満ち汐のロマンス/エゴラッピン

      2019/08/25


満ち汐のロマンス

《Room #1102》のオルガン

一瞬、音楽を聴く、というよりも、演劇を“体感している”って感じになる。

ジャズ、ラテン、場末のバー。あまり上等とはいえない酒。

昭和のノスタルジックな空間を、その時代をリアルタイムで生きていない現代の人たちが持つ憧憬。

憧れの“あの時代”に、こういう音楽が流れていんだろう、こういう音楽が流れていたら素敵だねという、送り手と受け手の持つ憧れと想像力が奇妙にシンクロして生まれるギリギリできわどいバーチャルでノスタルジックな空間が心地よく、フェイクなインチキくささがまぶされていつつも、骨の髄までニセモノではない。もちろん、並大抵の実力とセンスがなければ表現できない世界であることは言うまでもない。

個人的には、代表曲のひとつでもある《サイコアナルシス》は苦手なんだけど、その1曲前の《Room #1102》の妖しいムード、これぐらいの湯加減がちょうど良いかな~と思っている。

聴こえるかな?
ギターの鋭いカッティングの裏で、オルガンがコニョコニョ、クニャクニャしているのを。
これが、こそばゆくて心地よいんだよね。

最後はボルテージをあげて、キョワ~!とオルガンのシャワーにボルテージアップ。
曲のラスト、一番最後まで生き残る音に変貌するんだよね。

オルガン変化が、まるで素面な人がだんだんアルコールが進み、テンションが上昇してくるような感じ。

そうそう、このアルバムはシラフで聴くよりも、頭がクラクラになるくらいに飲んでいるときに聴いたほうが、音楽の体内浸食度(脳内浸食度)がアップすると思います。

大人の音楽、というより、大人びたい「大人未満・子ども以上」の人が垣間見る一皮むけた苦いオトナの世界なのかもしれない。

はすっぱで退廃的な浅川マキチックな世界を表出させていたかと思えば、タイトル曲の《満ち汐のロマンス》のようなロマンス全開な美しいナンバーもあるので、なかなか一筋縄ではいかない手ごわいアルバムであります。

いや、手ごわいなんて書くと「おっかね~」って感じかもしれないけど、怖くはないな。ただ、強いて怖いといえば、メンバーのポテンシャルかもしれない。
もっとスケールの大きな音楽を作ってくれそうで。

収録曲

満ち汐のロマンス (ポリドール)
- EGO-WRAPPIN’

1. かつて...。
2. Room #1102
3. サイコアナルシス
4. Crazy Fruits
5. Calling me
6. 満ち汐のロマンス
7. KIND OF YOU
8. Wherever You May Be
9. PARANOIA

 - 音楽