ルッキング・アット・バード/アーチー・シェップ&ニールス・ペデルセン

   

パーカーナンバー

チャーリー・パーカーの曲が好きだ。

起伏が激しく、音数の多いメロディの曲が多いのに、親しみやすいナンバーが多い。

演奏をする上でも、決して簡単とは言いがたい曲も多いが、パーカーの作った曲には共通して、聡明な突き抜けた明るさを感じることが出来る。

《コンファメーション》しかり、《オーニソロジー》しかり、《ムース・ザ・ムーチェ》しかり、《オウ・プリヴァーヴ》しかり、《ビリーズ・バウンス》しかり。

全体を覆う雰囲気は明るく、耳にスッとはいってくるナンバーが多いのも特徴だ。

あのシェップがパーカーを?

さて、アーチー・シェップ。

「シェップがパーカーを演る!?」

まず、このアルバムの意外な切り口に、驚いた。

まさか、この人がパーカー・ナンバーを演るとは思わなかった。

今でこそ、ヴィーナス・レーベルにバラードを吹き込んだり、ビリー・ホリデイの《奇妙な果実》を怪唱(笑)したりしているので、いつまでたっても フリーのイメージで見られること自体、彼にとっては迷惑な話なのかもしれないが、それでも、私にとってのシェップは、「ドロドロしたテナーを吹く 人」というイメージが強い。

デビュー録音がセシル・テイラーとの共演だったこと。

コルトレーンの没後は、彼の衣鉢を継ぐ、『フリー派第2世代』のリーダー的存在だったこと。

名盤『マジック・オブ・ザ・ジュジュ』で、泣く子も黙るパワフルなブロウを繰り広げていたこと。

角川映画の『人間の証明のテーマ』を吹き込んだこと。

……などなど。

彼の仕事内容のどれもこれもが「濃い」、いや「濃ゆ~い」感じがする。

ブロブロとオドロオドロしく、蒸気を発散させながら吹きまくるシェップと、明晰に澄み渡ったパーカーのナンバー。果たして、シェップにパーカーの曲は似合うのか!?というと、はっきり言って似合ってない(笑)。

しかし、内容的に駄作なのかというと、少なくとも私にはそうは感じられない。
面白い内容の変り種アルバムだなぁ、というのが正直な感想だ。

誰が吹いてもパーカーの「芯」が残る

シェップ流・ブロブロ吹きで料理されたパーカーナンバーを聴くと、誰がどう演奏しても、やっぱりパーカーの曲はパーカー的雰囲気と構造を強固に保つのだなと思った。

それはモンクの作った曲にも言えることかもしれない。

誰がどう演奏しても、原曲の持ち味の良さが殺されずに、曲の「芯」や「気分」のようなものが、キチンと残るのだ。

パーカーに遠慮してか、それとも、自身の新しいスタイルを模索しているのか、ここでのシェップはイマイチ歯切れが悪い。

得意のブロブロ吹きも若干影を潜めているような感じがする。

サックスとベースのデュオというフォーマット、私は結構好きだ。

楽器が少ないぶん、否が応でも一つの楽器に耳を集中させて追いかけることが出来るので、たっぷりと楽しむことが出来る(集中し過ぎで疲れることも あるが)。

たとえば、同じくスティープル・チェイスから出ているリー・コニッツと、レッド・ミッチェルがデュオで演奏している『アイ・コンセントレイト・オン・ユー』というアルバムは大好きなアルバムだ。

しかし、このシェップの演奏に限って言えば、ドラムが入ったほうが、もっとパワフルで勢いがついて良かったのになぁと思いながら聴いている。

ペデルセンのベースとユニゾンでテーマを吹く《ブルース・フォー・アリス》のシェップがなんだか愛らしい(笑)。

記:2002/07/05

album data

LOOKING AT BIRD (Steeple Chase)
- Archie Shepp & Niels-Henning φrsted Pedersen

1.Moose The Mooche
2.Embraceble You
3.Ornithology
4.Billie's Bounce
5.Yard Bird Suite
6.Blues For Alice
7.How Deep Is The Ocean
8.Confirmation

Archie Shepp (ts,ss)
Niels-Henning φrsted Pedersen (b)

1980/02/07

 - ジャズ