ソウル・スターリン/ベニー・グリーン

      2021/01/25

かき混ぜる

適度な泥臭さとコテコテさ加減が、肩の凝りを気持ちよくほぐしてくれる。

厚ぼったく、野暮ったさすら感じる柔らかく厚みのあるサウンドの中からも、ムンムン匂い立つ暖かな空気、これもきっとソウル独特の臭みなのだろう。

トロンボーン奏者、ベニー・グリーンのブルーノートの2枚目の作品(全部で彼は3枚ブルーノートに吹き込んでいる)、『ソウル・スターリン』。

一瞬、「ソビエトの独裁者のソウル?」と勘違いしそうなタイトルだが、スターリンのスペルは“stirrin'"。

つまり、ソウルを“かき混ぜる”といった意味で、サウンドの雰囲気やメンバーの人選を見れば、すぐに納得することだろう。

アイク・アイザック

メンバーが興味深い。

なんといっても、ベースがアイク・アイザック!

地味ながらも黒いボトムを繰り出す彼はまさに適任。
シンプルで、大きな周期でウネるベースに魅せられている隠れファンも多いのではないだろうか?

このアルバムの黒さ加減の半分は彼の鼓動のお陰なのかもしれない。

残り半分は、ドラムのエルヴィン・ジョーンズ、ピアノのソニー・クラークの粘りのあるプレイのお陰だろう。

「白い演奏をしろ」と命じても、絶対に無理そうな3人がリズムセクションなのだから、未聴の方でも、なんとなくサウンドの“コク”は想像出来るのではないだろうか?

ジーン・アモンズ

原盤では“ジャグ”という変名で参加しているジーン・アモンズの参加が熱気に拍車をかける。

いつも通りのコブシのある独特なテナープレイは、変名を使っても数音でバレてしまいそうだ。

2曲ヴォーカルで参加しているバブズ・ゴンザレスも、このアルバムの“ソウル度”を格段に底上げし、リラックスした楽しい雰囲気を醸し出している。

まさに、タイトル通り、ソウルをかき混ぜた、まったり濃厚なフレバーを醸し出したアルバムだ。

ちなみに、バブズ・ゴンザレスはジミー・スミスの第一発見者と言われている。

もちろん、トロンボーン奏者、ベニー・グリーンのプレイもたっぷりと楽しめることはいうまでもない。

とくにバラードの《ザッツ・オール》のストレートで誠実な表現は胸を打つし、アップテンポの《ウイ・ワナ・クック》のトロンボーンは、破綻のない滑らかさだ。

グリーンは、「味」だけでは終わらない卓越した技量をもつトロンボーン奏者だということがよく分かる。

ライオン注目のボントロ奏者

このアルバムは、ブルーノート1599番。

1587番の『バック・オン・ザ・シーン』もベニー・グリーンのリーダー作だが、このレコーディングから、一ヶ月も経たない3週間後に『ソウル・スターリン』が録音されていることを考えると、当時のブルーノート、いや、アルフレッド・ライオンは、かなりベニー・グリーンというトロンボーン奏者に入れ込んでいたことがよくわかる。

しかも同時期にもかかわらず、前作とはまったく違ったテイストのサウンドなことが興味深い。

もちろんメンバーの変化がもたらす効果も大きいのだろうが、ベニー・グリーンというトロンボーン奏者が持つ柔軟な音楽性も、この2枚を比較するとよく分かる。

記:2010/03/16

album data

SOUL STIRRIN' (Blue Note)
- Bennie Green

1.Soul Stirrin'
2.We Wanna Cook
3.That's All
4.Lullaby Of The Doomed
5.B. G. Mambo
6.Black Pearl

Bennie Green (tb)
Gene Ammons (ts)
Billy Root (ts)
Sonny Clark (p)
Ike Isaacs (b)
Elvin Jones (ds)
Babs Gonzales (vo) #1,2

1958/04/28

関連記事

>>バック・オン・ザ・シーン/ベニー・グリーン

 - ジャズ