マーク・リボーのギターが孤独な夜の神経を静かに昂ぶらせる

   

The Book Of Heads
The Book Of Heads

孤独な神経を静かに昂ぶらせる

たまたま家族が寝静まった深夜に、仕事をしながらボーっと聴いていた。

思わずPCを打つキーがとまる。

ぼわーっと、窓越しに映る月を見たりして、変に心の中が妙に乾いたかと思うと、微妙に湿り気まじりの空気が部屋に満たされてゆくような奇妙な感触を覚える。

全曲、マーク・リボーがソロアルバムを弾いているアルバムだ。

正直言って、この人のギターはよう分からんです(笑)。

何をやりたいのか、どういう意図があるのか。

うまいんだか、ヘタなんだか。あるいは、わざとヘタに弾いているのか。

しかも、弾いている「曲(というのか?)」は、ジョン・ゾーン作曲のものばかり。

ジョン・ゾーンの曲が最初からエキセントリックなのか。

ジョン・ゾーンの曲がエキセントリックな仕上がりになったのか。

それとも、作曲、演奏がともにエキセントリックゆえ、相乗効果でこのような結果に落ち着いたのか。

あるいは、ゾーンの作曲に従うと、このようなカタチにしか収まりようがなかったのか。

正常な心の持ち主が自然と狂っているようなソロギター。

だから、狂気という言葉はまったく似合わない。

しかし、どこか精緻に歪んでいる。

ギターを初めて手にする子供が無邪気に戯れているような音でもあり、逆にギター仙人が過去の理論や経験の一切を捨て去り辿りついた境地の音はひょっとするとこのような音なのかもしれない。

この微妙な匙加減、空気感が、ジャンクのようなギターフレーズに、不思議な音の存在感をもたらす。

聴き手の平常心を軽くかき乱してくれる微毒のこもったギターは、孤独な夜に神経を静かに昂ぶらせるのだ。

記:2007/03/11

album data

THE BOOK OF HEADS (Tzadik)
- John Zorn featuring Marc Ribot

1.Etude #1
2.Etude #2
3.Etude #3
4.Etude #4
5.Etude #5
6.Etude #6
7.Etude #7
8.Etude #8
9.Etude #9
10.Etude #10
11.Etude #11
12.Etude #12
13.Etude #13
14.Etude #14
15.Etude #15
16.Etude #16
17.Etude #17
18.Etude #18
19.Etude #19
20.Etude #20
21.Etude #21
22.Etude #22
23.Etude #23
24.Etude #24
25.Etude #25
26.Etude #26
27.Etude #27
28.Etude #28
29.Etude #29
30.Etude #30
31.Etude #31
32.Etude #32
33.Etude #33
34.Etude #34
35.Etude #35

Composed by John Zorn
Marc Ribot (g)

1995/03/19

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