ザ・レイ・ドレイパー・カルテット・フィーチャリング・ジョン・コルトレーン/レイ・ドレイパー

   


Ray Draper Quintet feat.John Coltrane

鈍重でユーモラス

チューバ奏者のレイ・ドレイパーのリーダーアルバム。

チューバといえば、ブラスバンドやデキシーランド・ジャズのグループでよく目にする楽器で、リズミカルに“ブッ!”“ボッ!”といったような低音を出し、アンサンブルを支える役割を担っている。

管楽器の中ではもっとも大きく、かつ、もっとも低音の出る楽器だ。

まるでラッパの親分のような巨大なボディで、奏者は地面に落とさないように必死に抱きかかえて吹いているという風情(実際は楽器を落とさないようにストラップを着用するみたいです)。

知り合いにもチューバに凝っている人物がいて、彼はチューバを2台所有しているが、さすがに大きなボディなだけあって、値段も高く、ちょっと良いものでも軽く100万円を越えるのだとか。

彼の話によると、チューバを吹くのは、かなりの肺活量が必要なことと(まぁ当然だよね)、重いので、それを持ちながら演奏しても疲れないだけの体力が必要なのだそうで(これも当然だよね)、ブラスバンドに入ると、チューバ奏者に指名される人は、お相撲さん体型の人が多いのだとか。

余談はともかく、あのドデカイ低音&リズム楽器・チューバで、4ビートに乗ってリード楽器役を務め、ソロまで取ってしまうレイ・ドレイパー。

もちろん流暢とは言いがたい。

もっさりとした鈍重な感じのする演奏だが、しかし、それがかえってユーモラスさが漂い、聴いているとついつい頬が緩んでくる。

吹いている本人は必死なのかもしれないけど。

ジャケットに映るドレイパーの親しげな笑顔もあってか、このアルバム全体にはどこか、ほのぼのとした暖かさが漂っている。

というよりも、このジャケ写を見れば、いかにチューバが巨大な楽器だということが分かろうものだ。

このアルバムは、レイ・ドレイパー3枚目のリーダー作だ。

ソニー・ロリンズの名曲《ポールズ・パル》も演奏されているが、ほとんどの曲がドレイパーのオリジナルで固められている。

そのせいか、チューバの魅力をあますことなく味わえる内容となっていて、特に、奇妙な鈍重さの漂う1曲目や、一瞬「ニカの夢」を彷彿とさせる2曲目なんかは最高だ。

このアルバムのもう一つの聴き所といえば、コルトレーンのプレイ。

鈍重なレイ・ドレイパーに、饒舌なコルトレーンの対比が鮮やかだ。

澱みのないコルトレーンの完成されたシーツ・オブ・サウンドを楽しめるアルバムでもある。

『ソウル・トレーン』あたりのコルトレーンが好きな人にもお勧めしたい逸品だ。

記:2003/04/08

album data

THE RAY DRAPER QUINTET FEATURING JOHN COLTRANE (Prestige)
- Ray Draper

1.Clifford's Kappa
2.Filide
3.Two Sons
4.Paul's Pal
5.Under Paris Skies
6.I Hadn't Anyone Till You

Ray Draper (tub)
John Coltrane (ts)
Gil Coggins (p)
Spanky DeBrest (b)
Larry Ritchie (ds)

1957/12/20

 - ジャズ