タービュレント・フロウ/マーク・シム

   

ジョーヘン系テナー

タフでダークなテナーだ。

もっと聴かれてしかるべき、現代の名テナー奏者の一人だと思う。

とくに、ダーティかつハードボイルド一色に染め上げられたジョー・ヘンダーソンの名曲《リコーダ・ミー》で味わえる知的興奮といったら。

マーク・シムのテナーサックスは、鋭角的かつ密度の濃い低音は、挑発的でありながらも、知的なニュアンスも内包している。

ジョー・ヘンダーソンのトグロを巻くようなフレーズをさらにダーティかつ不良っぽくした感じといえばいいのか。

不用意に近づけば、いきなり刺されそうなヤバい雰囲気を確かに彼の音は持っている。

1973年ジャマイカ生まれのシムは、幼少期にカナダ、後にヴァ-ジニア州に移り住み、少年時代はアルトサックスを吹いていたという。

ジャケットのポートレイトを見ると、インテリ学生風の風貌のシムだが、黒いインテリジェンスを感じさせる一触即発なヤバい雰囲気は、独特のものがある。

彼のダークなテナーを彩る、重たいエレクトリックピアノ、沈んだヴァイブラフォンも、演奏に立体感を与え、よりシムのテナーを重く沈ませている。

ハードボイルド、かつ現代的でハイセンスなジャズをお求めの方には、ピッタリのアルバムだ。

特に、ジョー・ヘンダーソンが好きな人には、刺さる要素が多いのではないだろうか。

2枚目のリーダー作『タービュレント・フロウ』は、残念ながら、最近はあまりこのアルバムはショップの店頭ではお目にかかることはないが、マーク・シムは、もっと聴かれてしかるべき、テナー奏者の一人だと思う。

記:2009/02/21

album data

TURBULENT FLOW (Blue Note Japan)
- Mark Shim

1.Turbulent Flow
2.Recora Me
3.Christel Gazing
4.Survival Tactics
5.Don't Wake the Violent Baby
6.Dirty Bird
7.Scorpio
8.Jive Ones
9.Eminenece (For Betty Carter)

Mark Shim (ts,ss)
Stefon Harris (vib)
Edward Simon (p,el-p)
Drew Gress (b)
Eric Harland (ds)

1999/02月

 - ジャズ