モーメンツ・ノーティス/チャーリー・ラウズ

   

軽やかなラウズ

タイトルから、コルトレーンの難曲《モーメンツ・ノーティス》にラウズがチャレンジしているのか!と勘違いするが、演ってない(笑)。

しかし、モンクの元を離れてテナーを吹くラウズは、重たいコートを脱いだようにかなり軽やか。

彼が吹くテナーサックスからは勢いが感じられる。

「モンクの呪縛」から解放されたからなのだろうか?

ヒュー・ローソンのピアノ

なにせ、最初の《ザ・クラッカー》の出だしを聴いた瞬間から、おや?いつもモンクとの共演で聴きなれているラウズのテナーとは随分と違うぞ?と感じるはずだ。

もりっ!と前に出てくる感じがするのだ。

セロニアス・モンク・カルテットでのラウズのテナーは、遠慮がちに一歩引いたところがある。
リーダーであるモンクのことを立てているのか、あるいはモンクが作った曲の構造ゆえにそうならざるを得ないのか、理由は分からないが、とにかく、ピアノがモンクではなくヒュー・ローソンとなったワンホーン・カルテットでは水を得た魚のようにラウズは奔放なサックスを吹きまくっているのだ。

リズミックにヒョコヒョコと飛び跳ねるバッキングが少し多いように感じられるものの、この歯切れの良さが演奏に明るさと快活さをもたらしていることは間違いない。

《ザ・クラッカー》といい、《ウェル・ユー・ニードント》といい、比較的アップテンポのナンバーが多いことも、「奔放、軽やか、スピード感」を感じさせる印象に拍車をかけている。

ラウズの代表作『ヤー!』は、テナーサックス本来が持つ温もりとラウズの暖かな語り口を楽しむアルバムだった。

>>ヤー!/チャーリー・ラウズ

それに対して、こちらの『モーメンツ・ノーティス』のほうは、勢いよく前へ、前へと押し出してくるラウズの勢いの良さを楽しむアルバムだ。

モンクとの共演だけではなく、上記2枚も併せて聴くことで、はじめてチャーリー・ラウズというテナーサックス奏者の全貌が浮き上がってのだ。

リズムセクション

ベースはボブ・クランショウ。

このときは、まだウッドベースを弾いているが、相も変わらず腰の入ったベースを楽しめる。

このズッシリとした低音を支えるクランショウに対して、ノリとバネを軽やかにキープするベン・ライリーの起用は大正解だと思う。

そこはかとなく、気持ちよくほくほくとした黒いリズムが生み出され、全身の血行を促し、硬直した筋肉をほぐす効果をもたらしている。

コーヒーもウイスキーも似合うサウンドゆえ、私の場合は、本やCDが積み重なった自室で聴くよりも、ジャズ喫茶で聴いたほうが、もっとこのアルバムの良い部分に浸れると思っている。

そういえば、このアルバムを知ったのもジャズ喫茶「いーぐる」でだった(笑)。

ジャズ喫茶が持つ特有の空気を形成する1枚であることには間違いない。

記:2009/03/12

album data

MOMENT'S NOTICE (Storyville Records)
- Charlie Rouse

1.The Clucker
2.Let Me
3.Joobobie
4.Well, You Needn't
5.Royal Love
6.A Child Is Born
7.Little Sherri
8.Royal Love
9.Let Me
10.The Clucker
11.Well, You Needn't

Charlie Rouse (ts)
Hugh Lawson (p)
Bob Cranshaw (b)
Ben Riley (ds)

1977/10/20

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