ヴァーチュオーゾ/ジョー・パス

   

ギター弾きにとっては、かなりの難関らしい

“ヴァーチュオーゾ”とは、“巨匠”を意味する。

「自分のアルバムの名前に“巨匠”だなんて、しゃらくせぇや」なんて思う人もいるかもしれない。

しかし、聴かず嫌いは勿体無い。

アルバムのタイトルなんて、本人がつけているとは限らないのだから。

ロリンズの“コロッサス(巨人)”、パウエルやコルトレーンの“ジャイアント”も然り。

それらはもちろん名に恥じない名盤だが、ジョー・パスの『ヴァーチュオーゾ』も同様だ。

もっとも、個人的にはジョー・パスは、“職人”という形容がふさわしいギタリストだと思うけど。

凄いんだけど、凄さだけではなくキチンと“音楽”で落とし前をつける表現をしている。

もっとも、ギターを弾いている人は、違う捉え方をしているのかもしれないが。

このジョー・パスのギターをコピーしていた人を私は知っている。

市販されている『ヴァーチュオーゾ』の譜面を、彼は毎日毎日、丁寧に1小節ずつマスターすることを日課としていたようだ(ただし、なかなか進まなかったようだけど)。
  
我々がスッと何の抵抗も無く耳にはいってくる音の一つ一つにも、実は様々な工夫が込められ、なおかつ、技術的にもかなり高度なテクニックが散りばめられているらしい。

なにしろ、メロディを弾きつつ、絶妙なタイミングで和音も効果的に挿入、さらにベースラインまでも奏でているのだから。

そして、そのギタリスと氏曰く、ジョー・パスのギターをそっくりそのまま間違えずに“なぞる”ことは、まるで、綱渡りをしているような緊張感を感じるのだという。

かなりフィンガリングが難しいらしい。

また、一音一音の意味を吟味しながら弾いてゆくと、ギターにおける技術の習得と同時に、ハーモニーや旋律などの理論の理解にもつながるようだ。

もちろん、ギターに関しては門外漢の私でも、一聴した瞬間から、凄いギターだなとは思ったが、私の場合は、テクニックに驚くというよりかは、単純に彼の破綻の無いギターのプレイを楽しんで聴いている要素のほうが強い。

弾かれている音の内容よりも、音色と雰囲気、そして、たった一台のギターからも、心地よい流れとウネリを感じ取ることのほうが、鑑賞の中心になっている。

このへんが、ギターをやっている人と、やっていない人の感じ方の違いかもしれない。

このジャケットに映るギブソンのES-175も、ジャズのギタリスとにとっては、気になるギターの一つのようだが、私の場合は、「よっこらしょっ」といっった感じのジョー・パスの笑顔が素敵だと思う。

このへんも、ギタリスと非ギタリスとの違いかな?

ジョー・パス、1973年に録音した作品だ。

個人的には、《ナイト・アンド・デイ》、《チェロキー》、《オール・ザ・シングズ・ユー・アー》が好きだ。

このソロギターによる『ヴァーチュオーゾ』は、好評により第4集までが出ている。

記:2002/12/04

album data

VIRTUOSO (Pablo)
- Joe Pass

1.Night And Day
2.Stella By Starlight
3.Here's That Rainy Day
4.My Old Flame
5.How High The Moon
6.Cherolee
7.Sweet Lorraine
8.Have You Met Miss Jones
9.'Round Midnight
10.All The Things You Are
11.Blues For Alican
12.The Song Is You

Joe Pass (g)

1973/08/28

 - ジャズ