ルチェンドロ/ヴェルナー・リュディ

   

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巨大な残響

ダムの中でのサックスソロ。

世の中には面白いことを考えるミュージシャンがいろいろといるものです。

今でいえば、ユーチューバーの「やってみた系」?ですかね。
「ダムの壁の残響を利用してサックスを吹いてみた」みたいな。

ヴェルナー・リュディ。
スイス人。
バリトンサックス奏者。
アルトも吹く。

スイスのティチーノ州アイロロ市には、ルチェンドロ湖という、湖というか貯水池があるのですが、そこに作られたダムの麓でバリトンサックス(曲によってはアルトサックス)のソロを繰り広げ録音したものが、このアルバムなんですね。

このダムの名前は、その名もルチェンドロダム。
高さ73mで、1947年に完成したものです。

ドイツでジャズ修行(主にフリージャズ)中に、まだ有名になる前のビートルズのライブに飛び入り参加したり、そうかと思えばしばらく音楽をやめて故国スイスに戻り、広告代理店に勤めるサラリーマンをやったりと、なかなか色々な人生経験を重ねてきたリュディさんですが、巨大なダムのコンクリート壁の反響を利用してサックスを響かせようなんて、なかなかユニークなアイデアが閃いたものです。

そのサックスの音はというと?
ひとこと、深い!
不快じゃないよ。
心地よい。

とにかく、深遠としかいいようがないですね。

フリージャズ系のサックス奏者ということもあり、彼が吹くサックスは、時に過激なフレーズをたたみかけるように吹くことも少なくないのですが、まったく耳障りに感じないのは、まるで呼吸をしているかのように音が脈打っているからなのでしょう。

その脈打った音が、ルチェンドロの巨大な壁に響き渡り、なんとも荘厳ささえも感じさせるスケールの大きな音響を形作っているのです。

記:2019/10/19

album data

Lüdi Solo Lucendro (Unit Records)
- Werner Lüdi

1.Jenissei
2.Sebago
3.Jürmala
4.Las Hadas
5.Stromboli
6.Lagavulin
7.Solovki

Werner Lüdi (baritone saxophone, alto saxophone)

1993/09/03 & 04

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