックの決定版といえるだろう。

原始、人間が持っていたはずのプリミティヴな本能に火をつける危険な一枚だ。

記:2010/03/08

album data

HOLIDAY FOR SKINS vol.1 (Blue Note)
- Art Blakey

1.The Feast
2.Aghano
3.Lamento
4.Mirage

Art Blakey (ds,chants)
Donald Byrd (trumpet)
Ray Bryant (p)
Wendell Marshall (b)
Philly Joe Jones (ds,tympani,chants)
Art Taylor (ds,gong)
Sabu Martinez (bongo,conga,chants)
Victor Gonzalez (bongo)
Ray Barretto (congas)
Chonguito Vicente (congas)
Andy Delannoy (maracas, cencerro)
Julio Martinez (conga,tree log)
Fred Pagani Jr. (timbales)
Austin Cromer (chants)
Hal Rasheed (chants)

1958/11/09

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